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修羅場を経験することで人は成長する!エキサイトCFO石井雅也氏が伝える振り子に例えたキャリア形成の考え方とは?【前編】

HUPRO 編集部
修羅場を経験することで人は成長する!エキサイトCFO石井雅也氏が伝える振り子に例えたキャリア形成の考え方とは?【前編】

新卒で大手重工メーカーにて経理を経験した後に、非上場ベンチャーのコンサルティング会社へ転職。経営不振による資金ショートが目の前に差し迫った状況の中、数々の修羅場を潜り抜けて黒字化し、その後2004年にサイバーエージェントへ。

同社では財務経理責任者として、マザース市場から東証一部上場への鞍替えを果たすなど、サイバーエージェントを大企業へと押し上げました。
2019年からはインターネット企業の再生のため、エキサイトの執行役員に就任。わずか4か月でエキサイトを黒字化させ、現在は同社の取締役CFO兼執行役員として活躍されています。

そんな石井雅也氏にHUPRO編集部がお話を聞きました。今回は前編として、石井氏のこれまでのご経歴や仕事内容、キャリア形成における大事な考え方などを重点的にご紹介していきます。

【ご経歴】

1998年 大手重工メーカー入社
2002年 コンサルティング会社入社
2004年 株式会社サイバーエージェント入社
2019年 エキサイト株式会社入社

新卒で大手重工メーカーにて経理を経験

―新卒で大手重工メーカーに入社した経緯を教えてください。

最初はベンチャー企業とはほど遠い、財閥系の重工メーカーに入社しました。単純に大手だからという理由で選びました。

というのも、私が新卒で入社したのは1998年だったのですが、当時はベンチャー企業に就職するということが一般的ではありませんでした。例えば、楽天や今在籍しているエキサイトは1997年創業、サイバーエージェントも1998年創業でしたので、ベンチャーに就職するという選択肢や考えは当時の私にはありませんでした。

新卒で入社した会社は、安定した大企業という感じで、定年まで勤め上げる前提でジョブローテーションが組まれており、経理を2年、営業を2年経験しました。

―そこからベンチャーに転職したのはどういった経緯からですか?

安定もしており居心地は良かったのですが、入社してしばらくすると自分の10年後、20年後の仕事や役職、年収といったものが見えてしまい、先が見える人生は面白くないなと思ってしまいました。

また当時はバブル崩壊から10年が過ぎたところで、失われた10年と言われていました。そんな中2000年に楽天やサイバーエージェントといった会社が上場し、若い人たちが活躍し始めたのを見て、ベンチャーの時代になっていくだろうなとも感じていました。

それにプラスし、キャリア形成において、振り子の振り幅を大きくして両端を経験することが大事だと思っています。安定した大企業という位置から、対極にある非上場のベンチャー企業を経験することで成長できると思い、転職することを決めました。

この「振り子の理論」はビートたけしさんが以前にお話しされていたもので、これを自分なりに解釈しています。自分なりの軸を決めたうえで、振り子の両端を経験すれば、全ての事象や真実は必ずその間にあるので、あらゆることに対応できるし、振り幅が大きければ大きいほど他へ行ってももっと大きなことができると考えていて、振り子の振り幅を大きくするということがキャリアを形成していく上で重要な要素の一つだと思っています。

未経験ながらもコンサルティング会社の管理部で企業再生

―非上場のベンチャー企業はどのような会社で、具体的にどのような仕事をしていましたか?

ベンチャーキャピタルから資金調達したばかりのコンサルティング会社で、全国に拠点を開設し、拡大路線に入ったところでした。そういう状況でしたので、入社当初は人材採用や拠点の開設など攻めの仕事をしていました。ですが結果として上手くいかず、次第に競争環境も厳しくなり、資金もなくなりつつあるという状態になっていきました。

そういった中で、新たに管理部門のトップに就き、今度は反対に守りの仕事をするようになります。トップに就いてすぐに資金が数ヶ月でショートすることが分かったのですが、すでに債務超過となっており外部からの資金調達が難しく、自力で黒字化するしかありましせんでした。

そうなると、コンサルティング会社のコストは人件費が大部分を占めるため、雇用にも手を付けざるを得ませんでした。それ以外にも、拠点の統廃合、給与体系・組織の見直しなど、生き残るためにあらゆる手段を講じました。結果として、何とか黒字転換し、資金調達を行うことができました。

この時は僕の給料も生活できるギリギリまで下げ、休日・昼夜も関係なく仕事をしており、本当に人生の修羅場と言える時期でした。

まだ20代後半だったので、経営の事は全然分からず、とはいえ数ヶ月で資金が無くなる状況でしたので、なんとしても黒字にするしかないという思いだけで働いていました。

自分の将来やキャリアも関係なく、『今日やらなければ明日はない』という恐怖心と、絶対に自分がやらなくてはいけないという覚悟だけで全精力を注いでいました。

今振り返っても本当にキツかったのですが、修羅場から逃げずに立ち向かって突破できた経験は自分の人生、キャリアの財産となっており、この経験が今の自分自身の競争力の源になっていると思います。

―経験が無いことばかりでわからない点も多かったとのことですが、どのようにして対応していきましたか?

