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求めるのは「探求心」と「全社観点」! 新卒での就職を避けキャリアを切り拓いたスペースマーケットCFO/CHROが語る仕事観と今後のビジョンとは?

HUPRO 編集部
求めるのは「探求心」と「全社観点」! 新卒での就職を避けキャリアを切り拓いたスペースマーケットCFO/CHROが語る仕事観と今後のビジョンとは?

ベンチャー企業やマザーズ上場企業などでの勤務を経て、現在は株式会社スペースマーケットCFO/CHROとして活躍する佐々木正将氏。豊富な経験を持つ佐々木氏に、これまでの経歴やこれからのビジョン、求める人物像などHUPRO編集部がお話を伺いました。

【ご経歴】

2006年12月 ㈱ブイエスシー(現 イオンペット㈱)入社
2007年11月 ㈱イントランス 入社
2011年10月 ㈱ミサワ入社
2014年7月 ㈱スマイルワークス 入社
2015年7月 ㈱スマイルワークス 取締役CFO就任
2017年1月 ㈱スペースマーケット入社
2017年12月 ㈱スペースマーケット取締役CFO就任
2020年3月 ㈱スペースマーケット取締役執行役員CFO/CHRO就任

「あえて新卒を避ける」という選択

―大学を卒業されて、最初はどういったお仕事に就かれたのでしょうか?

実は私は新卒では就職せず、大学を卒業してから簿記や税理士資格など会計系の勉強をしつつ、少年サッカーのコーチや会計事務所などで短期の仕事をして食いつないでいました。気づけば、きちんと会社で働き始めたのは27歳のときでした。今思えばすごく遅いデビューですね(笑)

もともと数字が得意で、数字から会社を成長させる経理という仕事に興味を持っていました。しかし、新卒として総合職で就職した場合、自分が希望している経理の仕事に配属されるのはなかなか難しいという面があります。

新卒で総合職採用というのは、自分自身の可能性に気づいていない人や、誰かに可能性を見つけてもらいそれを伸ばしたいという人には向いていると思います。しかし、すでにこうなりたいと決まっている人や、やりたいことがはっきりしている人には向いていないと感じていました。

私は自分の将来は自分の意志決定の結果でありたいと思い、そこで、あえて新卒で就職するのではなく、中途採用枠で経理として募集していた企業に入社するという選択をしました。

―そもそも、会計や経理に興味を持たれたきっかけは何がありましたか?

よく経営の三資源として「ヒト・モノ・カネ」と言われます。この中で、自分自身がバリューを発揮できる分野はどこかということを考えたとき、数字が好き、数字に強いということもあって、やはり「カネ」の部分ではないかと思ったことがきっかけです。
自分が得意とする面を生かして、とにかく会社の成長に対して重要な役割を担いたいと考え、会計や経理に興味を持ちました。

転職を重ねて得た数々の経験

―最初に入社されたのはどのような企業だったのでしょうか?

最初に中途で入社したのは、動物病院をチェーン展開するベンチャー企業でした。動物病院というのは町医者が多くて、なかなか休めないし、女性の獣医さんの場合には自分自身の出産や子育てを考えるとなかなか開業も難しいという現状があります。そこで動物病院もチェーンにして、獣医さんたちも社員としてきちんと週休二日で休めるように、また多くの獣医が集うことによる医療提供レベルの向上ということを取り組んでいた会社でした。

そこの会社で、当時未経験ではありましたが経理職にて採用してもらいました。
私が入社するとき、経理の仕事を任せてもらえるということと同じぐらい、自分の上司がどんな人かということを大事にしていたのですが、直属の上司がすごく人柄の良い方で、それが後押しにもなり入社を決めました。

しかし、入社した翌日ぐらいに、なんとその上司が来月に退職する予定であり、今回はその後任として採用されたと言われてしまいました。そして、その一か月後に本当に上司の方が辞めてしまい、いきなりライオンの檻に放り込まれた感じでした(笑)。
そこからは無我夢中で勉強しながら頑張るしかありませんでしたね。

―いきなりすべての実務を任せられるというのは大変だったかと思います。もしやり方が分からないときにはどう対処されたのでしょうか?

