新型コロナウイルス感染症の影響で打撃を受けた事業者に給付をされる持続化給付金。影響に対する補填でありながら、この給付金の受け取りには税金が課されることとなっています。
今回は持続化給付金を受け取る法人、事業所得者、給与所得者と雑所得者が行うべき会計処理や取り扱いを、それぞれ解説していきます。
持続化給付金とは、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた事業者に対して、事業の継続、再起を目的とし、使用用途を問わない給付金です。
下記の要件を満たす法人が支給対象となります。
①2020年4月1日時点において資本金の額又は出資の総額が10億円未満又は資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下である中小法人等
②2019年以前から事業により事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること
③2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること
法人は持続化給付金を最大で200万円受け取ることが出来ます。
受け取った持続化給付金は、雑収入の勘定科目を使用し仕訳を計上します。
例えば、持続化給付金200万円が法人名義の預金口座に入金をされた場合は、下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 200万円 | 雑収入 | 200万円 |
法人が課税事業者である場合には、その取引の消費税の取り扱いに留意が必要です。受け取った持続化給付金は、消費税の課税対象ではありません。
消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取りです。これに当たらない取引には消費税はかかりません。これを一般的に不課税取引といいます。
持続化給付金の受取は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡に該当をしないため、不課税取引となり、その他の課税取引である雑収入とは区分をして経理をする必要があります。
消費税は原則として預かった消費税から支払った消費税を差し引いて、納付すべき消費税を算出します。
この際に持続化給付金を課税取引として間違った認識をしてしまうと、受け取った持続化給付金には消費税が含まれており、預かった消費税を多く集計してしまうことになります。預かった消費税を多く集計してしまうということは、消費税の納付税額を過大に算出してしまうことになり、消費税を納める事業者にとっては不利な状況になってしまいます。
課税事業者については下記コラムもご参照ください。
受け取った持続化給付金は、法人税の課税対象となる所得に該当をします。2020年4月に発表された新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律により、給付金の取り扱いが定められ、課税されない給付金が列挙されましたが、その課税されない給付金には持続化給付金が含まれていないためです。
しかし、持続化給付金を受け取ってもなお法人の事業年度の所得が赤字となる場合には、その年度の所得は0円として法人税が算出をされるため、結果として法人税の支払いが必要ではなくなります。
また法人が生じた赤字は他の年度の黒字と相殺させることで、法人税の減額及び還付を受けることが出来ます。
赤字の取り扱いについては下記コラムもご参照ください。
下記の要件を満たす事業所得者が支給対象となります。
①2019年以前から事業により事業収入を得ており、今後も事業継続する意思があること
②2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること
個人事業主は持続化給付金を最大で100万円受け取ることが出来ます。
受け取った持続化給付金は、雑収入の勘定科目を使用し仕訳を計上します。
例えば、持続化給付金100万円が個人事業名義の預金口座に入金をされた場合は、下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 100万円 | 雑収入 | 100万円 |
事業所得者が課税事業者である場合には、その取引の消費税の取り扱いに留意が必要です。受け取った持続化給付金は、法人と同様に消費税の課税対象ではありません。
受け取った持続化給付金は、所得税の課税対象となる所得に該当をします。しかし、持続化給付金を受け取ってもなお個人事業の事業年度の所得が赤字となる場合には、その年度の所得は0円として所得税が算出をされるため、結果として所得税の支払いが必要ではなくなります。
下記の要件を満たす給与所得者、雑所得者が支給対象となります。
①2019年以前から、雇用契約によらない業務委託等に基づく事業活動からの収入であって、税務上、雑所得又は給与所得の収入として計上されるものを主たる収入として得ており、今後も事業継続する意思があること
②2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2019年の月平均の業務委託契約等収入に比べて、業務委託契約等収入が50%以上減少した月があること
③2019年以前から被雇用者又は被扶養者ではないこと
④2019年の確定申告において、確定申告書第一表の「収入金額等」の「事業」欄に記載がないこと
給与所得者、雑所得者は持続化給付金を最大で100万円受け取ることが出来ます。
給与所得者が受け取る持続化給付金は一時所得に該当をし、雑所得者が受け取る持続化給付金は雑所得に該当をし、それぞれ所得税の課税対象となる所得になります。
法人や事業所得者、給与所得者、雑所得者が受け取る持続化給付金は、法人税や所得税の課税対象となる所得に該当をするため、確定申告が必要です。
法人の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に行う必要があります。この期間に、持続化給付金を含めた法人所得の計算を行い、そこから算出される法人税の納付及び法人税申告書の提出を行います。
法人税の申告については下記コラムもご参照ください。
事業所得者、給与所得者、雑所得者の確定申告は、所得の生ずる年の翌年3月15日までに行う必要があります。令和2年分の所得の確定申告期限は令和3年3月15日です。この期間に、持続化給付金を含めた所得の計算を行い、そこから算出される所得税の納付及び確定申告書の提出を行います。
所得税の申告については下記コラムもご参照ください。
上記のように、持続化給付金は新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律により、課税されない給付金には該当をせず、法人税や所得税の課税対象となっています。
このため法人、事業所得者、給与所得者、雑所得者において、それぞれ課税所得に含めるための異なる取り扱いが必要となります。
申告の際にはご参考になさってください。