新型コロナウイルス感染症の影響により、個人に対しては特別定額給付金、売上の減少をした個人事業主には持続化給付金等、様々な助成金が支給されることとなりました。
今回はこれらの様々な助成金について、その受け取りが所得税の課税対象となるのか、また確定申告は必要であるのかについて解説していきます。
個人が受け取る新型コロナウイルス感染症を起因とする助成金は、所得税の課税対象となるものと、ならないものがあります。
所得税の課税対象となる助成金とは、その助成金が事業所得、一時所得、雑所得に分類されるものです。これらに該当をしない助成金は課税対象外です。
課税対象となる、ということは受け取った助成金に税金が課せられ実際の手取り額は助成金の額面金額より低くなることから、同じ額面の助成金の受け取りであれば課税対象外の助成金を受け取った方が、個人にとって有利となります。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
事業所得は総収入金額から必要経費を差し引いて算出しますが、事業所得に該当をする助成金を受け取った場合、この総収入金額に含める必要があります。事業に関連して支給される助成金がこれに該当をします。
出典:国税庁 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
一時所得は総収入金額から収入を得るために支出した金額と最高50万円の特別控除額を差し引いて算出をしますが、一時所得に該当をする助成金を受け取った場合、この総収入金額に含める必要があります。事業に関連しない助成金で臨時的に一定の所得水準以下の方に対して一時に支給される助成金がこれに該当をします。
出典:国税庁 一時所得
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます。
雑所得は総収入金額から必要経費を差し引いて算出しますが、事業所得に該当をする助成金を受け取った場合、この総収入金額に含める必要があります。
出典:国税庁 雑所得
課税対象となる具体的な助成金は、下記のものが該当をします。
・事業所得者向けの持続化給付金
・家賃支援給付金
・農林漁業者への経営継続補助金
・文化芸術、スポーツ活動の継続支援
・東京都の感染拡大防止協力金
・雇用調整助成金
・小学校休業等対応助成金
・小学校休業等対応支援金
・給与所得者向けの持続化給付金
・Go Toキャンペーン事業における給付金
・雑所得者向けの持続化給付金
所得税が課税をされない助成金は、下記のものが該当をします。
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(雇用保険臨時特例法7条)
・新型コロナウイルス感染症対応休業給付金(雇用保険臨時特例法7条)
・特別定額給付金 (新型コロナ税特法4条1号)
・子育て世帯への臨時特別給付金 (新型コロナ税特法4条2号)
・学生支援緊急給付金(所得税法9条1項15号)
・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金(所得税法9条1項17号)
・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金(所得税法9条1項17号)
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券(所得税法9条1項17号)
・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(所得税法9条1項17号)
出典:国税庁 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係
国や地方公共団体以外からの助成金は、その支給内容によって所得税の課税対象であるかの判断を行います。
例えば学生が通学を行っている大学から助成金を受け取った場合は、下記のような取り扱いを行います。
所得税法9条1項15号に定められた非課税所得となる学資金に該当をするため、所得税の課税対象になりません。ただし、その支援金の使途が特に限定されていないと認められる場合には、一時所得に該当をし所得税の課税対象となります。
一時所得に該当をし所得税の課税対象となります。
所得税法9条1項17号に定められた非課税所得となる心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金に該当をするため、所得税の課税対象になりません。
所得税法9条1項15号に定められた非課税所得となる学資金に該当をするため、所得税の課税対象になりません。
大学のみならず、勤務先から助成金として見舞金を支払われた場合には、下記の要件を満たした場合に、給与所得に該当をしない非課税所得に該当をします。
従業員等やその親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払われるもの、緊急事態宣言がされる前と比較して相当程度心身に負担がかかっていると認められる人に支払われるもの等が該当をします。
その見舞金の支給額が、慶弔規程等や過去の取扱いに照らして相当と認められるものであるかどうかが判断の基準となります。
本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの、支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの等は役務の対価たる性質を有していると考えられ、非課税所得には該当をしません。
課税対象外の助成金を受け取った場合は、確定申告の必要がありません。一方で課税対象の助成金を受け取った場合は、確定申告が必要となることがあります。
事業所得に該当をする助成金を受け取ることが出来る人は、元来確定申告をすべき事業所得が生じている人であり、助成金の受取りの有無や助成金の多寡に関わらず確定申告を行う必要があります。
一時所得に該当をする助成金を受け取った場合は、その助成金の金額によって確定申告が必要となります。
一時所得は上記のとおり総収入金額から収入を得るために支出した金額と最高50万円の特別控除額を差し引いて算出をします。このことから、50万円以下の助成金を受け取り、なおかつ他の一時所得が無い場合は、算出される一時所得は0円となり、確定申告は必要ありません。50万円超の助成金の受け取りや、他の一時所得と合算をして50万円を超える場合には、助成金を得るために支出した行政書士に対する報酬料金等を差し引いた金額が一時所得となり、確定申告が必要です。
雑所得に該当をする助成金を受け取った場合は、その助成金の金額によって確定申告が必要となります。
雑所得を得ている人は原則として確定申告が必要ですが、給与を1ケ所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額の合計額が20万円を超えない人は確定申告が不要となります。つまり20万円以下の助成金を受け取り、なおかつ他の雑所得が無い給与所得者の場合は、確定申告が不要となります。20万円超の助成金の受け取りや、他の理由で確定申告をする必要が助成金の有無に関わらずある人は、確定申告が必要です。
確定申告については下記コラムもご参照ください。
このように個人が受け取る助成金は、その内容により所得税の課税対象となり、その金額の多寡等により確定申告の必要性の有無が異なります。助成金を受け取る際には、これらを確認するようにしましょう。