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コロナ対策のPCR検査費用。法人又は個人が支払った場合の取り扱いは?

岡山 由佳
コロナ対策のPCR検査費用。法人又は個人が支払った場合の取り扱いは?

新型コロナウイルス感染症の罹患の確認として有効とされているPCR検査。PCR検査の結果で治療の必要性を確認することのみならず、健康面における安全性を証明するために重宝されています。
今回はPCR検査費用を法人や個人が支払った場合にどのような取り扱いをするべきなのかについて解説していきます。

法人負担のPCR検査費用の取り扱い

従業員が新型コロナウイルスに感染しているかについての確認をすることは、健康的に働ける職場環境や対外的な取引における信用の維持のために必要なこととなってきました。
感染の確認において有効とされているPCR検査費用を法人が従業員のために負担した場合の取り扱いについてご紹介致します。

法人負担のPCR検査費用の会計処理

法人が負担をする従業員のためのPCR検査費用は、福利厚生費又は給与として法人の経費に計上をすることが出来ます。

福利厚生費に該当をするもの

福利厚生費とは機会が平等であり、常識的な範囲内の金額での従業員のために行われる支出をいいます。健康診断のための費用や、社員旅行費、慰労会費、慶弔見舞金等が該当をします。
PCR検査費用においては、全従業員を対象とするもの、又は濃厚接触者に該当をする人のみを対象とするといった全ての人が該当しうる一律の条件を設けて実施するものであることが機会の平等であると考えられます。
またPCR検査費用の代金そのものの支出は、昨今の新型コロナウイルスの蔓延状況から判断をすると、常識的な範囲内の金額の支出に該当をすると考えられます。
このように機会が平等であり検査費用そのものを法人が負担した場合のPCR検査費用は福利厚生費として計上をすることが出来ます。

給与に該当をするもの

給与とは福利厚生費と同様に従業員のために行われる支出ですが、労働の対価として支払われる点が福利厚生費とは異なります。また労働の対価として金銭として支払われるものの他、経済的利益を与えた場合も給与として取り扱う必要があります。
PCR検査費用においては、福利厚生費に該当をしない、検査の実施を全従業員に通知せずに一部の従業員を恣意的に選択して行い機会の平等が与えられていない検査や、PCR検査費用の代金以上の多額の金銭を支給する場合は、給与として計上をする必要があります。

福利厚生費と給与の会計事務手続きの違い

福利厚生費として会計処理をすることと、給与として会計処理を行うことの大きな違いは、給与に該当をする場合は源泉徴収税が発生し、それに係る会計事務手続きが必要となることです。
本来給与を受ける従業員が算出し納めるべき所得税を、法人が給与支給時に算出しその所得税を差し引いた残額を給与支給額とし、差し引いた所得税を法人が従業員に代わって納付することを源泉徴収といい、源泉徴収をされる所得税を源泉所得税といいます。
よって従業員のために支出される同額の金銭であっても、従業員側では手取り額が給与に該当をする方が低くなり、福利厚生費として支給をされた方が有利となります。

福利厚生費と給与の消費税の取り扱いの違い

福利厚生費として会計処理をすることと、給与として会計処理を行うことの違いとして、消費税の取り扱いが異なることも挙げることが出来ます。
法人のうち課税事業者である法人が課税取引として認識する取引とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取りに該当をするものです。
福利厚生費は消費税の課税取引、つまり消費税を課税すべき取引として認識を行い、給与は不課税取引、つまり消費税が課税されない取引として認識を行います。
よって従業員のために支出される同額の金銭であっても、課税事業者である法人側では、福利厚生費に該当をする方が消費税の課税取引であることから、納付すべき消費税額が低く算出され有利となります。

個人負担のPCR検査費用の取り扱い

個人においても自己の健康管理のためにPCR検査が必要となり費用を支出する場合があります。
個人が支払う医療費に対しては、確定申告において医療費控除の対象となるかについてが取り扱いにおける注意点となります。

医療費控除とは

その年の1月1日から12月31日までの間に所得税の納税者本人又は本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。出典:国税庁 医療費を支払ったとき
医療費控除の対象となる医療費

医療費控除の対象となる医療費

医療費控除の対象となる医療費は次のとおりであり、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています。

1 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価
2 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
3 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価
5 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価
6 助産師による分べんの介助の対価
7 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
8 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
9 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの
(1) 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
(2) 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用
(3) 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや上記(1)・(2)の費用に相当するもの
(4) 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)
10 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
11 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
12 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
出典:国税庁 医療費控除の対象となる医療費

PCR検査費用は医療費控除の対象となるのか

上記が医療費控除の対象となる医療費ですが、PCR検査費用そのものは、上記のいずれにも該当せず、医療費控除の対象とならないと考えられます。
しかしPCR検査の結果、新型コロナウイルスの罹患が判明しその治療費を支払った場合には、上記1や2に該当をするため、検査費用及び治療費が医療費控除の対象となります。

医療費控除の対象となる一定額を超える医療費とは

その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費から医療費に係る受け取った保険金を差し引き、さらに10万円を差し引いた金額が医療費控除の対象となる医療費であり、最高200万円です。
その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額が10万円に代えて差し引く金額となります。
つまり、総所得金額等が200万円以上の人は、10万円以上の医療費を支払った場合、200万円未満の人はその総所得金額等の5%の金額の医療費を支払った場合に医療費控除を受けることが出来ます。
また医療費控除を受けるためには、確定申告を行うことが必要です。

医療費控除については下記コラムもご参照ください。

まとめ

上記のように法人では会計処理において福利厚生費又は給与に該当をすることで経費に算入をすることが出来ます。どちらの費用に該当するかによって会計事務や消費税の取り扱いが異なりますので、慎重に判断を行うようにしましょう。
これに対して個人は検査の結果治療が必要になった場合のみ、その検査費用と治療費が医療費控除の対象となります。
ぜひご参考になさって下さい。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び
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