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パックマンディフェンスとは?敵対的買収への防衛策としての有効性は?

福永 勇治
パックマンディフェンスとは?敵対的買収への防衛策としての有効性は?

企業が上場することにより、不特定多数の人が証券取引所を通じてその企業の株を取得できるようになります。それはつまり、敵対的買収により企業を乗っ取られる危険性もあるということです。上場企業は安定した経営を行うために、こうした敵対的買収に備えて防衛策を準備しています。その防衛策のひとつにパックマンディフェンスというものがあります。

今回はパックマンディフェンスとは何か、パックマンディフェンスの有効性などについて、わかりやすく解説していきます。

パックマンディフェンスとは何か

パックマンディフェンスとは敵対的買収の防衛策のひとつで、被買収企業が逆に買収企業に買収を仕掛けることにより敵対的買収を防ぐというものです。

企業が上場することにより誰でも自由にその企業の株を購入できるようになることから、過半数の株式を取得されて議決権を握られることで、経営を支配されてしまうという敵対的買収の危険性が常にあります。株式の過半数を取得するには相当な資金力が必要となるのでそう頻繁に起こることではありませんが、潤沢な資金を保有する国内外の企業の買収ターゲットとなることは現実的にありえます。

パックマンディフェンスという名前の由来は、その名の通り1980年代に1大ブームを巻き起こしたアーケードゲーム「パックマン」から来ています。このゲームはパックマンを操作しモンスターに捕まらないようにかわしながら、迷路内のエサを食べつくすというものです。しかし、パックマンがパワークッキーを食べることによって立場が逆転し、パックマンがモンスターに噛みついて撃退することができるようになるのです。このパックマンを被買収企業モンスターを買収企業に見立てて、この買収防衛策はパックマンディフェンスと呼ばれるようになりました。

パックマンディフェンスの有効性

それではパックマンディフェンスの有効性について解説していきます。まずパックマンディフェンスのメリットとしては、買収をしかけてきている企業の4分の1超の株を取得することでその企業の議決権を無効にすることができ、敵対的買収を防げるということです。買収企業が被買収企業の3分の1から過半数を取得する必要があるのに対して、被買収企業は買収企業の4分の1の株を取得するだけで敵対的買収を阻止することができるのです。

しかし、パックマンディフェンスには複数のデメリットもあります。まず1つ目は、買収企業の株を取得するためには莫大な資金がかかることです。仮に買収企業の時価総額が1,000億円であれば、4分の1の株を取得するには250億円ほどかかります。

2つ目のデメリットは多大な資金を投下するにもかかわらず、買収防衛以外のメリットがないことです。本来であれば事業投資や運転資金として企業のさらなる収益を生むために使うことのできた資金を買収防衛という目的のみのために使ってしまうことは、株主や取引先金融機関からの賛同を得にくいということが挙げられます。

3つ目のデメリットは非上場企業からの敵対的買収は阻止できないことです。上場企業の株と違い、非上場企業の株は一般には流通していませんから、パックマンディフェンスを使用することは現実的ではありません。パックマンディフェンスはあくまでも上場企業からの敵対的買収にのみ有効な手段となります。

上記のようなメリット、デメリットのあるパックマンディフェンスですが、実際のところ日本では使用された事例はほとんどありません。敵対的買収を仕掛けてきた企業と真向勝負を行う派手な買収防衛策ですが、やはり多額の資金が必要になることから実行は容易でないということになります。

その他の買収防衛策 ホワイトナイト

その他の買収防衛策 ホワイトナイト

パックマンディフェンス以外の敵対的買収の防衛策として、日本でも使用された事例があるホワイトナイトという方法をご紹介します。ホワイトナイトでは敵対的買収を仕掛けられた被買収企業が友好関係にある別の会社に依頼して買収してもらうことで敵対的買収を阻止します。

ホワイトナイトが成功したとしても別の会社に自社を買収されてしまうということには変わりないという点には注意が必要です。しかし、敵対的買収を仕掛けてきた企業ではなく、友好的な関係のある企業に買収されることにより、買収された後も協力関係を保ったまま建設的な経営を行っていけるというメリットがあります。

実際の事例としては、2005年にドン・キホーテがオリジン弁当を展開するオリジン東秀に敵対的買収を仕掛けた際、オリジン東秀はイオングループにホワイトナイトとなることを依頼し、イオングループがホワイトナイトとしてオリジン東秀を買収したというものがあります。

まとめ

今回は敵対的買収の防衛策のひとつであるパックマンディフェンスについて解説してきましたが、いかがでしょうか?上場企業には不特定多数の人から資金を集められるというメリットがあるということと同時に、敵対的買収に備えて防衛策を準備しておかなければいけないという側面もあります。M&Aが企業にとって不可欠なものになった昨今では、敵対的買収と防衛策について、他人事と思わず知っておく必要があるでしょう。

この記事を書いたライター

金融ライター兼会社員。ニートから独学で勉強しUSCPA(米国公認会計士)試験に合格。合格を機に東証一部上場企業の経理へと転職を成功させ、海外を含む連結決算業務を経験。ライターとしてはUSCPA試験の合格方法など会計に関する幅広い内容を執筆。
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