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未払金と未払費用、正しく勘定科目を使えていますか?違いとあわせて解説!

岡山 由佳
未払金と未払費用、正しく勘定科目を使えていますか?違いとあわせて解説!

未払金と未払費用。似ているこの科目の違いを正しく理解し適正な会計処理を行えていますか?曖昧な判断基準で慣習的に科目を使用していませんか?
経理や会計事務所の職に就いていても、こう聞かれると言葉に詰まってしまう方もいることでしょう。
今回は未払金と未払費用の違いについて詳しく解説していきます。

未払金と未払費用はどちらも負債

未払金と未払費用は、どちらも貸借対照表上の負債の部に表示がされます。負債とは第三者に対して負っている金銭上の負担であり、将来的に支払いのある義務をいいます。
費用の発生に対して、その支払いが費用の発生時点では行われていない場合に用いられる勘定科目であり、発生時には借方に費用科目、貸方に未払金又は未払費用が仕訳として計上がされます。
これに対して支払いが行われた場合は、借方に未払金又は未払費用が、貸方に現金や預金等の支払い手段が仕訳として計上がされます。

負債の詳細については下記コラムをご参照ください。
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未払金と未払費用の区別の必要性

未払金と未払費用は、その性質の違いから、会計処理の基準を定めた企業会計原則では下記のように区別することを要請しています。

「未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の適用を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを登記の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供以外の契約等による未払金とは区別しなければならない」出典: 会計法規集 中央経済社編

つまり未払金と未払費用を区別せずに計上をして貸借対照表に記載をすることは、その貸借対照表を閲覧する利害関係者の会計に対する適正な判断を誤らせてしまう可能性があるため、区別をすることが必要であるといえます。

未払金についての詳しい解説は下記のコラムをご覧ください。
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未払金と未払費用の違い

未払金と未払費用は、企業会計原則では下記のように定義がされています。

「未払金は、特定の契約等により既に確定している債務のうち、未だその支払いが終らないものをいう。 未払費用は、未払金とは異なり、一定の契約に従い、継続的に役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対して未だその対価の支払いが終らないものをいう。従って、これに対する対価は、時間の経過に伴い又は役務の受入によって既に当期の損益計算に計上するとともにその額を貸借対照表上の負債の部に流動負債として掲げなければならない。」出典: 会計法規集 中央経済社編

このように企業会計原則では未払金と未払費用が定義をされています。未払金と未払費用の大きな違いは、端的に表現をすると、契約の全てがその時点で完了しているかどうかの違いです。

未払金は、単発の取引が対象となり、かつ契約上の取引や期間が終了しているが支払いが終っていないものが該当をします。
例えば、固定資産や消耗品、事務用品の購入を期中に行い、その商品の受け渡しが期中に完了しているものの、期末時点でその支払いが行われていない場合に、期末の貸借対照表に未払金が計上されることとなります。
具体的には12月末決算の会社において、12月31日に購入をした10万円の消耗品が後払いであり期末に支払いが行われていない場合には、下記の仕訳が計上をされます。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
消耗品費 100,000円 未払金 100,000円

一方で未払費用は、サービスの提供を継続的に受けている取引が対象となり、かつ、契約の全てが完了しておらず支払いが終っていないものが該当をします。
例えば、給与や地代家賃等の支払いで、継続的に労働力やオフィスの提供を受けているもので、期末時点で支払時期が到来していないが期中に該当をする労働力やオフィスの提供期間分に相当する部分について、期末の貸借対照表上に未払金が計上されることとなります。
具体的には具体的には12月末決算の会社において、12月分の地代家賃15万円が1月10日に支払うものである契約であることから、期末には12月分の地代家賃の支払いが行われていない場合には、下記の仕訳が計上をされます。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
地代家賃 150,000円 未払費用 150,000円

未払金と長期未払金の違い

未払金には似たような勘定科目で長期未払金があります。未払金と長期未払金は、どちらも性質としては未払金に属します。
この勘定科目の違いは、その支払期間が短期か長期かによるものであり、短期のものを未払金、長期のものを長期未払金としています。

この長期に該当をするかの判断は1年を基準とするものであり、支払期限が決算日の翌日から起算して1年を超えるものや、1年以上支払いが滞っている債務を長期未払金としています。
未払金は貸借対照表上の流動負債、長期未払金は固定負債に該当をします。
流動負債は1年以内に支払うべき債務であり、固定負債は流動負債と比較をすると長期的な支払いを行うことが認められている債務であることから、これらを分けることは資金繰りを貸借対照表上で経営者が考えるうえで、また利害関係者が会社の財政状態を判断するうえで必要なこととなっています。

流動負債、固定負債については下記コラムをご参照ください。
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実務での未払金と未払費用

未払金と未払費用は上記のように区別が要請され、定義も異なるものですが、実際の経理の現場では必ずしも正しく勘定科目を区別して会計処理が行われているとは限りません。
未払金と未払費用の勘定科目に悩んだ際の実務での判断の方法をご紹介致します。

請求書で判断を行う

請求書は一般的には契約上の取引や期間が終了した時点で発行をされます。よって請求書が手元に届いており支払いを行っていないものを未払金とし、請求書が手元に届いておらず支払いを行っていないものを未払費用とする方法が、未払金と未払費用の判断の方法のひとつであるといえます。

前期以前の仕訳で判断を行う

未払金と未払費用の判断のみならず、会計処理において勘定科目の判断に迷った場合には、前期以前の同様の取引を参考にして、同じ勘定科目を使用して仕訳を計上する方法も、判断の方法のひとつであるといえます。

当然ながら会計処理を業務で行うにあたり、それが何故その勘定科目に該当をするのか、という知識は持っていたいものですが、その知識の習得以前に、目の前にある業務を進めなくてはならない場合もあることでしょう。そのような場合には、前期以前と同じ勘定科目を選択することで、勘定科目の選択の間違いを防ぎやすくなります。

これは会計処理業務のみならず、経理や会計事務所の職に就いて日の浅い人には、まずは理解が及ばなくても前任者や以前の処理と同じ方法を真似る、ということが業務習得の近道になります。

経理職や会計事務所の仕事については下記コラムをご参照ください。
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まとめ

未払金と未払費用の違いについてご紹介致しました。日々の会計処理で勘定科目の選択に迷うことは、経理や会計事務所の職に就いて日が浅い人は当然のこと、長く勤めていても迷うことがあります。
しかし長く勤めるにつれて、自身の知識による判断によって勘定科目の選択をすることが求められるようになります。
会計処理に対しての知識が深められるよう、是非HUPROのコラムをご参考になさってください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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