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悪徳税理士はお土産を勧める?対処法を解説

HUPRO 編集部
悪徳税理士はお土産を勧める?対処法を解説

今回は、特に企業の経理職などに就いている方に向けて、悪徳税理士の具体例や見極め方について解説していきます。悪徳税理士といっても、その態様は様々です。顧客を騙して私利を図る者もいれば、行為としては悪徳税理士と大きく変わらないけれど、クライアントの要望に応えて、実務で許容される範囲で最大限に工夫をして職務にあたる人もいます。

悪徳税理士と「お土産」

悪徳税理士の例として、「お土産」を勧めることがあります。お土産というのは、帳簿上にわざと見つけやすい誤りを残しておいて、それを持って調査官に手短にお引き取り願おう、というものです。

絶対にみつかりたくない悪事を納税者が行い、税理士がその片棒をかついでいた場合、このお土産によって犯罪を隠します。調査官も手ぶらでは帰らず、税理士・納税者側も重大な嫌疑がかからずに済んだ、ということで双方にメリットがあると考えられています。

1-1. 悪徳税理士はお土産を勧める傾向

しかし、このようなお土産を推すのは、悪徳税理士の所業といえます。実際、今の税務調査は以前よりも短縮傾向にあります。
現在は、1つの税務調査に当てられるのは2、3日です。そのため、お土産など渡さなくても、短い期間で終わります。

ただし、確かに調査官のなかには、否認項目を見つけて、修正申告を出してもらったほうが、自分の評価が上がると考える人がいます。そのため、不合理とも思えるような細部で否認をする、というケースが存在します。
このような調査官相手の場合、お土産を用意しておいたほうが、なんとか否認項目を見つけようとやっきにならず、調査がすぐに終わる可能性もあります。

1-2. お土産は税務調査の間隔を短縮する危険

しかしこの場合でも双方にメリットがあるわけではありません。やはり納税者の側にデメリットとなりえます。今では一般に税務調査の間隔は5年以上といわれています。最短では3年です。

お土産など用意したら、本来なら5年以上は来ないところ、毎回3年で来るようになる危険があります。そうなると、もちろん納税者たる企業や個人の側にはコストが大きくのしかかります。
税理士はその分報酬を得られて良いかもしれませんが、企業の経理担当としては、何度も調査されるのは避けたい事態です。

このように、調査が早く終わるから、などという口車にのってお土産を用意することに同意してはなりません。得てしてお土産を勧めるのは、悪徳税理士の特徴といえます。

1-3. 必ずしも「悪徳税理士=お土産」ではない

一方で、広義にはお土産でも、一概に悪徳行為といえないこともあります。

以下に一例を紹介します。

(1)否認前提の損金埋め込み

損金か固定資産か、通達に記載されていないことがあります。これに対して固定資産だと損金に変わるまで時間がかかる場合、否認されると知りながら一時損金として申告します。もちろん、その際にはクライアントにその旨を説明をして了承を得ます。

実際の税務調査の段になって、すべからく固定資産であることを指摘されます。このとき、通達の不明確さを衝いて反論します。
結局のところ、当然に税務署の指摘を認めます。しかしこの過程を経ておくことで、前の指示を認めたから、他の指摘は指導のみにして欲しい、という暗黙の主張が可能になります。

■対等の交渉材料として許容性がある
このように、否認されることを予期して損金に入れて、全体のリスクをヘッジすることは行われます。既に述べたように、税務署側も結果を出すために重箱の隅をつつくような修正を指摘することがあります。

これを考えると、否認前提の損金入れもまた、むしろ対等の駆け引きによる産物といえます。

(2)修正対応をしない税理士がベストではない

修正申告を出さない税理士が信頼できる、という単純な話ではありません。やはりそこには、顧客のニーズが大きく関わってきます。
税金が高くなってもいいから、とにかく修正申告を出さないで欲しいと要求するクライアントがいます。一方で、少しくらい否認されても良いから、税金を安くすることを重視し欲しい、と考える顧客もいます。

会社の事業規模によって、経理部のスタンスもまた変わってきます。それによりニーズは当然に変わり、単に修正に応じない税理士がベスト、とはならないケースも多いです。
例で挙げたような否認前提の損金入れは、重大な脱税を隠すためのものではないにしろ、広義ではお土産に含まれます。
しかし、クラアントの要求を実現するために、結果を重視した公平な交渉材料の手段として考えると、お土産だから悪徳、とはならないわけです。

悪徳税理士への対処法

2-1. 裁判例

悪徳税理士の問題で裁判まで発展するケースがあります。比較的に最近の平成28年には、名古屋の地裁、高裁で悪徳税理士による高額報酬請求の事案が解決されました。
これは、本来申告の必要のない相続税につき、0円で申告をしたうえ、依頼人に91万円もの高額請求をした事案です。
依頼人と当該税理士の苗字が偶然に一致し、それを利用して自分の印鑑を本人のものと見せかけるなど、巧みな手口でなされました。
結果、地裁も上告審の高裁も、報酬債権の存在を否定しました。

2-2. 悪徳行為は明るみに出ないことが多い

上記の例では、裁判となったので明るみに出ましたが、自分が関わっている税理士が本当に悪いのかそうでないのか、分からないケースも多いです。
税理士にいわれるがままに処理をしていて、実はそれが違法行為でも、比較対象がないので分からないという場合です。

2-3. 他の税理士・弁護士に相談

まずは、疑問点があったらそれを放置しないことが大切です。税理士に質問をしてみて、それで要領を得る回答を得られなければ、他の税理士、また弁護士などに、セカンドオピニオンを求めます。
自分自身や会社が無用なリスクに晒されないためにも、悪徳税理士かどうかの判断は適切にしなければなりません。

2-4. 税理士会の紛議調停委員会に報告

もし不審事由があるなどで税理士とトラブルが発生した場合、税理士会に相談できます。税理士会には、紛議調停委員会が設置されています。
ここで、話し合いによる解決が可能です。税理士には出頭義務があるので、必ずその場に来なければなりません。

悪徳税理士についてまとめ

今回は、特に悪徳税理士に焦点を当てて解説してきました。お土産を勧める税理士は悪いとよくいわれますし、それが原則論です。
ただし、クラアントの要望に照らして、反論余地のある否認項目を作っておいて、それを交渉材料にすることが、結果を出すために有効な場合が存在します。
税理士の提案する手段は、顧客によって、悪徳なこともあれば、自分のニーズのために法の範囲で尽力してくれる最良のもの、となることもあります。

この記事を書いたライター

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