収入印紙とは印紙税を納付する手段に用いられるものです。
貼り付けることで納付がされますが、この貼り付ける必要のある文書とは?誰が貼り付けるの?貼り付けるべき金額は?貼らないとどうなるの?間違って貼ってしまったらどうするの?
今回はこのような印紙税にまつわる疑問について、収入印紙とは何かという説明とあわせて詳しく解説していきます。
収入印紙とは、国税である印紙税を納付する手段に用いられるものです。
印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書等の特定の文書に課税される税金です。
収入印紙によって徴収する対象には下記のようなものが挙げられます。
みなさんが日常生活でよく見かける収入印紙といえば、パスポートの発給や不動産の登記の際に必要となるものだと思いますが、こちらは登録税の性質をもつ収入印紙です。
一方で、企業の活動において出てくる収入印紙には登録税以外にも訴訟費用や印紙税に関する収入印紙もよく出てきます。この中でも特にメジャーなのが印紙税によって規定された課税文書に貼る収入印紙です。
実際にどのような文書が課税されるかについては次項でみていくこととしますが、課税文書を作った人が印紙税法上で定められた金額の収入印紙を文書に貼り付けて、割り印をして納税することとなります。
収入印紙は割り印をしなければ、印紙税を納付したことにはならないので注意してください。収入印紙が必要な文書に収入印紙が貼られていない場合(割り印ない場合も含まれます)、収入印紙の金額が不足した場合には、ペナルティとして印紙税法上定められている過怠税が課されることとなってしまいます。
ちなみに収入印紙は、郵便局や法務局、最近ではコンビニでも購入することができます。
印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。
課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。
上記では、イメージがわきにくいと思いますので、。実際にどのような文書が課税対象になるのか、具体例をいくつか挙げていきたいと思います。
まず、契約書の中でよく出てくるものとしては、「請負に関する契約書」(第2号文書)でしょうか。この契約の例としては建築工事に関する契約、警備、清掃等の役務提供契約、広告主や広告代理店との広告契約が挙げられます。請負に関する契約書は契約金額によって印紙税額も異なってきますので、実際の契約書の金額を確認した上で適切な収入印紙を貼りましょう。
次によく出てくるものとしては、「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)でしょうか。こちらの契約の例としては、売買基本契約や寄託基本契約、運送基本契約等が挙げられます。
この基本契約という考え方がややイメージしにくいかと思いますが、基本契約とは、企業間で継続的な取引を行うにあたって、取引の都度、契約の詳細条件まで取り決めていると手間になるので、取引に共通して適用される条件を決めておく契約のことをいいます。
そして基本契約に基づき、実際の取引に関する契約を個別契約といいます。やや話が逸れましたが、この継続的取引の基本となる契約書に該当する契約書は一律印紙税が4,000円必要となります。
また、契約書以外にも課税対象となる文書はあります。その代表例は領収書でしょう。領収書は「金銭または有価証券の受取書」(第17号文書)に該当します。この点、領収書に限らず、受取書、レシート、預かり証も金銭または有価証券の受取書に含まれますし、請求書等に「済」、「了」と記載されたものも該当します。なお、この金銭または有価証券の受取書は5万円未満であれば一律に非課税となります。
以上、みてきたように課税文書の種類は多数あり、課税文書に該当するかの判断は文書の題目によるのではなく、文書の内容によって判断されることとなるため、なかなか判断が難しい場合もあります。
印紙税の課税される文書は、20種類に分けられ、下記のとおり区分がされています。
特定の文書に掲げられている契約書とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部もしくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することになっているものも含まれます。
よって、通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される申込書、注文書、依頼書などと表示された文書であっても、実質的にみて、その文書によって契約の成立等が証明されるものは、契約書に該当することになります。
契約とは、互いに対立する2個以上の意思表示の合致、すなわち一方の申込みと他方の承諾によって成立する法律行為であり、契約書とは、その2個以上の意思表示の合致の事実を証明する目的で作成される文書をいうことです。
