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【決算解説シリーズ】コロナ禍でも毎月、前年比110%の成長率を記録!大躍進の成城石井を調査してみた!

HUPRO 編集部
【決算解説シリーズ】コロナ禍でも毎月、前年比110%の成長率を記録!大躍進の成城石井を調査してみた!

今回は、株式会社成城石井(以下、成城石井と略する。)について取り上げたいと思います。成城石井は、主に関東や関西の都心を中心に展開するスーパーマーケットチェーンを展開する会社です。また、近年では株式会社ローソン(以下、ローソンと略する。)の傘下に入ったことで話題の会社です。
 
そんな、成城石井は確実な成長をみせており、このコロナ禍においてもその成長は止まっておらず、快進撃を見せております。成城石井とはどのような会社なのかを述べてから、買収後の財務情報から直近の売上の状況までを分析していきたいと思います。

(1)株式会社成城石井とはどんな会社?

1.創業からの歩み

成城石井は、1927年2月に東京都世田谷区成城にて、果物・缶詰・菓子を取り扱う食料品店としてオープンしたのが始まりになります。創業の地が関東であることから、当初の出店は主に関東圏が多くあり、神奈川県、埼玉県、栃木県、千葉県、茨城県と出店を重ねて行きました。

開店当初は、一般のスーパーマーケット同様に路面店を中心に出店を重ねていきましたが、1997年の駅ビル出店を皮切りに、新たな店舗のフォーマットの開発に取り組み、今では路面店以外にも駅ビルやデパ地下など多様な場所に出店することができるようになりました。これにより、成城石井の店舗数が増加していくようになりました。

2.店舗の推移の状況

店舗の推移の状況

出典:ホームページ|株式会社成城石井より筆者が年度単位で作成
成城石井には、大きく分けて3種類の店舗形態が存在します。

① 直営店
これは、成城石井が運営を実施するスーパーマーケットの店舗を指します。したがって、店舗構成としては一番多い形態になります。
② FC店
フランチャイズ形式の出店店舗になります。成城石井では、関西・東海エリアでの出店はフランチャイズ形式で展開されています。関東圏は、成城石井の立地の強みがありますが、関西・東海エリアなどの地域においては早期に立ち上げをするためにこの形式が取られていると思われます。
③ 飲食店
成城石井が展開するお店には、「ル・バーラ・ヴァン52」というワインバーがあります。このワインバーは、成城石井の強みであるバイヤーの購買力によって厳選されたワインを提供していることが売りの飲食店になります。

ワインバー以外には、グローサラントという店舗に併設したレストランがあります。このレストランでは、スーパーマーケットで実際に販売されている商品を使って食事を提供しており、店舗で食べたものを帰り際に買って帰ることができ、実際に家でお店のメニューも作ることができます。この店舗は、開店当初はテレビのニュースで取り上げられるなど話題になりました!

成城石井は、毎年10店舗は出店していこうという目標があります。ここ5年間はその目標が達成しています。出店が順調に行っていることもあり、業績としては伸びている一つの要因かと思います。

3.成城石井の強み

成城石井の強みは、独自のビジネスモデルで差別化がされている点が考えられています。成城石井には、商品の調達、開発から販売までを自社内で完結することができる部門を有していることから次のような機能をすべて兼ね備えた会社となっています。

① 世界中から魅力的な商品を探し出す「商社」機能
② 輸入業務を行う「貿易」機能
③ オジリナル商品を開発する「メーカー」機能
④ 商品を最高の状態で保管し運ぶ「物流」機能
⑤ 商品を提案する「小売」「外食」機能

成城石井の店内を見直すと、他のスーパーでは売っていないような海外から仕入れられた商品をたくさん見かけます。それ以外にも成城石井でしか売っていない惣菜などのオリジナル商品がたくさんあり、商品開発力も印象的です。

このように、成城石井でしか買えないものが多くあることも他社との差別化の強みとなっています。
「少し、良いワインを買いたいな。海外のおいしい食材を買いたいな。」
そう考えたときに成城石井を思い浮かべる消費者も最近では多くいるのではないでしょうか。

(2)ローソンによる買収について

1.買収の背景について

成城石井は、2004年に創業家が当時のレインズ・インターナショナルに株式を売却するところから会社の状況は変わっていきます。その後、2006年にレインズ・インターナショナルの完全子会社になったあと、親会社の業績悪化から、2011年に三菱商事系ファンドの丸の内キャピタル株式会社に売却されることになります。ここからわかるように、成城石井は親会社が数回変わるということを経験しているのです。

そして、現在の親会社である2014年にローソンへの買収が決定します。買収前から、ローソンが展開するナチュラルローソンにて成城石井の商品を扱っていたのでつながりはありました。

