多くの資格試験の中でも「難しい」と言われる日商簿記1級。受験は年に2回、合格率は10%という難易度の高い資格であり、会計のスペシャリストが持つ資格として広く知られています。本記事では簿記1級の受験資格と、簿記1級に合格することによって得られる受験資格について解説します。
簿記1級といっても、簿記検定には大きく分けて3つの種類があります。
・日商簿記:日本商工会議所と各地商の工会議所が主催(社会人向け)
・全経簿記:社団法人全国経理教育協会が主催(経理・会計専門学校の学生向け)
・全商簿記:全国商業高等学校協会主催(商業高校向け)
どの検定にも「1級」はあり、全経簿記は1級の上にさらに「上級」があります。
対象が異なるため、簿記検定もそれぞれ難易度が違うと言われ、日商簿記検定1級はこの3つの簿記検定の中でも最高に難易度が高い試験です。その合格率は10%前後。
経営管理や経営分析ができる簿記のプロフェッショナルとして見られる資格です。もしあなたが経理職であれば、1級を取得することで資格手当がもらえたり、昇進に繋がるきっかけになるでしょう。大学受験の推薦入試や、新卒での就職活動にも大いに役立ちます。
日商簿記について、学歴・年齢・性別・国籍による制限はありません。小学生からでも受験が可能です。
現在のところ、最年少では2009年に中学3年生の方が合格したという記録があります。
この方は、小学6年から簿記の勉強をはじめ、小6で3級、中1で2級、そして中3で1級に合格(最年少)しました。さらに、高校2年生で公認会計士にも合格(史上2番目)しています。
出典:財経新聞 高校2年生が公認会計士試験に合格 ~17歳での合格は本年度最年少・史上2番目の若さ
また、簿記1級は同時受験も可能なので、2級や1級からの受験や、1・2級、2・3級の併願受験もできます。
簿記1級を取得すると、国家資格の受験資格を得られたり、科目が免除されたりするのでしょうか?結論から言うと税理士の受験資格は得られますが、他の資格については特に受験資格に影響しません。代表的な資格について解説します。
前項で、簿記1級を取得してから公認会計士試験へのチャレンジをした方のエピソードを紹介しましたが、
公認会計士試験には実は受験資格の制限はありません。年齢、学歴、国籍等にかかわらず、誰でも受験することができます。
ただし、公認会計士試験への腕試しとして簿記1級を受験する人は多いです。
税理士試験には、以下の受験資格基準があります。
■ 学識による受験資格
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、法律学又は経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
・司法試験合格者
・公認会計士試験の短答式試験に合格した者
■資格による受験資格
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記検定上級合格者
■職歴による受験資格
・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
この中で、年齢にかかわらず税理士試験の受験資格を得るためには「司法試験合格」「公認会計士試験の短答式試験合格」「日商簿記1級合格」「全経簿記上級合格」のいずれかを満たす必要があります。
理論上では、中学生でも簿記1級を取得すれば税理士試験にチャレンジできるのです。(現在のところ、最年少の官報合格者は、専門学校在学中の20歳の方)なお、税理士として登録するためには成人していることが必要となるため、仮に未成年が官報合格した場合は、成人まで待つことになります。
簿記1級と並んで難易度を比較されることが多い社会保険労務士。
実は多くの受験資格基準があります。しかし、社労士の受験資格となるものはあくまで国家資格。
そのため、民間資格である簿記1級を取得していても、社労士の受験資格を得ることはできません。
(他の学歴などの基準で受験資格を満たしていれば受験は可能です)
引用:社会保険労務士オフィシャルサイト 社会保険労務士試験の受験資格