結論から言うと、簿記2級は独学でも合格できます。しかしそれは「ちゃんと勉強したら」という前提。だからといって、やみくもに時間だけかけても合格は難しいです。今回は、ますます範囲が広がる簿記2級について、独学での勉強法を解説します。
2016~2018年の試験範囲の改訂を経て、より広範な勉強が必要になったと言われる簿記2級。
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年6月試験が中止になったことを受け、日本商工会議所では、柔軟に試験を受けられる「ネット試験」を2020年12月より開始しました。
まずは全員押さえておきたい2021年度の簿記2級試験の実施要項について見ておきましょう。
2021年度の簿記検定は、
(1)これまでの全国統一日で実施する「統一試験」(現行のペーパー試験)
(2)随時パソコンで実施する「ネット試験」(先行して2020年12月より実施中)
(3)企業・教育機関等に出向いてペーパー試験を実施する「団体試験」
の制度が導入されます。
(いずれも受験料は4,720円(税込)で、変更はありません)
ネット試験は、自宅ではなく全国のCBTSテストセンターで受験ができます。
なお、ネット試験においては、その場で受験する人の問題は、全て異なる内容で出題されます。つまり、同じ会場でも受けている試験が違うのです。
隣の人とは違う内容なので、カンニングはできません。
また、毎回違う問題が出題されるため、過去問からの傾向と対策が立てづらくなっているのがポイントです。
ネット試験の登場に伴う簿記検定の受検者や合格者数については、ある程度の結果が出そろってから、合格率などの変動も含め、改めて記事にしたいと思います。
ネット試験の場合、合否はその場でわかり、すぐに合格証がもらえます。
会場の空き具合によっては、試験日の翌日から、次の予約が最短3日後以降で可能。
合格発表までのモヤモヤもなくなり、不合格でもすぐに次の試験が受けられるので、また数ヶ月勉強……ということもなくなります。
これまでは日程の都合上、スクールで詰め込もう!という方も多かったかもしれませんが、自分のスケジュールに合わせやすくなったという点では、独学向きの試験方式になったといえるのではないでしょうか。
簿記検定2級は、ネット試験によりこれまで120分だった試験の時間が90分に変更になっています。(2021年2月のペーパー試験で120分の試験は終了)
しかし、設問数は変わっていません。このことから、問題の出題傾向が変わるのでは?といわれています。
今後、ネット試験を前提とした問題集などが発売される見込みです。受験前には最新のものを手に入れておくようにしましょう。
簿記2級のネット試験の概要が変更点については下記のコラムでも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
簿記2級を独学で勉強する場合、知識や経験の有無で勉強時間が変わります。
ここでは「簿記」に対する習熟度合いから独学の勉強時間の目安について解説します。
※期間は、平日1日2時間の勉強、週末は5時間の勉強で、1週間に20時間。1ヶ月に80時間として計算しています。
学生の方や、簿記2級を取得することで経理業務へ転職を目指している方。
実務経験がないまま簿記検定のテキストを1から勉強することを考えると、最も難易度が高いです。
合格までの勉強時間の目安は400時間~、5か月~程度です。
全く未経験の場合は、簿記2級にいきなりチャレンジするよりも、3級からの受験をおすすめします。
すでに経理業務の経験がある方は、簿記の基礎である仕分けなどの基礎知識があると見なすことができます。
どんな企業・団体で、どのレベルの経理を経験しているかによって必要な勉強時間は異なりますが、初心者よりは短時間で合格を目指すことができるでしょう。
合格までの勉強時間の目安は300時間~(3~4か月程度)です。
簿記3級をすでに取得していると言うことは、商業簿記については基礎があるとみなすことができます。
工業簿記の理解度や、簿記2級ならではの論点を押さえることで上記2名よりは短期の合格を目指すことができるでしょう。
合格までの勉強時間の目安は200時間~(2~3か月程度)です。
ただし、簿記3級の合格が比較的最近である場合に限ります。3級についてもここ数年で難易度が上がっているためです。
簿記2級合格に向けたスケジュールの立て方については下記のコラムも参考にしてみてください。
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簿記2級は、ネット試験の導入で、随時受験が可能で、かつ受験者によりランダムな問題が出題されます。つまり、今後ますます「試験のヤマ」をかけにくい試験です。
合格するためには、受験範囲をまんべんなく理解しておく必要があります。
これまでは年3回(6月・11月・2月)の3回のみの試験日程でしたが、ネット試験の登場により、いつでも(会場が空いていれば)受験が可能に。
つまり、「今日から◯月までで勉強しよう!」という目標が立てやすくなったといえます。
逆に言えば、いつでも受験できるので「明日から本気出す」と、ダラダラしてしまう可能性も……「勉強が進んでから試験」ではなく、あらかじめ勉強期間を決めて、試験の申し込みを済ませておきましょう。
例えば、1月に「3か月で合格しよう!」ときめたら、4月の受験日を設定するのです。
リミットが決まることで、独学のスケジューリングもたてやすくなります。
基礎固めが何より大事です。
簿記2級検定の最新版の参考書を、何度も繰り返して理解できるまで読みましょう。
簿記検定でよく聞くのは、「昔は試験傾向が決まっていて暗記で合格できた」という体験談。それはもう過去の話です。
過去問題がそのまま出題されていた時代は終わりましたので、合格のためには基礎を固めておく必要があります。
このとき大事なのは最新版の参考書ということです。
簿記検定は出題にあたって基礎的な指針として、「商工会議所簿記検定試験出題区分表」
を毎回定めています。