実務と同時に本から多くのことを学びました。
企業再生をするうえで座右の書にしていたのは、ミスミグループ本社の第2期創業者・三枝匡さんの本です。

三枝さんは企業再生の仕事を数多く経験した方なので、非常に参考になりました。実際の再生事例を本にした「V字回復の経営」「戦略プロフェッショナル」「経営パワーの危機」の3冊を読み込んで、自分なりの解釈をしたうえで、事業再生プランを作り、資金繰りの予測もしながら各部署と連携し、試行錯誤しながら実行していきました。

当時は相談できる人もいなかったですし、全てが初めての経験で不安しかありませんでした。しかしなんとか黒字化し、資金調達もできたこともあり、自分の中では一区切りついたという思いもあり、この経験は今でも自分にとって、非常に大きなものになっています。

今までの経験を活かすストック型の思考でサイバーエージェントの管理部へ

―次の転職先にサイバーエージェントを選んだ理由を教えてください。

上場している大企業と未上場のベンチャー企業の2社を経験して、ベンチャー特有の熱気やスピード感は自分に合っていましたが、管理部門の仕事という点においては、求められる管理レベルが格段に高くなる上場企業の方がより高度な仕事ができると感じたので、上場しているベンチャー企業を選びました。

その中でサイバーエージェントを選んだ理由はすごくシンプルで、サイバーエージェントってすごくチャラいイメージがあると思うのですが(笑)、面接で待っている際に、前を通る全ての社員が、会釈と挨拶をしてくれて、活気もあって、直感でいい会社だなと思い入社を決めました。

思い返してみても、過去様々な会社を見てきて、業績がいい会社って職場が良い意味でざわざわしていて、活気があるというのは共通している部分だと思います。

―サイバーエージェントで楽しかったことは何でしょうか?

入社した2004年の売上高は267億、営業利益は17億、連結子会社10社という規模でしたが、退職した2018年の売上高は4,195億、営業利益301億、連結子会社109社という規模になっていました。

サイバーエージェントはこれだけの成長をしながらも、意思決定や実行のスピードが本当に早くて、どんどん新しい事業やサービスを仕掛けていくので、管理部門としても日々やることが沢山ありました。

常に事業部と伴走しながら一緒に成長できる環境だったので、どんな仕事も楽しく、結果的に楽しすぎて14年半も在籍してしまいました。
特に東証1部への市場変更と400億円のユーロ円CBでの資金調達は上場企業としての醍醐味も感じることができた印象深い仕事でした。

最速で最高の仕事をするということを常に心掛けており、一般の会社の数倍のスピードで実行していたので、やりがいがありましたし、僕たちだからできているという自負もあって誇らしく、面白かったです。

―反対に一番辛かったことは何でしょうか?

一番の失敗はマネージャーになった最初の年の年度決算の時です。決算短信等の開示業務も一切やったことない状態で、入社1年も経たないうちに経理部門のトップになったこともあり、決算短信の記載で思いっきりミスをしてしまいました。当時の現預金残高は200億以上あったのですが、桁を間違えて20億と記載するなど10箇所以上の訂正をするというありえないミスをしてしまい、今でもその失敗は身に染みています。

もう二度とこんな失敗はできないと思い、そこから仕組み化、システム化を意識して、継続して管理業務を効率化していきました。

最終的には、数あるネット企業の中でも決算発表が一番早いぐらいまでのスピードになりました。

―コンサルティング会社のときは実務とあわせて様々な書籍からインプットをされていましたが、サイバーエージェント時代はどのように学習・インプットをしましたか?

私は管理部の仕事はストック型だと考えています。管理の仕事は、会社や業種、時代が変わっても大きく変わることがなく、定型業務が多くを占めます。ですので、管理の仕事というのは自分自身の知識と経験のストックしていくことがとても重要なのです。

具体的に言うと、私の場合、新しい仕事をやるときには、人の何倍もの時間を使うようにしています。その仕事だけでなく、そこから派生することや周辺分野までを完全に理解できるまで調べ、それをまとめたり、フォーマット化しておきます。例えば、会計処理1つをとっても、関連する会計基準やそれができた経緯、どういった考えのもとで作られているのかまで調べます。法律でいうなら立法した趣旨などがあるように、そのルールが出来た背景まで知ることを徹底しています。

このようにして理解したことを資料にまとめて残しておくと、そのあと仕事をする上で、今までやったものに近しいものがあれば、過去まとめた資料から答えを導き出すことができます。前に対応した件はこういった考えだから、今回の件にも当てはめられるのではないかというようになります。

そのため、管理の業務をやる上では、とにかく最初は時間をかけてしっかりと自分が学習して、それらを仕組み化、フォーマット化しておけば、自然と効率化することができます。

ー後編へ続きます。

今回お話を伺ったエキサイトホールディングス株式会社 取締役CFO 兼 執行役員の石井 雅也氏の Twitterはこちらエキサイト株式会社のホームページこちら

この記事を書いたライター

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