先日付小切手とは小切手に記載されている振出日が実際の振出日以降の日付(先日付)になっている小切手のことを言います。
先日付小切手を受け取った場合、その取引先は資金繰りに困っている可能性があるので注意が必要です。この記事では先日付小切手がなぜ振り出されるのか、注意ポイントは何か詳しく解説していきます。
先日付小切手(さきひづけこぎって)とは、小切手に記載されている振出日が実際の振出日以降の日付(先日付)になっている小切手のことを言います。
通常の小切手の場合、振り出すと取引先はすぐに銀行に行って換金します。それが普通なので、小切手を振り出す際は、事前に当座預金口座にお金を用意しておかなければなりません。
当座預金口座に十分なお金がない会社は、通常の小切手は振り出せないということになります。仮にお金がないのに小切手を振り出してしまうと、不渡りを起こし、会社の存続に関わる問題となってしまいます。
そこで、利用されているのが先日付小切手です。先日付小切手の場合には、「いま」振り出しても、記載されている日付が「未来」となっているため、その未来までに資金を用意できれば不渡りは回避することができます。
ただし、実際には、法律上、先日付小切手をすぐに銀行に持っていけば通常の小切手と同様に換金できることになっています(小切手法28条2項)。皆さんも領収書を先の日付でもらったりすることがあるのではないでしょうか?それと同じで、実務上、日付はあまり重要ではありません。
先日付小切手をもらった会社からすると、強引に銀行に取り立てにいって換金したとしても、相手はお金を支払えず、その小切手が不渡りとなって、取引先が倒産して困ってしまいます。
当然、そうなることは望んでいないわけです。従って、先日付小切手を受け取ったときには、「先日付までは換金しませんよ」と、暗黙裡にOKしてるのが、先日付小切手の実際ということになります。先日付小切手は、記載されている当該先日付までは、金融機関に呈示しない(換金を行わない)ことが、当事者間で合意されている証券という定義がなされているなど、当事者間で合意が必要であることがきちんと明示されています。
取引銀行は、その小切手を取り立てることによって不渡りが出てしまうことを懸念して、素直に取立てに応じてくれないことも多いです。
それでは、先日付小切手はどのように会計処理をしたらよいでしょうか?先日付小切手を受け取った側は、受取手形で処理するのが通例です。そのため、先日付小切手を振り出した側は、支払手形で処理すべきと考えることもできます。
(1)先日付小切手の受取人
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
受取手形 | 10,000円 | 売上 | 10,000円 |
(2)先日付小切手の振出人
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 10,000円 | 支払手形 | 10,000円 |
しかし、小切手の場合、法律上、先日付は意味をもたず期日前でも受取人が銀行に持ち込めば換金することができます。この場合、先日付小切手は、未取付小切手(小切手を振り出して渡していますが、受取人が銀行に持ち込んでいない状態の小切手)と同じようなものと考えることも可能です。
未取付小切手の場合は、現金で支払っているのと同じようなものなので、小切手の振り出し時に当座預金を減額する処理が行われるのが通例です。
(1)先日付小切手の受取人
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 10,000円 | 売上 | 10,000円 |
(2)先日付小切手の振出人
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 10,000円 | 当座預金 | 10,000円 |
このように考えると、振り出した側は当座預金を減少させる必要があるということになりますが、先日付小切手の振出人は資金繰りが苦しいためそのような小切手を振り出していることが多く、当座預金を減少させてしまった場合、預金残高がマイナスになってしまいます。
すでに説明したように、先日付小切手が振り出される場合は、振出人と受取人で小切手に記載されている日付まで取立てに出さないという合意がされていることが一般的です。というのも、受取人が、予定していた日よりも前に小切手を取立てに出してしまったら不渡りが発生してしまい、倒産してしまう可能性があるためです。
そのため、会計上は、この実態が受取手形に類似していることを重視して会計処理を行うのが実務上定着しています。つまり、前者のように受取手形として計上するのが一般的です。そして、先日付小切手を振り出した側でも、その実態を重視してやはり支払手形として計上することになります。
先日付小切手は、振り出すときには資金の準備がないが、後日資金の手当が見込まれる場合、記された振出日まで支払いのための呈示をしないよう受取人に要請し、その承諾のもとに振り出される小切手です。もし、先日付小切手を受け取った場合には、その取引先は資金繰りに苦しんでいるのかも知れません。
したがって、資金を回収することができない可能性があると疑う必要があります。資金繰りに余裕がないためにこれを振り出すことが多いから不渡りの危険性もあり、振出人、受取人とも先日付小切手の取扱いには注意が必要です。振出人は受取人に対し、小切手上の記載振出日に呈示するように了解を取り付けて発行するのが普通だが、その日以前であっても呈示されたら支払われることになっています。