仕入債務回転率は、仕入債務の決済スピードを表す指標です。仕入債務回転率が高けば高いほど、決済スピードが早いことを意味します。資金繰りの観点からみれば、仕入債務回転率は低いほうが会社に現金を滞留させることができます。この記事では、そんな売上債権回転率について考え方から計算式まで丁寧に解説していきます。
仕入債務回転率(Accounts Payable Turnover Ratio)とは、企業の仕入債務の支払いが、どの程度効率的に行われているかを示す指標です。買入債務回転率とも呼ばれます。
企業が商品やサービスを購入することにより生じた支払義務であり、購入後、一定日後に支払われることを約束した金銭債務です。具体的には、買掛金や支払手形などを指します。
年間での仕入総額を、会計年度末の仕入債務残高で割って求める。仕入債務回転期間は仕入総額の金額に影響を受けるので、売上の増減による売上原価の増減なども合わせて分析をすることでより実態を正確に分析することが可能です。
仕入債務回転率は、簡単に言えば、仕入債務の支払・決済スピードを表す指標です。この指標の単位は「倍(率)」(turnonver)で、1年間の信用仕入高(掛け、つけ払いで仕入れた金額)が仕入債務の何倍に相当するかを示しています。
資金繰りの観点では、支払はなるべく少なく・遅くすると、キャッシュアウトを小さくできるので、仕入債務回転率がより小さくなることが、企業の資金繰り上は有利となります。仕入債務回転率が低いほど、商品の仕入から代金の支払いまでに時間をかけているため、支払条件が悪化している、あるいは資金不足のために支払いを延ばしていることが予想されます。一方で、仕入債務回転率が高い場合は、資金に余裕があると判断できる。ただし、仕入債務回転率が高い場合は、必要な運転資金が増え資金コストが増加するため、資金繰りが圧迫されていると解釈することも可能なので、以前と比較して、仕入債務回転率がどのように変化しているかを見ることが重要です。
仕入代金の支払いは遅ければ遅いほど、会社にとっては資金繰りに余裕が出ます。よって、仕入債務回転期間は長い方が好ましいと考えます。しかし一方で、仕入債務回転期間があまりに長い場合は注意が必要です。支払いサイトが長いだけなら問題ないものの、支払条件が悪化している、あるいは資金不足のために支払いを延ばしている可能性があります。
仕入債務回転率がちょうど1倍ならば、仕入原価、すなわち購入代金を現金で支払うまでに1年かけていることを意味する。2倍ならば、半年で現金決済しているということを意味します
仕入債務回転率は、小さければ小さいほど良いという単純なものではありません。なぜなら、極限まで仕入債務回転率を小さくすることは、仕入先に対して、支払を渋ることを意味するからです。仮に、仕入先(サプライヤー)の企業規模が小さいと、下請法の制限を受けやすくなるし、そもそも、支払を渋る売り先への供給はどのサプライヤーも望ましいとは考えません。したがって、サプライヤーとの信頼関係のために、ある一定程度の規律をもって支払期間を定めることが重要です。
従来は、売上金の回収は早く行い、支払いはできるだけ延ばし、仕入債務回転率を下げることが有利であると考えられてきましたが、現在は、早く支払いを済ませることで取引先に仕入金額の値引きしてもらうほか、総資産を減少させることを重視する企業が増えてきています。
仕入債務回転率は、通常の営業取引から生じた仕入債務(買掛金+支払手形+受取手形裏書譲渡高)がどの程度残っているかをみるための指標です。 年間仕入高(掛仕入高)と期末の支払債務(買掛金+支払手形+受取手形裏書譲渡高)との比率で計算します。仕入債務回転率が高ければ仕入から仕入債務の支払いまでの期間が短かく、期末仕入債務の額が仕入高に対して小さくなります。仕入債務回転率は以下の式で計算することができます。
仕入債務には、支払手形と買掛金、決算書注記欄の受取手形譲渡高が含むのが普通です。仕入債務とは、仕入れの対価として支払う現金以外の買掛金と支払手形のことですが、仕入債務に占める売上原価(仕入の総原価)の構成比率を求めることで仕入債務回転率を求めます。
仕入債務回転率を活用する場合、単に売上高の増加(増収)に対応する売上原価が増えた比率にだけ注目するのではなく、その売上原価の元となる仕入原価の現金支払いの期間が、売上代金の顧客からの回収より相対的に長くなるように管理するようにします。
仕入債務回転率が高いほど仕入債務の支払いが早く、仕入債務回転率が低いほど仕入債務の支払いが遅い、ということが分かるので、資金繰りを改善する目標指標として活用することも可能です。
仕入債務回転率は、現金商売や消費者相手の商売に比べて、卸売業や法人相手の商売の方が低くなる傾向にあるため、業種業態によって適正水準に差が生じます。したがって、自社の仕入債務回転率が経年でどのように変化しているかで、その良否を判断することが重要です。仕入債務回転率と仕入債務回転期間にあたっては、1年間のみの仕入債務などで計算すると経営判断を誤る恐れがあることから過去2~3年の分析を行うことが重要です。これにより全体としての傾向を抑えることができ、適切な改善策を講じることが可能になります。
仕入債務回転期間とは、商品や材料を仕入れてから支払うまでの期間を示す指標です。つまり、仕入債務が発生してから同債務が消滅するまでの期間ということになります。仕入債務回転日数を長くすることは、仕入債務を決済するために支払われる現金が社外流出するタイミングを遅くすることになります。
仕入債務回転率は、通常、日数(あるいは月数)で表示されます。仕入債務回転期間は、仕入債務が売上高の何日分あるかを示しており、仕入債務回転率を期間で表したものです。
仕入債務回転期間が小さくなるにつれて、仕入債務が現金決済されるまでのスピードは速くなり、この値が大きくなるにつれて、仕入債務が支払い猶予を受けて支払を先伸ばしにしている時間が長くなっています。
例えば、毎日1万円の仕入があり、翌日現金決済することになっていれば、その日の終わりにはちょうど同額の1万円の仕入債務が存在することになる。その場合、1万円÷1万円/日=1日と計算することが可能です。
**計算式の意味が分かりやすい「仕入債務回転率」は、計算結果の「倍(率)」は指標として理解しにくいのに対し、計算式の意味が分かりにくい「仕入債務回転日数」は、計算結果の「日数」は指標として理解しやすいことが特徴です。 **
仕入債務回転率は、会社の資金繰りを考えるうえで極めて重要な指標です。仕入債務回転率が高くなればなるほど、仕入債務を早いサイクルで支払っているということになりますし、低くなればなるほど、仕入債務を遅いサイクルで支払っているということになります。仕入債務回転率が低くなればなるほど、会社に資金を滞留させることができますが、代金決済の条件は、業界慣習があることが普通です。したがって、過去と比較してどのように変化しているかが重要となります。
仕入債務回転率が高くなっているような場合には(この場合、仕入債務回転期間は短くなります)、資金繰りが困難になっていないかをチェックすることが必要です。業績不振のために、仕入先が倒産を警戒して代金回収を厳しくしている場合にも、仕入債務回転率は高くなります。仕入債務回転率を計算して、自身の企業の資金繰りをチェックしましょう。