株式会社ガイアックスへ長期インターンを経験したのち新卒入社。新卒3年目から事業責任者として勤務し、事業の立ち上げなどを行ってきた杉之原明子さん。その後、アディッシュ株式会社にて管理部門の立ち上げなどの実績を積み、現在は多方面にて今までの経験を活かし活躍されています。今回はそんな杉之原明子さんに、これまでの経歴やこれからのビジョンなどをHUPRO編集部が伺いました。
【ご経歴】
2010年 | 早稲田大学教育学部卒業 |
2010年 | 株式会社ガイアックス入社(2008年にインターン入社) |
2014年 | アディッシュ株式会社設立及び取締役管理本部長に就任 |
2020年 | マザーズ上場、アディッシュ株式会社取締役(現任) |
―インターンで株式会社ガイアックスに入ったきっかけは?
実は、当時大学生3年生のときに留年をしてしまいました。かなりどん底に落ちてしまったと感じましたが、そのときにどうすることもできず、焦りを感じとりあえずインターンを探し始めました。
そして、たまたま株式会社ガイアックスに出会い、長期インターンで入社し、新規事業の営業として学校非公式サイト対策のスクールガーディアンに配属されました。当時は学校非公式サイト対策サービスについて、そこまで認知されていませんでしたので、どのようにして市場を作り上げていくのかを考えるという仕事内容でした。
もちろん大学生がいきなり会社に入って働けるような甘い世界ではなく、一方で、詳細な指示がある環境でもなかったため、自分からアクションを起こさないと仕事がまったくないという状態でした。そこで仕事を自分で作っていくという感覚を学ぶことができましたね。
最初は受付電話を取ったり議事録を取ったりする仕事がメインでしたが、徐々に営業の仕事も任せてもらえるようになりました。
―新規営業で学校に飛び込みに行くことはありましたか?
ありましたね。すごく嫌でしたけど(笑)。飛び込みの営業やテレアポなどすごく苦痛でした。もはや新規営業が恐怖にも感じてしまい、なかなか十分な行動ができず、成果が上がらない日々が続きました。
ただ、あるとき先輩の社員から「嫌なら別の方法も考えればいいじゃん」と言われてからは、学校の先生に対して勉強会を開催するなどして別の提案ができるようになりました。
インターン生として2年働いて、他の大企業などの面接を受けたりもしましたが、新卒でガイアックスに入社しました。
―大企業も視野に入れた中で、ガイアックスを選んだ一番の理由は何ですか?
大企業とガイアックスを比べたときに、ガイアックスのほうが早く事業責任者になれる可能性が高いと感じて選びました。というのも就活時に漠然と、自分が女性という事もあって「もしかしたら30代でキャリアが中断してしまうのではないか」と考えたとき、だったら30歳までに一つの事業を立ち上げて、社会というものの仕組みが分かるようになりたいと思い、それならガイアックスのほうが良いかなと。
―ガイアックスに新卒社員として入社してからはどういった業務が中心でしたか?
そのときにはもう自分は上司の次に古いメンバーということもあって、営業計画を作ったり、スクールガーディアン事業部の方針を示すたたき台を作ったりなどしました。常に上司の一歩先を行けるように心がけていましたね。
古株ということもあって、例えば、誰よりもアポ数を取ろうなど、後に続くメンバーの指標になるように、尖りながらも頑張っていました。ただその矢先、私が社員になってから1年ほどで、一緒に事業を立ち上げてきた上司が退社をしました。現在のアディッシュ代表である、当時の営業部長であった江戸から、自分の上司を自分で採用するか、自分が事業責任者になるか、1週以内に決めるように突然言われました。
そこで、まだ社会人経験は少ないですけど、「事業を上司と一緒に立ち上げてきたのは私だ」という想いも強かったため、チャレンジしてみようと考え、新卒3年目のときに事業責任者となりました。
―チーム作りで工夫されたことは具体的にどんなことがありますか?