これは経理という仕事のいいところだと思うのですが、座学で勉強したことの9割ぐらいが実務でも通用する部分があります。よく学校の勉強と仕事での実務は違うと言われますが、経理の場合は勉強と実務の紐づけさえ出来ていれば、かなりの割合で実際の仕事にもそのまま活かせる部分が多いです。それでも分からないところは、自分で勉強したり、社内外問わず周囲の人にとにかく聞いてなんとか対応していました。

―その後、マザーズ上場企業に転職されますが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

入社して1年後に、その会社が親会社に吸収されるという話になりました。そのまま親会社に行くという選択肢もあったのですが、その場合は一事業部の経理担当になるということで、全社の経理を1年やった立場からするとそれはあまり面白くないし、どうせ自分が勤める会社の社名も変わるというのなら別の会社に行こうと思いました。

―転職されたのはどのような企業だったのでしょうか?

次は不動産を扱うマザーズ上場企業でした。といっても上場企業にこだわっていたわけではなく、『一人で全社の経理が出来ること』を軸に転職活動を行い、その会社では、経理から開示業務などに関わりました。
入社したときは30人ぐらいの規模だったのですが、不動産業界の景気もよく順調に伸びて、1年後には社員が50人ほどに増えました。しかし、その後サブプライムローン問題・リーマンショックが起きて創業社長の退任に加えリストラもあり、社員数が激減してしまいました。

入社したときには、経理全般ということだったのですが、リストラがあり管理系で残ったのが自分一人だけになってしまい、財務や総務、労務といった仕事をすべて担うことになりました。かなり大変ではありましたが、そこで自分自身が対応できる職域が一気に広がりましたね。

―大変なことが多かったと思いますが、そこを乗り切った秘訣を教えてください。

確かに、メンタルが多少やられるような面はありましたが、会社を去っていく先輩方に「残って頑張ってくれ」と言われたことが大きかったですね。
あとはすでにお話したように、新卒で就職したわけではなく正社員になったのが27歳だったので、人よりも遅れているという自覚があり、追いつくためには人よりも頑張らないといけないと思っていました。

当時、ポリシーとしていたのが「人の2倍の速度で、2倍の時間を使い、4倍の成長をする」ということです。そうすれば、新卒から社会に出ていた人を追い越せると思っていました。だから、とにかく仕事を任せてもらえる環境はすごく有難く感じていました。
結果として、1社目でも2社目でもなんとか踏ん張ってピンチをチャンスに変えられたということが、自分のキャリアの原点になっています。

―次のご転職ではどのような軸を持っていたのでしょうか?

前職でマザーズ上場企業を経験したので、その一つ前のフェーズとしてこれから上場するいわゆる上場準備中の企業という点に軸を置いていました。
そして、インテリアの小売業でIPOを目指している企業に入社をしました。CFOがいて、その直下で管理部のマネージャーという立場でした。入社したのが上場直前ということもあり、上場前の最後にやるべきことや、上場した直後の対応というのが業務の中心でした。あとはIR業務の立ち上げと、管理部門全体のマネジメントをやらせてもらいました。

―マネジメントという点ではプレーヤーとは違った苦労があったかと思います。

そうですね。当時、一緒に働くメンバーは自分が直接採用した人ではないので、根本にある仕事に対する基準値が違うという点では苦労しました。

当時は“甘辛ミックス”といった言葉をキーワードにしていて、ハードワークで仕事では厳しくするけれど、それ以外ではしっかりと納得いくまで話し合うといったメリハリを考えて取り組んでいました。よく飲みにも行きましたね。スタイルとしては、遅くまで一生懸命仕事をして、その後は飲んで発散するといういわば昭和スタイルでした(笑)。
この会社では2年半ぐらいお世話になり、その後はITベンチャーに転職しました。

また違ったフェーズとして、上場に向けての準備をゼロから始める段階の会社という軸で転職活動を行い入社を決めました。実際に入社してみると、上場よりもまず事業の成長を考えなければならないという段階で、資金調達と事業成長のためのアクション策定を担いました。あとは、初めてCFOとして経営陣を務めさせていただいたり、人事業務も本格的に手掛けることになりました。

―人事というお仕事で大変だったことはどのような点でしょうか?