これによると、2020年度(2021年2月28日(日)施行の第157回試験まで)は2019年度と一緒でしたが、2021年度(2021年3月~)はまだ未定です。
目指す試験が2021年3月以降であれば、新しい出題区分が反映された参考書を買い求める方が無難です。
簿記2級の「出題の意図」を見ても「学習範囲が広がって大変な面もありますが、基本を大切にして、ていねいな学習を地道に行ってほしい」とコメントがあります。
出典:日本商工会議所 第154回簿記検定試験2級 出題の意図・講評
参考書は何冊も買う必要はありませんが、暗記するくらい読み返し、自分のものにすることがポイントです。
最低でも3回は往復しましょう。
簿記検定を就職・転職の足がかりとしたい方は「資格を持っているだけで実務はできない」という状況にならないようにしましょう。
参考書を完璧に理解してから問題集……となると、問題集を説いている時間がありません。
参考書は通勤・通学・仕事の休憩時間などのスキマ時間を積極的に活用、1時間以上机に向かう時間が取れるようであれば、問題を解くという勉強方法が独学には最適です。
特に、ネット受験や2021年度以降の受験は、120分から90分に時間が短縮されますが、問題は減ったかというというとそうではありません。つまり、効率よく問題を解くことが求められるのです。
すでに受験した方からのコメントでは「120分の時と問題内容や傾向が違う気がするが、ネット試験はその場の全員が違う問題なのでハッキリとは言えない」ということでした。
これからできるだけ最短の勉強時間で短期合格を狙うのであれば、90分の受験に対応した問題集が出てから勉強をはじめるのがおすすめです。
問題集についても、冊数を多く買う必要はありませんが、答えではなく解法を暗記するくらい繰り返しましょう。
本番の試験は120分から90分に短縮され、これまで以上に時間配分が重要となってきます。
演習問題をするときは、時間を計って行うようにしましょう。
また、ネット試験の受験の場合は、解答用紙の決算書や試算表にメモしたり計算途中を書いたりができません。
要領に慣れるためにも、PC・タブレット・スマホの画面などにスクリーンショットを撮って見ながら問題を解くことをおすすめします。
90分という試験時間になれるためにも、問題ごとではなく模擬試験の問題を通して解くこともしておきましょう。
電卓だけは、ネット受験でも自分のものを会場に持ち込めます。
電卓は100均やスマホでいいやと思っていると、効率よく問題を解くことができません。
(そもそもスマホは試験会場に持ち込めません)
普段は電卓を使わないかもしれませんが、受験についてはネット受験でも電卓による計算が必要です。
少々高いかも?と思っても、キーが大きめで押しやすい電卓を買いましょう。 目安は3000円~5000円です。
Amazonや楽天でも買えますが、できれば実際に文房具屋さんや電化製品のお店で触ってみて選ぶ方が良いでしょう。
2016年以降、問題改定が始まったあたりから、簿記2級の試験日には「まさかあれが出題?」「重箱の隅をつつくような問題」といったTwitterコメントが出るようになりました。
つまり、いわゆる「王道」みたいな問題はなくなり、逆に予備校などの予想問題から外した問題を出すような出題意図も見られることもありました。
しかし、ネット試験の場合は、その場の全員がランダムに出題されるので、日本商工会議所も様々な問題のバリエーションを作っていることが予想されます。
マイナーな問題が出ても対応できるように、まんべんなく理解している人ほど早く合格できるでしょう。
勉強方法は、人によって適した方法が異なります。仕事でも会社での業務がむく人もいれば、テレワークの方が効率が良いという人がいるのと同じです。
時間が決まっている講義形式とは異なり、独学は自分で時間の調整をしなくては行けません。ちょっとしたスキマ時間に、ついスマホを見るのか、参考書を開くのか、こうした積み重ねで差がついていきます。
休みの日は「今日はやりたくない」と思うかもしれません。
特に今は新型コロナウイルス感染症の影響で、友人や受験仲間と話す機会も少ないです。
モチベーションを上げようと、通学講座や模試を申し込んだとしても、オンラインになることも予想されます。
前述したように、ネット受験をするとしても期間を決めて勉強計画を練り「◯ヶ月で合格」と取り組むのが結果的に早道です。
新型コロナウイルス感染症の影響で、仕事がテレワークに移行する方は、通勤時間などのスキマ時間を使えなくなります。
そのため、自分なりにスキマ時間を作り出す努力が必要です。
もし、自力でまとまった時間を捻出するのが難しい方は、あらかじめ勉強時間がスケジューリングできる講義形式の方が良いかもしれません。
オンライン講座も、コロナ禍の中で充実してきました。オンラインであってもライブで授業を行う形式はなくなることはないでしょう。
また、独学VSスクールといった形式ではなく、独学でも単元ごとに講座の録画画像を購入するなど、オンライン講座を適宜利用するハイブリッド形式の勉強法が増えてくると考えられます。
さらに、ネット試験の登場によって、これまでとは異なる取り組み方が出てくるかもしれません。
簿記2級の受験勉強は、途中で中だるみしてしまいやる気をなくすこともありますよね。
そんな時は力試しと思って、いっそ本番のネット試験を受験してみてはいかがでしょうか。
会場が空いていれば受験できますし、実際の受験のやり方も学べます。
検定代はかかりますが、スクールの模試ではない本番環境に慣れることができますし、緊張感を持って問題を解くことで、自分に足りないところもわかります。
できていると思っていたところが全然できていないかもしれません。
また、その場で合否がでるので、もしかしたらまぐれで合格できる可能性もあります。
受験直後はモチベーションが上がるのに、数ヶ月後持続するのは難しいという声はよく聞かれますが、ネット試験は、モチベーションが下がらないうちに再受験できるのも良い点です。
これまでは年に3回という限られた機会しかありませんでしたが、ネット試験を活用することによって、効率よく資格取得する方も増えてくるでしょう。