スクールガーディアンという事業は、社会的にどういった意義があるのか比較的わかりやすいため、それを改めて全メンバーにプレゼンして伝えたり、目標設定を明確にして雰囲気良く進められるように努めていました。
また20代半ばで責任者という立場になったため、経験や実績も足りていない状態で、尚且つ周りには年上メンバーも多く、正直多大なプレッシャーを感じていました。ですが、とにかく一生懸命に仕事を進めることで、周りから信頼してもらえた部分はあったのではないかと思っています。
―ちなみにドラマを見て管制官の国家試験を受けることになったそうですが、、、?
もともとガイアックスに入社した理由に「30歳までに責任を担った仕事をしたい」というものがありました。実際に事業責任者として働きそれが叶い、ある程度自分の中でやり切ったという思いが強くなり、今後のガイアックスでのキャリアを考えたときに、別の選択肢もあるのではないかと思うようになりました。
そして、その当時たまたま管制官を題材にしたドラマを見た時に、自分の中で衝撃が走って「これしか私の道はない!」と感じて、働きながら予備校に通いました。その後、国家試験に無事合格して、会社に辞めることを伝えました。そのころ、子会社(当時)としてアディッシュ株式会社を立ち上げるという話が出てきました。
決め手としては、そのとき自分が働く上での喜びを改めて考えた際に、「いま目の前で足りないものを自分の手でつくり上げ、それに対し会社メンバーやお客様が喜んでくれることだ」と気付き、管制官として公務員で働くのではなく、アディッシュ株式会社の設立という選択肢を選びました。
―アディッシュでは管理部を0から立ち上げたそうですが、実務経験が無い状態でどのようにして取り組まれましたか?
そこはすごく苦しんだところです。私は勉強するほうですけど、当たり前ですが、管理部が扱う領域が広くて全然間に合わなかったですね。ただガイアックス時代から現事業の意思決定層として働いて、アディッシュの主力事業のひとつであるカスタマーサポート事業部などの部署の仕事も経験していたため、会社の全体像は明確に見えていました。
会社がどこに向かって行っているのかを管理部全体に対してしっかり伝え、リーダーシップを発揮できるように心がけました。反対に、管理部のメンバーひとりひとりに対しては、プロフェッショナルであるみんなが働きやすいように、よりフォロワーシップを発揮していこうと、自分の中で役割分担をしていました。
―立ち上げ当初大変だった思い出はありますか?
正直、大変だった思い出ばかりですが、やっぱり何よりも自分に経験が無い状態でのスタートだったため、メンバーに対してティーチング的な役割を発揮することができず、自分自身の役割の喪失を感じたのが本当につらかったです。
メンバーの立場からしても、管理本部長に聞いてもわからないという場面が出てきてしまうため、すごく大変だったと思います。ただ、こういった事があったからこそ、お互いが成長できたと今となっては思っています。
―立ち上げ当時だとメンバーの採用も大変だったのではないですか?
そうですね。本格的に管理部をつくると決断した後、最初、人事総務責任者を採用しましたが、半年間の期間をかけてひたすら想いを伝え続けました。私も代表も、「なぜその事業をやるのか?」という根本の部分を大事にしていて、その後も、会社のミッションや自分の想いを直球で伝え、会社の意義に共感してもらえる人を採用していきました。
―上場に向かう管理部のやりがいはどういったところに感じますか?
たくさんありますが、一つは上場を目指すからこそできる業務がある点ですね。シンプルにスキル面で今までに行なったことが無い業務が発生し大変な分、成長できている実感は生まれます。もう一つは、ひとつのゴールに対して熱量を高く持ち「必ず目標スケジュールを達成するぞ!」といった感じで、みんなが一丸となって一つのことに打ち込む経験は何物にも代えがたい経験でしたね。
ただ、何を差し置いても、一緒に働いているメンバーが、自分の可能性に気付いていくさまを見ることが、すごく自分の原動力になっていると感じています。アディッシュは、女性の社員も全体の半分以上で子どもを持つメンバーも多いですが、そういったメンバーが自分の可能性に気付いて仕事の幅を広げて活躍していく姿を見られるのは嬉しいですし、自分にとっても刺激になりますね。
―マネジメントをする際に心がけていることはありますか?