契約書という名称では無い、申込書、注文書、依頼書等の文書も契約書に該当をし、収入印紙の課税対象となる場合があります。
契約の成立等を証する文書かどうかは、文書の記載文言等その文書上から客観的に判断するというのが印紙税の基本的な取扱いでであるため、申込書等と表示された文書が契約の成立等を証明する目的で作成されたものであるかどうかの判断も、原則的にその文書上から行うことになります。
下記に該当をするものは、一般的に契約書に該当するものとして取り扱います。
印紙税の金額は、その文書の種類毎に異なります。最も目にする機会の多い第1号文書の印紙税の金額は、記載された契約金額毎に下記のとおりです。
その他の文書の印紙税額については、国税庁のホームページ等でご確認ください。
国税庁 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
国税庁 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
印紙税の納付方法は下記の2通りあります。
課税文書の作成者は、原則として、課税文書に課されるべき印紙税相当額の収入印紙を課税文書に貼り付ける方法により印紙税を納付します。
この場合には、自己又はその代理人、使用人その他の従事者の印章又は署名で、その課税文書と印紙の彩文とにかけて、判明に収入印紙を消す必要があります。
課税文書の作成者は、課税文書に課されるべき印紙税相当額をあらかじめ金銭で国に納付した上で、税印押なつ機を設置している税務署の税務署長に対し、課税文書に収入印紙を貼り付けることに代えて、税印を押すことを請求することが出来ます。
印紙税は収入印紙を課税文書の作成者の判断で貼付けを行わなければならず、納付の失念をしやすい税金です。
また、不動産業等の契約書を多く作成する必要のある業種では印紙税の金銭的な負担は大きいものです。
納付の失念を防ぐ、印紙税の金銭的な負担を少なくする方法のひとつに、印紙税を節税することが挙げられ、その節税方法に、課税文書を紙面では無く電子文書で交付する方法があります。
印紙税は課税文書の作成に対して課税されますが、この作成とは交付を含めたものです。契約書を電子メールやファクシミリで送った場合は、現物の交付が行われていないと判断をされます。交付がない以上、課税文書は作成されておらず、印紙税は課税されないとされています。
印紙税を張り付ける方法により納めなかった場合には、税務調査によりその旨が判明をすると、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、つまり当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。
調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
また貼り付けた収入印紙に対して消印を行わなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
印紙税の納付を失念することへのリスクについては下記コラムをご参照ください。
印紙税を誤って納付した場合には、その納付額について還付を受けることが出来る場合があります。
下記のものが還付の対象となります。
文書を作成した日から5年を経過するまでの間に、印紙税過誤納確認申請書を作成し、税地の税務署長に提出をします。
還付は、銀行口座振込あるいは郵便局を通じての送金によって受け取ることが出来ます。
今まで収入印紙に関する知識を深めてきましたが、最後に収入印紙の仕訳、勘定科目についてご説明します。
収入印紙を購入し、すぐに使用した場合の勘定科目は「租税公課」となります。この租税公課は、損益計算書上では販売費及び一般管理費として区分され、印紙税や消費税といった国税、固定資産税等の地方税の支払いに必要となった経費を計上するために使用される勘定科目です。なお、原則として収入印紙に消費税はかかりませんが、金券ショップで購入した場合には課税対象となりますので注意しておきましょう。
一方で収入印紙を購入したものの、すぐに使うのではなく、買い置きしていた場合には、勘定科目は租税公課ではなく、貯蔵品を使った方が正確でしょう。このように使用の目的に応じて勘定科目も異なります。
収入印紙とは、印紙税を納付する手段に用いられるものです。印紙税は指定された課税文書に課税されるものであり、課税文書の作成者が納付をする必要があります。
契約書等の課税文書を作成し交付をする際には、印紙税の納付が必要であるか、その納付すべき金額は何円なのか、また貼り付けによって納付する場合は消印がされているかを充分に確認し、過怠税の徴収対象にならないよう留意をするようにしましょう。