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テレワークを応援!拡充された中小企業経営強化税制

岡山 由佳
テレワークを応援!拡充された中小企業経営強化税制

新型コロナウイルス感染症の影響により求められるテレワーク。しかしその設備が無い法人では、導入費等の負担が生じます。これに対し、テレワーク設備をはじめとするデジタル化設備を導入した法人の法人税を減らす効果のある税制が定められました。
今回は拡充された中小企業経営強化税制について解説していきます。

中小企業経営強化税制とは

この制度は、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者などが平成29年4月1日から令和3年3月31日までの期間内に、新品の特定経営力向上設備等を取得又は製作若しくは建設して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、即時償却又は税額控除を認めるものです。 出典:国税庁

適用対象者

この制度の適用対象法人は、中小企業者等及び中小企業等協同組合等で、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けたものとされています。

中小企業者とは

中小企業者とは、下記の要件に該当をする法人をいいます。なお、平成31年4月1日以後に開始する事業年度においては、中小企業者のうち適用除外事業者に該当するものは除かれます。

要件① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち下記に該当をする法人以外の法人

・その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
・上記のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人

要件② 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

受託法人を除きます。

中小企業等協同組合とは

中小企業等協同組合等とは、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商店街振興組合をいいます。

適用対象年度

この制度の適用対象事業年度は、指定期間内に適用対象資産を取得又は製作若しくは建設して指定事業の用に供した場合におけるその指定事業の用に供した日を含む事業年度です。

適用対象資産

対象となる資産は、その製作の後事業の用に供されたことのない生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアで、一定の規模以上のものです。

生産設備とは

生産等設備とは、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいい、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、事務用器具備品、福利厚生施設のようなものは該当しません。

一定規模以上のものとは

一定規模以上のものとは下記のものをいいます。

・機械及び装置…1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
・工具、器具及び備品…1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
・建物附属設備…取得価額が60万円以上のもの
・ソフトウェア…取得価額が70万円以上のもの

生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアとは

具体的には下記の3種類が該当をします。

生産性向上設備

下記の要件を満たす機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアをいいます。

・ 販売が開始されてから、機械装置は10年以内、工具は5年以内、器具及び備品は6年以内、建物附属設備は14年以内、ソフトウェアは5年以内のものであること
・旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標が年平均1%以上向上しているものであること

収益力強化設備

年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるものであることにつき経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアをいいます。

デジタル化設備

事業プロセスの遠隔操作、可視化又は自動制御化のいずれかを可能にする設備として、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアをいいます。

テレワークを応援!!中小企業経営強化税制の拡充

これまでの対象資産は、生産性向上設備と収益力強化設備であり、2020年からデジタル化設備が該当をすることで、この税制が拡充されました。
業務のデジタル化を促進するために、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする投資計画に記載された設備が該当をします。
このデジタル化の促進は、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークの導入が求められる世相を反映したものです。

デジタル化設備とは

下記のいずれかに該当する投資計画を達成するために必要不可欠な設備です。

遠隔操作

遠隔操作とは、下記のものをいいます。

・デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること
・事業を非対面で行うことが出来るようにする目的であること
・業に従事する人が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことが出来るようにする目的であること

可視化

可視化とは、下記のものをいいます。

・データの集約や分析を、デジタル技術を用いて行うこと
・上記のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること
・上記により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化を行うことが出来るようにすること

自動制御化

自動制御化とは、下記のものをいいます。

・デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことが出来るようにすること
・上記の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等を最適化するためのものであること

出典:中小企業庁

中小企業経営強化税制を利用するメリット

中小企業経営強化税制を利用するメリット

中小企業経営強化税制では即時償却又は税額控除を適用出来ることで、法人にメリットがあります。

即時償却

中小企業経営強化税制を利用しない場合の減価償却は、その資産の耐用年数に渡って取得原価を費用化していく減価償却が必要です。
一方で中小企業経営強化税制を利用した即時償却では、その取得価額の全額を償却することが出来ます。

例えば200万円の資産を購入し、その資産の耐用年数が20年である場合には、中小企業経営強化税制を利用しない減価償却を行うと減価償却費は10万円と算出されますが、中小企業経営強化税制を利用した即時償却を行うと減価償却費は200万円と算出されます。

減価償却費が190万円多く計上をすることが出来るということは、法人の所得が190万円少なくすることが出来、所得から算出される法人税を低くすることが出来ます。
即時償却の適用を受けるためには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書及び経営力向上計画の写しと経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。

減価償却については下記コラムもご参照ください。

税額控除

法人の算出された税金に対して、中小企業経営強化税制を利用することで税額控除を行うことが出来ます。即時償却との重複適用は出来ません。
税額控除限度額は、特定経営力向上設備等の取得価額の7%相当額です。ただし、その税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となります。

例えば200万円の資産をこうにゅうし、中小企業経営強化税制を利用した税額控除を行うと、減額される法人税は14万円と算出されます。
税額控除の適用を受けるためには、控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書及び経営力向上計画の写しと経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。

まとめ

このように、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークの導入が求められる中、その導入費用について少しでも法人の負担が減るようにデジタル化設備への中小企業経営強化税制の適用が認められました。
是非ご参考にご利用ください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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