固定資産はある程度の年数使用することを前提に購入します。使用しなくなったり、劣化したりした固定資産は売却したり廃棄したりしますが、廃棄にもお金がかかりますよね。除却することによって発生した損失を計上する勘定科目が「固定資産除却損」です。今回は「固定資産除却損」について解説します。
固定資産の除却とは、帳簿上で固定資産の簿価(固定資産の残高)をなくすことです。あくまで会計上この固定資産は使用していませんよを示すための作業になります。そのため該当する固定資産を使用していない状況というのが大事なポイントになります。また使用していない状況というのは、固定資産の廃棄や取り壊しなどを含みます。
固定資産の除却を行った場合、帳簿残高を「固定資産除却損」で経費計上することができます。固定資産除却損の対象となる資産は、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具等、「有形」固定資産です。同じ固定資産でも、無形固定資産(特許権や商標権などの法律用の独占権利、施設権利、営業権利(のれん)など)は該当しません。
固定資産の売却とは、固定資産を売ることを指します。
そのため帳簿価額にも変更が生じます。売却額が下回った場合も損失扱いすることできます。その際「固定資産売却損」という勘定科目を使います。
なお、帳簿価額よりも売却額が高かった場合は「固定資産売却益」となり、損失計上ではなく利益として計上しなくてはなりません。
固定資産の除却は、固定資産の性質上頻繁には起こりません。あくまで臨時的な損失のため、損益計算書上では「特別損失」として計上されます。つまり、除却を実行した年は、その分支払う税金を少なくすることができます。
確定申告の際には、固定資産台帳に残存価額が残っている固定資産についてチェックし、不要になった設備などは、そのままにせず、確実に除却することで節税になるのです。
固定資産除却損会計処理にあたっては、まず除却する際の有形固定資産の帳簿価額(=簿価)を明らかにする必要があります。
直接法の場合は、減価償却費は固定資産勘定から直接減少されていきます。よって、除却時の帳簿価額をそのまま当該有形固定資産勘定の貸方に記帳します。
間接法の場合は、除却した有形固定資産の取得価額から減価償却累計額をマイナスして計算します。
取得原価-減価償却の累計額
例えば、取得原価200万円で、耐用年数10年、毎年20万円ずつ減価償却していく固定資産を5年後に除却する場合は、
200-(20*5)=100万円
除却損=残存簿価=100万円が除却損となります。
考え方の例としてあげましたので、計算を簡単にしていますが、固定資産の取得時期は基本的にバラバラだと思います。つまり、期中または期末に有形固定資産を除却したときには、期首から除却日までの減価償却費も月割計算して計上する必要(1ヶ月未満の場合は切り上げ)がありますので注意しましょう。
固定資産の場合は、処分にかかる費用(取壊費用・処分費用・除却手数料など)も「固定資産除却損」に含めて計上することが可能です。
ただ、「廃棄」のためにかかる費用は現金支出となるため、手元にお金がない場合は、費用をすぐには出せない場合もあります。
そのような場合、実際には廃棄せず、使用を停止して事業に使わなくなった状況でも、スクラップ費用を差し引いた分で固定資産除却損を計上することも可能です。その資産が今後、使用されることが無いことが前提です。これを「有姿除却(ゆうしじょきゃく)」といいます。
【例】簿価300万円の固定資産を処分するための価格が20万円の場合
実際に廃棄した場合:300+20=320万円を固定資産除却損として計上
有姿除却の場合:300-20=280万円を固定資産除却損として計上
それでは、実際に固定資産除却損を仕訳した場合について具体的な例を見てみましょう。
<前提条件>
固定資産の取得原価:1,000万円
減価償却累計額:500万円
(1)スクラップ価値がゼロのケース(簿価を除却損に計上)
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却類計額 | 5,000,000円 | 機械装置 | 10,000,000円 |
固定資産除去額 | 5,000,000円 |
(2)処分費用が50万円発生するケース
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却累計額 | 5,000,000円 | 機械装置 | 10,000,000円 |
固定資産除去額 | 5,500,000円 | 現金 | 500,000円 |
固定資産除却損を損金算入するためには、確実に除却をしたと証明する必要があります。帳簿上は除却しても実際に利用していたり、売却していた場合は節税ではなく脱税になってしまいます。
固定資産については、定期的な固定資産管理台帳のチェック(少なくとも年に一度)や、固定資産の除却についての社内決裁書類、さらに、業者からの資料(廃棄証明書、写真)などを適切に保存し、管理するようにしましょう。