世の中にはたくさんの職業がありますが、私たちはそのイメージだけで仕事内容を決めつけていないでしょうか。地味で目立たないイメージだけど、実はやりがいがあり給与的にも有望な仕事というのは多くあります。今回解説する「経理」もその一つです。経理に向けられがちなイメージと実際から経理職をひもといてみましょう。
経理という仕事は、その内容を知らない人には「ぜひ経理の仕事がしたい!」と思われにくい業種です。
大学で経営学・商学系、経済学系を専攻していたり、高校で簿記を習った方であれば、簿記検定を取得していたりするので、経理が担当する業務の一端を想像しやすいですが、それもあくまで一部です。
ここでは、経理職が抱かれがちなイメージと、実際について解説していきましょう。
経理ときいて「華やかな職種」とイメージする人はあまりいないと思います。
経理部の外から見ると、経費精算や請求書の処理をうるさく言ってくる部署というイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、会社のお金を預かって管理しているので、それは当たり前なのです。
経理がいない会社は決算ができませんし、社員に給与を払うこともできません。会社の決算は、あなたが購入した文房具や、出張経費精算などといった多くの出納の積み重ねからなりたっているのです。
経理はむしろ「屋台骨」くらい重要な仕事であり、ひとつひとつの作業をおそろかにすることはできません。
端から見ると、経理はいつもお金の管理と計算をしているように見えるので、ルーティンワークの単純作業と思っている人も多いです。
確かに、経理業務には伝票と請求書類処理や経費精算などルーティンワークの単純業務も多くあります。しかしそれはあくまで経理という業務の一面です。
経理の本来の業務は、会社のお金を管理することによる会計・税務判断や、会社のガバナンス強化、経営陣へのアドバイスいった非常に重要な業務なのです。総合職で経理部に配属された場合は、最初はルーティンワークをするかもしれませんが、いずれは経営に近い業務を担当することを目指します。
経理業務では簿記検定をはじめとした資格がある方が「便利」ではありますが「必須」ではありません。税理士や公認会計士のような国家資格がない方でも経理職になれます。
ただし、経理職の人気は近年高まっているため、もしこれから異動・転職を目指すということであれば、簿記3級でも勉強をはじめて見ると良いでしょう。
バックオフィス業務であるため、事務職と一緒にされて年収が低いと思われがちですが、経理職は一般事務職に比べると給与は高めです。
また、バックオフィス部門における年収については、その職種よりも業界・会社によって決まることが多いため、給与水準が高い会社の経理職はそのぶん年収も高くなります。
会社の決算スケジュールに合わせて、繁忙期が決まります。例えば決算月が3月であれば4~6月は決算対応で忙しくなります。自分の業務によって、年間のスケジュールがハッキリしているため、予定は立てやすいです。
ずっとオフィスで作業をしているイメージがあるため「地味な仕事」と思われていますが、経理は会社のお金を管理する重要な職種なので、左遷先で選ぶことは通常はありません。むしろ、信頼される人材が会計や決算、財務知識を得るために出世コースで配属されることも。
会社のお金を扱うので、基本的に真面目で、細かいところも見られる人じゃないと難しいと思われるかもしれません。
また、経理からの連絡が、基本的には経理処理の不備連絡だったりするため「細かい」というイメージをもたれがちなのはある程度仕方がないことともいえます。
しかし、自分で中に入ってずっと処理をしていれば、業務のカンもつかめますし、最近の経理業務はシステム化も進んでおり、チェックなども自動で行ってくれることも多いです。自分で電卓を叩いて計算していた頃に比べれば、かなり目指しやすくなったのではないでしょうか。
これまで、経理が一般的にどう思われているかと言うことと、その実際を解説しましたが、具体的に経理がどんな業務をしているのかを見ていきましょう。
会社に勤務している限り、多かれ少なかれ経理業務と無縁ではいられません。また、経理業務というのは、会社にはなくてはならないポジションです。
経理部以外が経理部と最も関わるのがこの経費精算ではないでしょうか。
営業経費や出張旅費の申請などをうっかり忘れてしまって経理部に怒られたり、必要書類が足りないなどで不備で戻されたりという経験のある人も多いでしょう。
事業活動を行う上で必要な経費の処理を行う、煩雑ながらも重要な業務です。
会社のお金の出し入れを記帳し、帳簿上の数字と付け合わせる作業です。帳簿の数字と、通帳の数字というのは一致していないといけません。しかし、多くの取引があったりすると処理が混在してしまい、いま会社にはどのくらいのお金があるのか、これからどのくらいの支払があるのか、といった大事なことが把握できなくなってしまいます。
また、社外との取引だけでなく、前述の経費精算のような社員への支払についても帳簿を管理していく必要があります。
経理処理というのは、すべてのお金の出し入れの記録が連携していなければなりませんので、注意が必要です。
顧客や仕入元、仕入れ先などとの取引履歴を全て起票し、さらに集計するのも経理部の業務です。
例えばA社から原料を1つ100円で仕入れて加工、B社に200円で販売した場合、差額が売上となります。消費税などについても計算が必要です。
C社には大口顧客のため割引して180円で販売したりといった特例も加わったりします。
こうした作業を昔は手作業で計算していたため「経理=計算」というイメージがついてしまったのだと思いますが、現在は会計システムの利用で集計や管理もだいぶ簡単になっています。
その事業年度の利益を確定し、納税額を計算する決算対応。年度内に行った帳簿への記帳のチェックや抜けもれの確認を行うほか、会社の資産を確認するために、棚卸し作業や、減価償却資産の確認なども必要です。
決算作業は作業が終われば終了ではありません。今期の結果を、来期の経営にどのように活かすかといった、経営陣への報告や提言、さらには業務改善も行うことが求められます。
会社経営は、お金がなければできません。経理は経営と密な連携が求められる職種なのです。
経理って事務の一つでしょ?と思われがちですが、会社のお金を扱うだけあって簡単ではない業務です。しかし、身につけておけばこれほど役立つスキルもありません。
経理はどの会社にも必要な業務のため、転職も比較的容易にできる職種でありながら、資格不要でルーティンワークの単純作業から経験を積み重ねることができるため、チャレンジもしやすいのです。
簿記の知識は、将来どのような仕事についても、自分が仮に独立しても役に立ちます。もし現在「特に目指すべきルートがわからない」という状況にあるとしたら、まずは経理業務の勉強をはじめてみることをおすすめします。