ファイナンスとは違い、人事というのは「人」に対する面が大きい仕事です。同じコミュニケーションをしても全員に伝わるかというとそんなことはありません。そういうときには、どうフォローアップしたら良いか試行錯誤しながら進めていました。また採用でも、10人と会って1人通るか通らないかということも多々あります。大変な面も多かったですが、色々と勉強になりましたね。

求められる人物像とこれからのビジョン

―その後は、現職であるスペースマーケットに入社されます。これはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

上述の通り、前職では資金調達の業務にも関わり、その会社はベンチャーキャピタルが5〜6社入っていたのですが、退職が決まったときにその方々にも相談をしました。そこで有難いことに色々な会社を紹介してもらい、その中に現職のスペースマーケットがありました。

入社を決めた理由は3つあって、1つは前職での経験から事業の成長が大切だと分かっていたので、成長曲線に入っている企業だということ、もう1つは、社会性のある事業に関わりたいという想いがありました。言い換えれば、その会社のサービスが広がることで社会自体が良くなるということです。最後は、相性ですね。特にCFOという立場では社長とのやり取りが多くなるので、社長とのギャップがないことが重要でした。

入社して、最初に関わったのは監査法人と主幹事証券の決定でした。しかし入社したとき、それまで時流に乗って勢いで成長していたのがちょっと鈍ってくるという段階で、そこでKPIを改善するという業務も手がけるようになりました。あとは管理部の立ち上げも最重要ミッションでした。

―スペースマーケットの管理部の強みや特徴について教えてください。

そもそも、スペースマーケットの場合は「管理部」とか「バックオフィス」ではなく、「コーポレート部」という言葉を使っています。これは、全社の成長を仕事にしているという意味が込められています。
体制ですが、部長の下にメンバーが5人いる形で、それぞれ経理、財務、労務、法務、IRを担当しています。人事は別部署の業務として私の方で担っています。

自社の強みとしては、コーポレート部のメンバー全員に言えることですが、まず成長欲求が非常に強いことが挙げられます。機会が与えられることで、それを自ら糧にして成長したいと思える人というのが採用の方針なのですが、今のメンバーは全員がそれを持っています。
また色々な業務に携われて、会社として成長するとともにポジションもたくさん用意して、社内の環境で新しいチャレンジが出来るようにと考えています。

私自身、これまで会社や事業が安定してくると、どうしても次のチャレンジをしたいという気持ちが強くなって転職をするという流れがあったので、次々と新しい分野に挑戦できる環境をスペースマーケットの社内でつくり上げることも、私の重要な役割だと思っています。

―コーポレート部に求められる人物像を教えてください。

大きく2つあって、それは「探求心」「全社観点」です。「探求心」は、それぞれの職能を上げるために必要な要素です。コーポレートの業務というのは、やはり専門性が重要ですが、そこに関して知識というインプットと、業務というアウトプットを継続していくことが求められます。そのためには探求心が必要だと考えています。

もうひとつの「全社観点」というのは、“管理部”ではなく全社の成長を仕事にしているという意味で“コーポレート部”と名付けていることとも関係するのですが、自分たちの業務が増えることを厭わずに、全社が成長することをまず一番に考えられる人を求めています。そういった考え方ができる人であれば、たとえ未経験でも採用します。

―信頼できる部下、メンバー像について教えてください。

いま挙げた「探求心」と「全社観点」に加えて、「まずやってくれる人」「最後までやり切ろうとする人」「結果を出すことに執着する人」ですね。常にチャレンジを成しつつ、プロフェショナルであろうとする人には、信頼して仕事を任せることができます。これらの考え方は、会社の採用情報ページにも「Value」として掲載しています。

―社内のコミュニケーションで工夫をしていることはありますか?

