法人の申告書の控えの保存が大切であることは当然のことですが、申告に必要となった他の帳簿書類はどのように取り扱うべきかお困りの人もいるのではないでしょうか。
今回は法人の帳簿書類とは何か、それらを保存すべき期間は何年なのか、また認められている保存方法にはどのようなものがあるか等を解説していきます。
法人は帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類を保存する必要があります。
帳簿には総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳等があり、書類には棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書等があります。
帳簿については下記コラムもご参照ください。
法人は上記の帳簿書類を原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。
法人が、取引情報の授受を電磁的方式によって行う電子取引をした場合には、原則としてその電磁的記録をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。
平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては、帳簿書類の保存期間が9年間、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間と定められています。
帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則となります。よって電子計算機で作成した帳簿書類についても、原則として電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要があります。
しかし電子取引や電子計算機での処理が増加している傾向にあることから、下記による保存も認められています。
帳簿書類の保存は、紙による保存が原則ですが、保存期間の6年目以降の帳簿書類は、一定の要件を満たすマイクロフィルムにより保存することが出来ます。
マイクロフィルムによる保存を行う場合には、一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダ又はマイクロフィルムリーダプリンタを設置する必要があります。
法人が電磁的記録により最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものは、紙による保存によらず、サーバ、DVD、CD等に記録した電磁的記録のままで保存することができます。
電磁的記録による保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けることが必要です。
この申請書は、備付けを開始する日の3か月前の日までに提出する必要があります。
保存すべき書類のうち、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類以外の一定の書類については、紙による保存によらず、スキャナ読取りの電磁的記録による保存を行うことが出来ます。
スキャナ保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けることが必要です。
この申請書は、スキャナ保存を行おうとする日の3月前の日までに提出する必要があります。
法人が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類については、一定の要件の下で、紙による保存によらず、その電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムにより保存することが出来ます。
電子計算機出力マイクロフィルムによる保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出して承認を受けることが必要です。
この申請書は、電子計算機出力マイクロフィルムによる保存を行おうとする日の3か月前の日までに提出する必要があります。
電子取引の取引データの保存方法は電子データをそのまま保存する方法、電子データを出力した書面を保存する方法及び電子データをCOMに出力して保存する方法の3通りの方法があります。
これらの方法は、税務署長の承認を必要としないため、各法人が任意に選択することが出来ます。
帳簿書類を紙では無く電磁的記録により保存をすることは、法人の事務作業におけるペーパーレス化に繋がります。
法人が7年間帳簿を紙にて保存を行うには、その原本の紛失のリスクや紙の保存場所の確保等の様々な問題が生じます。
原本を紛失してしまうと、過去の取引を確認したい場合には一切の情報を得ることは出来なくなってしまいます。しかし電磁的記録により正しく保存を行えば、記録を紛失する可能性は低くなり、かつ適切な管理により過去の情報を得ることが容易になります。
また保存場所の確保は、帳簿書類の保存のために地代家賃を支払っていることと同意となり、保管のために間接的ではあるものの経費を支払い続けていることになります。しかし電磁的記録により正しく保存を行えば、必要な保存場所は確実に削減をすることが出来ます。
これらの理由により、ペーパーレスにて帳簿書類の保存を行うことは法人に大きなメリットがあります。
ペーパーレスについては下記のコラムもご参照ください。
上記のように、法人は会計帳簿を保存する必要があります。事業終了年度や欠損金の有無によって保存すべき期間が異なるため、保存をする期間の判定に迷うことがあれば、一律10年間保存と暗記をしても良いでしょう。
また保存方法は原則は紙ですが、電磁的記録による方法も認められています。適宜法人に好ましい方法を選択するようにしましょう。