簿記の検定試験のなかで最も難しい試験が簿記1級試験です。この試験は、職業会計人の登竜門として位置付けられており、難易度も非常に高くなっています。独学で合格を目指すなら、きちんと対策を行わなければなりません。この記事では、そんな簿記1級に独学で合格するためのメソッドを余す所なく解説します。
2021年現在、実施されている簿記検定の中で最も受験者数が大きく、また歴史も資格試験は日本商工会議所及び各地商工会議所が主催している簿記検定試験です。一般には、日商検定と呼ばれています。
日商検定は知名度も高く、企業の人事労務担当者にも広く知られている資格の一つです。一般に履歴書に書ける資格は同検定試験の3級からとなりますが、社会的な要請から考えると、2級合格が一つの目安となっています。
日商1級試験合格者には税理士試験の受験資格が付与されますし、職業能力開発促進法の指導員資格試験で、事務科の試験科目の一部が免除されます。そのため、職業会計人の登竜門として日商1級は位置づけられています。
日商簿記試験の公式サイトでは、日商簿記試験の難易度を「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。合格すると税理士試験の受験資格が得られる。
公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門」としています。日商簿記試験のなかでは、最高難易度の試験となりますし、簿記系の試験のなかでは最も高度な資格試験として位置づけられます。
より具体的には、大学程度の商業簿記、工業簿記、原価計算並びに会計学を習得し、財務諸表等規則や企業会計に関する法規を理解し、経営管理や経営分析ができる程度のレベルということになります。
簿記検定試験においては、上位級の試験範囲には下位級の試験範囲が含まれていますので、日商簿記1級では、日商試験のすべての範囲が含まれているということになります。
その分、試験範囲は大変広く、日商簿記1級をいきなり受験しても合格率は高くありません。3級から徐々に力をつけていって、勉強が進むにつれて、2級1級と進んでいくのが普通です。
日商簿記1級は大きく分けると「商業簿記と会計学」と「工業簿記と原価計算」に分かれています。「
商業簿記と会計学」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
一方で、「工業簿記と原価計算」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識となります。
日商試験1級は、日本にある簿記資格のなかでは最も難易度の高い試験です。職業会計人の登竜門として位置づけられている試験となるので、受験する人もこれから職業会計人として活躍することを目指す人ばかりです。
日商簿記1級は、3級、2級と比べると学習範囲がとても広いうえに、難易度が高く、いわゆる難関資格といえます。その合格率は毎回約10%、合格者数にして1,000名程度に留まります。
3級、2級の学習を進めてきた方が受験した中での約10%程度に留まりますから、かなり難易度が高い試験であることがわかります。
そんな試験を独学で勉強して合格できるのかと不安になるかも知れませんが、少なからず独学で合格している人もいます。
日商簿記3級、2級でも簿記の様々な手続きを学習しますが、1級ではその理論的な裏付を学習します。簿記2級までは簿記のルールを理解し、あてはめていくというパズルを解くように考えて解答することが求められていました。
しかし、日商1級では、なぜそのルールが当てはまるのか、その背景を理解すること=「本質を知ること」が非常に重要となります。日商1級では試験範囲が広いので、単に簿記のルールを理解し、あてはめるだけではどうしても限界があります。
記憶しておける量には通常限界がありますから、日商1級では単なる暗記ではなく、理解が求められるということをきちんと認識しておくことが大切です。
日商1級に独学で合格を目指そうと思ったら、どれくらいの勉強時間が必要となるでしょうか?おおよその目安として、大手の資格予備校では、日商1級までのスケジュールとして6ヶ月から1年を想定しています。
6ヶ月というのは、すでに日商2級までを体系的に学んだきた人を前提としているので、独学で学ぶ場合には、もっと時間がかかるものと想定しておく必要があります。したがって、日商1級までに十分な勉強時間を確保しようと思ったら、およそ1年程度の時間が必要になると考えましょう。
特に独学で勉強する場合には、圧倒的にアウトプットの量が足りないので、その時間を十分に確保しておかなければなりません。
十分な量のアウトプットさえ確保できれば、独学で日商1級に合格することも夢ではありません。以下では、合格のための具体的な勉強法について詳しく解説していきます。