スペースマーケットは、入社した人が口を揃えるように、「人がいい」というのが特徴であり、魅力でもあるのですが、そこに甘んじて何もしなければどんどんコミュニケーションが希薄になってしまい、ひいては成長が停滞する人が出てきてしまいます。
そこで、状況を適宜把握してフォローアップしたり、会社の人事としての考え方を全社に対して発信できるように取り組んでいます。

あとは、記事の発信や社内勉強会も定期的に実施しています。コーポレート系の業務は、他部署と比べると外部への発信機会がどうしても少なくなってしまいます。そういったことを補うために、積極的な発信を心がけています。

また、スペースマーケットは平均年齢が30代と、ベンチャー企業にしてはすごく年齢層が若いというわけではありません。ただノリで面白い、楽しいというようなイベントよりも、しっかりと各々が学べたり何かを知れる内容が良いと思い、社内勉強会や社内情報交換会を実施しながら、そこを交流の機会にもしています。

―佐々木さん自身の仕事の原動力はどういったものでしょうか?

仕事というのは人生の中でかなりの時間を使います。私の場合、今まで人よりも多く働いていたので、仮に1日に10〜12時間働いたとすると、1日の約半分、つまり起きている時間のほとんどを仕事に費やすことになります。それならば、その時間を有意義なものにしたいという考え方が根底にあります。

有意義というのは、時計を気にすることもなく時間があっという間に過ぎ、何かに没頭している状態です。楽しく遊んでいるとき、時間を忘れるという経験は誰にでもあると思います。私の場合は昔サッカーをやっていてそのときは時間を忘れて取り組んでいました。どんなに練習が厳しくても、それが好きだったり楽しかったりすると練習のモチベーションにも繋がります。

仕事もそれと同じで、ラクだから良いというわけではありません。やりがいというのは頑張ったからこそ得られるのだと思います。そして、せっかく頑張るのであれば、没頭するぐらいに一生懸命やって、できるだけ楽しんでやりたいと思っています。

―たしかにつまらなそうに仕事はしたくないですね。

あと、せっかく自分が生まれてきたのだから世の中に必要とされたいとも思っています。
よく、将来あなたは何をやりたいですか?と聞いて、やりたいことがないと答える人は意外と多いです。私の感覚で言えば、5割以上の人はあまり将来のことが浮かんでいないように感じます。特に、専門職でなかったりすると、「自分は何ができるのか?」「将来どうなりたいのか?」と思うことも多いようです。

しかし、私は将来やりたいことが見えなくても別に構わないと思います。無理にやりたいことを見つけなくても、その時点で自分が得意なことで生きるという道もあります。自分のやりたいことよりも、得意なことで生きていったほうが世の中への貢献度が高いかもしれません。

また、もしやりたいことがわからないという人がいたら、周囲が適性を見つけてあげることも必要だと思います。きっかけや機会を与え、少しやってみて適性があったり興味が増すようであれば、そこからさらに深めていけばいいと思います。

―スペースマーケット の今後のビジョンや戦略は?

ミッションにも掲げていますが、「スペースシェア」というものを、もっとあたりまえにしていきたいです。スペースマーケットは、現在はこの業界でナンバーワンを走るリーディングカンパニーという位置付けですが、既存の市場環境でスペ-スシェアを成長させるだけでなく、「スペースシェア」という考え方を、より一般的にしていくことを目指しています。つまり、このマーケット自体をつくり上げていくということです。

そのため、スペースマーケットは会社としての事業とは別に「シェアリングエコノミー協会」を設立しました。政府の成長戦略にもシェアリングエコノミーは盛り込まれていますので、そういった面での貢献もしていきたいです。
ただの場所の貸し借りのマッチングではなく、今後はシェアリングエコノミーを取り巻く環境を通じ、もっとより多くの人が「スペースシェア」というサービスを利用する環境をつくっていきたいと思っています。

─本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。

今回お話を伺った株式会社スペースマーケットの
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この記事を書いたライター

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