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入社=労働組合の加入が義務?ユニオンショップとは

HUPRO 編集部
入社=労働組合の加入が義務?ユニオンショップとは

志望企業に労働組合があるかどうかをチェックしていますか?労働組合の加入は基本的に任意ですが、中には入社後の労働組合加入が必須となっている企業もあります。今回は、労働組合への加入形態の一つ「ユニオンショップ」について見ていきましょう。

ユニオンショップとはなに?

ユニオンショップとは、労働組合に関する協定の一つです。

労働組合の大きな目的の一つは、会社経営陣から有利な労働条件を勝ち取ること。交渉を行うには、組合員の人数が多い方が有利です。

仮に、組合への労働者の加入が少ない場合、経営側の出す不利な条件に対して「NO」といえない状況になってしまいます。

現在は法整備もされ、労働基準法などをはじめとする労働者を守るための法律も改正され、「働き方改革」も推進されているなど、労働者の環境は整ってきている状況です。
しかし、かつては労働者の権利を守るために、企業内の労働組合は一致団結することが求められました。そこで、労働組合の組織を強化するために生まれたのが「ユニオンショップ」です。
ユニオンショップを締結している場合「使用者は労働組合に加入しない者、もしくは組合員でなくなった労働者を解雇しなくてはならない」と定められています。
つまり、労働者側から見ると、入社した後は労働組合に加入が必須となり、脱退した場合は解雇になるのです。

労働者=労働組合加入者とすることで、労働組合の組織力を強めるという狙いがあります。

なお、ユニオンショップは、退職したり、管理職となって労働組合の組合員資格を喪失したり、すでに他の労働組合に入っていたりする従業員にはその効力は及びません。

ユニオンショップのなりたち

労働組合に入るも入らないも、本来はその人の自由のはずです。なぜユニオンショップのような仕組みが生まれたのでしょうか。

もともと、労働組合というのは会社にとって煙たい存在でした。雇用する労働者が徒党を組んで、労働条件の向上などを訴えてくるのですから。
会社としては、労働組合などで団結して要求してこない社員の方が扱いやすかったのです。

例えば毎年、新聞に「賃上げ要求」「春闘」といった見出しが出ますが、もともと企業には雇用している人の給与を昇給させなければいけないといった決まりはありません。そのため、新卒給与が全然上がっていないという話題もあったりします。
仕事を頑張って評価されて給料が昇給するのではなく、全員一律昇給させるベースアップなどは、労働条件の改善を交渉する労働組合の働きかけがあってはじめて成り立っているのです。

こうした働きかけができるのも、労働組合に加入しているメンバーの割合がものを言います。
「社員全員が望んでいます」という場合と「10%の社員が望んでいます」という場合では、後者は無視されてしまいますよね。

労働組合に入る入らないは基本的には自由です。会社側が労働組合の結成・運営に干渉したり、組合員に対して労働組合からの脱退を強く勧める行為は「支配介入」といわれ、労働組合法違反となります。

しかし、自分が労働組合に加入していることで、会社での処遇が不利になるとしたらどうでしょうか。ユニオンショップ制は、労働組合への加入を強制的に行わせているように見えますが、労働者の権利を守るためには、労働組合の組織人員の維持・拡大が不可欠であり、それをスムーズに行うという目的から生まれたものなのです。

「働き方改革」における残業規制時間や有給休暇の取得のように、全員に向けて制度化し、「みんながやっているから」としっかりと枠組みを決めればそれに対応したやり方を考えるという日本的な特性を生かしているともいえます。

逆に個々でも企業に対する訴訟などを頻繁に行っている欧米においては、ユニオンショップ制度は組合選択の自由(積極的団結権)の侵害にあたるなどとして、多くの国で禁止されているのが現状です。

ユニオンショップのなりたち

ユニオンショップのメリット

ユニオンショップが締結されるのは、労使ともにメリットがあるからです。
労働者側にとっては、労働組合の加入割合を高めることができ、労働者側の意見をまとめやすいことと、数の後押しで使用者への交渉力を持つことができます。

使用者側にとっては、労使交渉の窓口を一つにすることができるため、交渉が効率化できることがメリットです。
現代では、労使交渉は避けて通れません。どうせ労使交渉をするのであれば、その手間を省きたいと考えるのは当然でしょう。

また、現在では組合がいわゆる「御用組合」と化し、労働組合そのものが形骸化している場合もあります。
体面上は労働組合があった方が良いので、いちおう労働組合としては存在していますが、なあなあの関係。本気で労使交渉などはおこりません。労働者たちの待遇改善などを経営に訴えるわけでもなく、経営側にたって、労働者を説得するためのフォローさえする組合もあるようです。
ユニオンショップがどうというよりも、長年続いてきて、組織が制度疲労を起こしている状況とも癒えます。

ユニオンショップのデメリット

一方で、ユニオンショップは労働者が「労働組合に入りたくない」と思っても、加入が必須のため事実上強制というデメリットがあります。
毎月の給与明細を見ては、組合費が高いと感じている方も少なくないのではないでしょうか。

かといって、ユニオンショップの場合は、労働組合を脱退したり除名された場合は、会社に解雇されることとなりますので、労働者にとっては重大な不利益です。
他の労働組合に入っていれば良いとされますが、それにしても「労働組合活動をしたくない」という労働者の意思は尊重されません。「どの労働組合に加入するか」は選べても、「加入するかしないか」は選べないのです。

こうしたことから、そもそもユニオンショップ自体が労働者の自由を制約することになるため違法なのではないか、という説を唱える法学者もいます。

また、メリットの点でも述べた企業の「名ばかり労働組合」・「御用組合」と化した労働組合であれば、労働者にとって存在意義は薄いです。
むしろ、会社に従属して労働者の利益を損なう存在となっているのに、ユニオンショップのせいで組合を脱退できない(組合を脱退すると解雇されるから)というデメリットを訴える声も最近強まってきました。

それぞれの企業と労働組合によって、ユニオンショップが大きな課題となっているところも多いようです。

そのせいかはわかりませんが、厚生労働省によって行われている「労働組合活動等に関する実態調査の概況」についての調査は、平成25年には、ユニオンショップ締結割合についての数値があったのですが、平成28年からは「ユニオン・ショップ」という言葉自体が見られなくなりました

なお、平成25年調査で 66.1%の企業が締結していましたので、まだまだこの制度を採用している企業はそれなりに多いはずです。

出典:平成28年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況|厚生労働省
出典:平成30年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況|厚生労働省

まとめ

就職・転職時には、どうしても目に見える給料や福利厚生などの待遇を重視してしまいますが、労働組合の有無やどのような活動をしているかも非常に重要です。

労働組合がないというのも問題ですが、あっても経営陣と癒着していてしまっては意味がありません。無償の組合活動に時間も労力もとられてしまう事も起こります。転職時は転職エージェントを活用するなどして、志望企業の労働組合についても調べておきましょう。
【参考】
団体交渉権とは?【労働者側、企業側】法的な定義やルール、円滑に進めるための方法は?弁護士予約サービス『カケコム』

この記事を書いたライター

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