会社を経営するときは、人件費は最も必要なものであり、大きな部分を会社の費用において占めています。税務上の人件費の処理を把握することは、税金を納付する上において非常に大事なことです。しかし、役員給与についての税務上の取り扱いについてはよくわからない方もいるのではないでしょうか。
今回は、役員給与が税務上どうして問題になるか?税務上の役員の範囲とは?役員の中で、従業員の職務も行っているときはどうなるか?税務上、役員給与としては損金としてどのようなものが認められるか?税務上、役員に対する退職金とボーナスはどうなるか?について解説していきます。役員給与についての税務上の取り扱いがわからないときは、ぜひ参考にしてください。
会社は、従業員と役員に対してそれぞれ給与を支払っています。税務上、基本的に従業員に支払う給与は損金に全額を算入することができますが、役員に支払う給与は仕事の対価に相当する金額をオーバーする分は損金に算入することができません。
というのは、役員の立場は会社の利益を処分する方針が決定できるため、過大に自分の給与額を決定することによって税金を逃れる恐れがあるからです。
肩書が役員でなくても、役員と同じような実態であるときは、税務上は役員になります。
税務上の役員の範囲としては、次のようになっています。
・形式的な役員
取締役、執行役、監査役、会計参与、理事、清算人および監事です。
・実質的な役員
会社の経営に携わっている人で、従業員を除いた人です。
例えば、理事あるいは取締役になっていない副総裁、総裁、副会長、会長、副理事長、理事長、組合長が該当します。
・同族会社の役員
同族会社の従業員の中で特定の人です。
例えば、同族会社の関係者の中で、一定以上の持株割合があり、経営に携わっている従業員が該当します。
例えば、役員としてオーナー社長の妻は見られる可能性が大きくなります。
例えば、役員の中には、取締役営業部長や取締役総務部長などというような肩書がある取締役も多くいるでしょう。使用人兼務役員というのは、このように従業員の職務も行っている役員のことです。この使用人兼務役員は、給与の取り扱いが役員と一部違うことがあります。
具体的には、基本的に従業員としての給与分に関しては損金に算入することができます。そのため、従業員としての給与分と役員としての給与分をはっきりと区別することが必要になります。
なお、役員の中で、常務、専務、副社長、代表執行役、代表取締役、その他地位がこれらに準ずるものを有する人などは、使用人兼務役員にはなりません。というのは、このような人ははっきりと会社の代表者になるためです。また、無条件で監査役は使用人兼務役員になれません。
役員に対して会社が支払う給与額の中で、定期同額給与、利益連動給与、事前確定届出給与に当たる金額に関しては損金に算入することができます。
・定期同額給与
支払う時期が1ヶ月以内で、しかも事業年度内に毎回支払う金額が同じであるもの
・利益連動給与
届け出の所定の期限までに、その定めの内容について所轄している税務署長に届け出しているもの
・事前確定届出給与
客観的な算定方法で、いくつかの条件をクリヤーするもの
しかし、これらのどれかに当たるものでも、高額で相応しくない金額については損金に算入することができません。高額で相応しくない金額の基準としては、形式基準と実質基準があり、いずれで判断しても高額で相応しくない金額になったときは、いずれか多い方が損金に算入することはできません。
形式基準というのは、株主総会での決議事項や会社の定款と比べて判断することです。
株主総会で決定した金額をオーバーするときは、そのオーバーした金額は相応しくないと判断されます。一方、実質基準というのは、会社の財政状態、役員の仕事内容、同業他社の役員給与、従業員の給与などと比べて判断することです。
役員に対する退職金に関しては、会社の規定で決定していると基本的に損金に算入することができます。しかし、退職する事情、役員として在任していた期間、同業他社での役員の退職金の支給状況、これ以外の状況をトータル的に考慮して妥当であると認められるような金額である必要があります。
また、役員に対するボーナスに関しては、役員に対する給与と違って、臨時的な支払いであるため、損金に算入することができません。しかし、先にご紹介した事前確定届出給与として、税務署に所定の期限までに臨時のボーナスを「いつ、誰に、どの程度」支払うという届け出を行うと損金に算入することができます。