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建設仮勘定とは?「仮」ってなに?どう仕訳処理するの?

HUPRO 編集部
建設仮勘定とは?「仮」ってなに?どう仕訳処理するの?

建設仮勘定とは「未完成の固定資産」を計上するときに使用される勘定科目です。例えば建築中の建物や製作中の機械などは完成までに時間がかかりますよね。できあがる前に、代金を支払うこともよくあることです。今回は完成前の支払分を有形固定資産として仮に入れておくために使われる「建設仮勘定」について解説します。

建設仮勘定とは

建設仮勘定は、固定資産の中の勘定科目の一つです。将来は有形固定資産として計上される予定のもののうち、その取得のために先に先方に支払っているものを計上します。

建設仮勘定が使われるのは、例えば建設中のビルやホテル、病院や施設、工場など、完成まである程度の期間があるものです。そのような場合は、完成時に一括支払ではなく、手付金や行程ごとに支払が生じます。
実際には支出があるにもかかわらず、帳簿に記載するときにはまだ固定資産はできていないので、何に対しての支出として計上すべきか困ってしまいますよね。「建設仮勘定」は、こうした支出を仮計上するための勘定科目です。

あくまで「仮」なので、製作していた有形固定資産が完成し、事業に使えるようになった時点で、本勘定に振り替える必要があります。
つまり、建設仮勘定を見れば、その固定資産を作るためにいくらかかったかがわかるのです。

建設仮勘定として計上する経費とは

建設仮勘定として計上する経費は、建物や船舶、機械などの有形固定資産の建設や製作に必要な費用が含まれます。

そのため、工事にまつわる費用(前払いした工事費、材料費、建築作業員の労務費用)だけでなく、そのために購入した機械設備や備品などの費用も計上が可能です。

減価償却はどうなる?

減価償却は計上できません。減価償却がはじまるのは、完成して事業に使うようになってからです。固定資産が「事業の用に供したときから」から開始になるということは、まだできあがっていない段階の建設仮勘定においては、固定資産として計上していても、減価償却は計上できません。

完成しなかったらどうなる?

完成しなかった場合は、「除却」で経費計上が可能です。
建設仮勘定で計上したものの、様々な理由で建物が完成しなかったり、設備ができあがらなかったりすることがあります。その場合には、「固定資産除却損」として経費計上が可能です。

支払金額よりも価値が下がったらどうなる?

減損処理が可能となり損金計上できます。コロナ禍で土地の価格が大きく変わりました。例えば、ホテルなどは建設当初から考えると地価が下がったり、客足の変化によって収益性が低下したところは珍しくありません。このように、投資資本>収益となる時は、差額を損金計上できます。

建設仮勘定計上の仕訳における注意点

有形固定資産にかかった経費を「建設仮勘定」で計上するときには、この図のように、払ったお金を「建設仮勘定」で計上していきます。そして、完成・事業の用に供したときに固定資産として振替えるのが一般的なパターンです。「事業の用に供したときから」というのは、設備使用を開始した時となります。

「建物」(もしくは機械装置など有形固定資産の勘定科目)に振替えられると、借方と貸方の「建設仮勘定」は相殺されます。

■仕訳例■

(1)自社でビルを建設するにあがり、建設会社に着手金を300万円現金で支払った

(2)建物が完成し、使用開始にあたって、それまで「建物仮勘定」で計上していた1000万円を「建物」に振り替えた。

使用開始が完成前の時はどうする?

ただし、場合によっては、建物の一部が未完成のまま営業を始めるホテルやショッピングモールなど、使用開始が完成より前というパターンもあります。その時は、使用開始時に概算の金額で振り替えを行い、完成後に精算を行って金額を補正することが必要です。
もし、そのタイミングで精算できないようであれば、残金を未払い金として計上します。

■仕訳例■
建物が使用開始に伴い1000万円を固定資産として計上。それまで支払った建設仮勘定600万円は精算できたが、400万円がそのタイミングで精算できないため、未払金として計上した。

「建設仮勘定」以外の勘定科目を使わないように

付金や着手金、途中の工程で支払う金額について、勘定科目を間違えないようにしましょう。特に建設会社における建設物の書面はシステム化がまだ進んでおらず、紙ベースのやりとりが主流です。見積書なども膨大な量になることもあります。

建物や大がかりな機械などを頻繁に製作する会社はそう多くはありません。注意したいのは、本来は建設仮勘定で仕訳すべきところを「仮払金」や「前渡金」、「前払金」などで計上してしまうことです。建物、機械等の有形固定資産の建設または制作のための支出は「建設仮勘定」であり、それ以外の勘定を使いません。適切な振り分けには、経験やノウハウも必要となります。

費用で処理してしまうと、いざ固定資産計上したときに取得費用や減価償却の金額が小さくなってしまいます。誤った仕訳をしないように気をつけましょう。

「建設仮勘定」の振り替えタイミング

意外にありがちなのが、「建設仮勘定」で計上していたものを、「建物」など有形固定資産に振り返るタイミングを忘れたり間違えたりすることです。
忘れたり間違えたりしても、実質的な減価償却の期間は変わりません。つまり、そのぶんの減価償却をしていないということになり、その期間の損益通算がされないということになります。

建設仮勘定に対する消費税の計上はどうする?

建設仮勘定に対する消費税の処理については2パターンあります。

国税庁のサイトを見てみましょう。
「消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行うことになりますから、当該設計料に係る役務の提供や資材の購入等の課税仕入れについては、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります。

 ただし、建設仮勘定として経理した課税仕入れについて、物の引渡しや役務の提供又は一部が完成したことにより引渡しを受けた部分をその都度課税仕入れとしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間における課税仕入れとして処理する方法も認められます。」

つまり、原則は費用を払った日が基本です。資材を購入したらその分、手付金を払ったら払った分だけ、というように、お金を払ったタイミングが属する会計期間で計上していきます。
ただし、その都度計上するのではなく、全ての引き渡しを受けた日で消費税を計上する方法も認められます。どちらかに統一しましょう。
建設仮勘定で計上していると言っても、完成して引き渡し後となるとその金額も膨大になりますし、ただでさえ面倒な消費税の計算が年度をまたいでとなると、より煩雑になりそうです。
どちらの方法で処理するかは言ってしまえば「好み」になりますが、処理方法を統一するようにしましょう。A建物はその都度、B建物は完成してからといったような処理はできません。

出典:国税庁 タックスアンサーNo.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期

建設仮勘定については、以下の記事もぜひご一読ください。

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