とにかく年代問わず直球でコミュニケーションをするようにしていますね。メンバー個人が人生を歩むうえで向かっていきたい方向と、会社が向かっていく方向をクロスさせて、やりがいを持ってもらえればと思いながら遠慮せず直球で話をしています。
―普段の仕事で嬉しい瞬間はどんなときですか?
さまざまなチームを持つことが多かったですが、やっぱりチームで掲げた目標を達成し実現した瞬間はうれしいです。また、この経験を足掛かりに次のチャンスを掴むメンバーもなかにはいて、そういう人の姿を見ていると本当に嬉しいです。
―上場会社の女性役員として、社会全体で女性の活躍に対しての考えを伺えますか?また女性活躍に向けて取り組んでいきたいことなどはありますか?
アディッシュでは、会社を設立してから、「ひとりひとりが、キャリア・働き方を自分でつくる会社へ」を掲げ、会社基盤をつくってきましたが、現在は、次の段階として、意思決定層のジェンダーギャップに取り組んでいこうとしています。
意思決定層のジェンダーギャップをテーマに取り組もうとするとき、経営層、マネジメント層、働くメンバーの、それぞれの観点があると思っています。
例えば、数字的な目安を作り「何年後までにこれだけの男女比率にしよう」と取締役会で合意したとします。ただ、働くメンバーが、管理職にならずとも自律的に働けていて、自分のやりたいように仕事ができ、男女共にフラットに働けていると感じていたら、男女比率の観点を一方的に提示しても、違和感が生じてしまいます。
マネジメント層は、実現したい比率と現場を繋ぐための具体的なアクションが求められます。例えば、採用計画においてメンバーに男女の偏りが無いかなどに目を向けることが大事になってくるかなと思います。
マネジメント層にも言えることではありますが、働くメンバーについては、自分自身や相手に無意識に貼っているレッテルや偏見に気付いていくことが必要になります。例えば、女性メンバー自身が、「子どもがいるからこのぐらいの仕事しか任せてもらえなくても仕方ないと思っている」という話を聞くたびに、もどかしい気持ちになります。また、自身のキャリアをどうするのかという点について、もっと自律的に考えられるきっかけを提供することも大事になってくるでしょう。
ようやく私も、意思決定層のジェンダーギャップについて、去年はしっかりと取締役会に数字を提示し、対話をすることができました。今年からはより具体的なアクションを実行し、次に繋げていきたいと考えています。
―ベンチャー企業の管理部ではどのような人材が活躍できると思いますか?
活躍する人には2パターンあると思っていて、一つは自分が対応できる範囲を広げることを厭わない人ですね。特にベンチャー企業の場合、このようなマインドの方は活躍しやすいと思っています。
ベンチャーでは自分が経験したことが無いことも次々に対応しなければいけなくなるので、そこに対してチャレンジしていける方ですね。
もう一つは、特定の分野を極めながらも今までの前例を壊せるマインドを持っている人ですね。会社の規模が大きくなって状況が変わったり、社会構造も変わっていきますので、今までのやり方を壊してもう一度再構築できるような方は、ベンチャー企業において活躍できるのかなと思います。
―これからのビジョンはありますか?
自分自身のビジョンは『まだ見ぬ可能性が最大化される構造をつくりたい』と考えています。その『まだ見ぬ可能性』の1つの大きなテーマが”女性“だと今は思っています。特に同質性の高いベンチャー業界で、「意思決定層に女性が圧倒的に少ない」という論点に関して、1社だけに留まらずどんどん課題として提起されていくように、小さな一歩から大きなうねりをつくっていきたいです。
─本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。
今回お話を伺ったアディッシュ株式会社取締役の杉之原明子さんの
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アディッシュ株式会社ホームページ:https://www.adish.co.jp