それでは、日商1級に独学で合格するための具体的な勉強方法について解説していきます。
簿記の資格をとろうと思ったら、まずはアウトプット中心の勉強を心がけなければなりません。簿記は単に教科書を読んでいるだけでは決して力がつきません。
実際に例題や練習問題を手を動かして解くことによって力がついていきます。したがって、単に教科書の内容を暗記していけばよいというわけではなく、机に向かって練習問題を実際にとき、電卓を叩くということを日々行わなければなりません。
社会人などの場合、電車での通勤時間などを活用することもできますが、合格のためにはどうしても机に向かって問題演習をする時間が必要です。
インプット重視の勉強法ではなく、アウトプットの勉強中心にしておけば、そのプロセスで問題の解法を身につけることもできます。
日商1級に独学で合格するためにはまずは問題演習が大事だということを理解しておくことが重要です。
日商1級の試験においては、財務諸表を作成するための基準やルールについての基本的な知識も求められます。それらの知識は通常教科書を読んで理解することになりますが、一般の書籍では仕訳の方法などについては説明されていても、その背後にある考え方などは割愛されていることがほとんどです。
したがって、なぜそのように仕訳をするのかという理解が独学で勉強するとわからないという状態になりやすくなります。そういった考え方は簿記のテキストというよりも財務会計について論じた大学で使われるような教科書で説明されていることがほとんどです。
さらに、近年の教科書では簿記のルールなどを機械的に説明しているものも多く、独学の人が手にとっても何を言っているのかわからないということも少なくありません。
そんなときは、YouTubeやSNSなどを活用するようにしましょう。近年では、そこで重要な論点について解説されていることも多く、理解の助けになるはずです。自分で基本となるテキストを購入してわからないところは積極的にYouTubeやSNSなどを活用すると効率的に勉強を進めることができます。
日商1級の試験は、範囲が広いことから試験範囲についてすべてを暗記に頼ることができません。むしろ、なぜそのように仕訳するのか、その背後にある考え方をきちんと理解して応用的な問題も解けるように準備しておくことが合格のためには必要です。
日商1級合格のために必要なのが過去問を解くことです。過去問を解くことはアウトプットを行なうことに直結します。過去問を解くことで解法のパターンを身に着けていきます。その方が効率的に勉強を進めることができるからです。日商1級合格を目指すのであれば、最低でも5年分の過去問は繰り返し解いて解法を身に着けておく必要があります。予備校などで勉強している人は、答練という解答練習をする時間が授業とは別に設けられています。しかし、独学の人には答練で使われている問題を使うことはできないので、それを市販されている過去問で補うというわけです。
多くの場合、解答パターンはすでに確立されているので、過去問を解くことで解答パターンを身に着けておけば高い得点力を身につけることができます。
日商1級は試験範囲が非常に広いです。したがって、市販されている直前対策問題集を活用しましょう。直前対策問題集は、およそ試験の1ヶ月前程度から使い始めるのがおすすです。それを使うことによって、出題されそうな分野を重点的に勉強することができます。日商試験は長い歴史のある試験なので、出題されるパターンは概ね予測することができます。大手の予備校は直前予想問題集を市販しています。予想問題に頼りすぎるのは本末転倒ですが、ある程度勉強が進んだら効率的に勉強するために積極的に直前対策問題集を使いましょう。
日商簿記1級は極めて高度な会計知識を有し、経営管理や分析を行う能力を持ち合わせた会計に関するスペシャリストとして扱われるため、就職や転職に非常に有利です。大規模企業の経理実務が理解できることは言うまでもありませんが、独立起業した時にも自分で経理処理や数字に基づいた経営判断が可能となります。
そんな難易度の高い試験ですから、試験範囲は非常に広く、勉強にも時間がかかります。あまりの試験範囲の広さに、十分に試験範囲を終わらせることができずに受験を迎えてしまうという人も少なくありません。日商1級では、幅広い範囲から出題されますから、まったく解けないところがあると致命的となります。したがって、勉強方法としてまずは全範囲の基本的なところをきちんと理解するように勉強をしていくことが大切です。単に暗記するだけではなく、会計処理の背景にある考え方やルールを理解するように勉強しましょう。理解していれば忘れなくなります。
したがって、日商1級に合格するためには、事前に十分な計画を立てておくことが不可欠です。独学であればなおさらそれが必要となります。広い試験範囲を十分にカバーできるだけの十分な勉強時間を確保し、問題演習を中心に勉強を進めていくことが日商1級合格のための秘訣です。