ローソンとしては、成城石井の商品を扱う力をローソンのエース級の商品担当者を出して学ばせたいと過去に前玉塚社長がインタビューで話しをされていました。その一方で、ローソンがもつ物流網や店舗開発のノウハウを活かすことでシナジーを出せると考えていました。

2. 買収後の財務状況

買収後の財務状況

上記の図は、ローソンの有価証券報告書のセグメント情報から作成したものになります。直近の決算から5年間分の営業収入について解説していきたいと思います。
ローソンには、セグメントがその他も含め、5セグメントありますが、成城石井事業が成城石井の業績になりますので、成城石井事業について解説致します。

成城石井については、買収時から毎期10店舗は出店しており、それに伴って売上が増加している状況です。つまり、5年間で約50店舗は増えている計算になるため、売上が2016年2月から2020年2月を比較したときに、約200億円増加していることに違和感はありません。

成城石井事業

次に、セグメント利益になります。(セグメント利益率=セグメント利益/営業収入)
2016年2月のセグメント利益率が、約7.3%であるが、2020年2月のセグメント利益率が約8.9%と成長している。

元々、成城石井の粗利率としては40%程度あると言われており利益率のいい商品が揃っておりますので、ローソンの主たる事業であるコンビニエンス事業と比較しても見劣りしない利益率となっています。ここで特筆すべき点があるとすると、5年間のうちに50店舗以上も増えているのにもかかわらず利益率が落ちていない点があげられます。

これは、様々な要因があるかと思いますが、主にローソンとの合併により物流網を使用できることによる輸送コストの削減や、ローソンがコンビニの出店開発で得たノウハウを成城石井の出店に際して利用することで、失敗のない店舗開発ができていると考えられます。

(3)コロナ禍においても成長を続けることができる要因は?

1.直近の売上状況

直近の売上状況

それでは、2020年3月からの売上についてみていきたいと思います。
当該情報は、ホームページ|株式会社ローソンにてIR情報として開示されているものになります。金額については開示がされておりませんが、前年同月比の売上高の割合で開示されているものになります。

日本でコロナウィルスが流行し始めたのが、2020年3月頃ですので、そこから売上が減少していくことが最近の日本企業のトレンドであると言えます。
国内コンビニエンス事業では、大規模イベントが開催中止になり、チケット販売による手数料収入の減少や、オフィス街の売上が減少傾向であると考えられることから売上としては前年比を下回っています。

一方で成城石井事業については、コロナが流行した2020年3月から比較しても前年同月比を比較しも一ヶ月も下回っていない状況です。この好調な売上により、第2四半期決算のセグメント利益の数字も前年同期比でプラス9億円となっています。
このコロナ禍においても、利益を出し続けられる秘密はどこにあるのかを考えてみたいと思います。

2. 成長し続けることができる要因とは??

このコロナ禍においても、昨年度末から比較して、第2四半期までに直営店を8店舗出店しており、攻めの姿勢は崩していません。
また、第2四半期の決算説明会資料については、成城石井の好調な要因として、コロナ禍によりスーパーマーケット重要が高まっていることが要因であると説明されています。

確かに、外出自粛などの影響もあり家にいる機会が昨年度と比較して増えている人が多いと思います。外食で贅沢していた人が、家の中で贅沢をするいわゆる巣篭もり需要というものが最近では増えていると言えますのでその需要をうまく取り込んでいると言えます。

では、なぜ需要をうまく取り込めているのでしょうか。それは、成城石井の強みを記載したセクションでも前述いたしましたが、成城石井の圧倒的な商品開発力にあると言えます。成城石井では他のスーパーで販売されていないものがたくさんあります。成城石井のホームページにこんな言葉が書かれています。

「成城石井の歴史は、お客様の期待に答えようと努力してきた結果です」

つまり、多くの目の超えた文化人や著名人が住む東京の成城の地で誕生した成城石井は、これらの顧客の期待に答えられるような品揃えを創業から努力しつづけているのです。会社が掲げるビジョンに「オンリーワンを目指す」というものがあり、このオンリーワンこそが、他社にはない魅力ある商品を売り出すことだと思います。そうした成城石井の魅力によって、成城石井のファンが増えることでより業績も伸びていくことになると思います。

まとめ

成城石井については、親会社が度々変わり、つらい時期もあった会社です。
しかし、その中でも確実に成長を遂げ現在の好業績を維持する素晴らしい企業になりました。

今後の方針としては、都心への出店がメインでありましたが、郊外への出店も徐々に増やしていくとのことです。また、オンライン販売なども強化されていくと思いますので、ますます成城石井のファンが増えていくことでしょう。今後も成城石井に目が離せないですね。

この記事を書いたライター

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