「公務員試験に合格して地方公務員になったけれど、税理士になる夢を追いかけたい」、「士業のほうがステータスは高い」など、地方公務員を経験してから税理士に転職を考えている人はいます。
地方公務員を辞めて税理士になった場合、成功して収入が増加すれば良いですが、安定した地位を捨てることで今後の生活に不安が増すことも考えられます。特に家族がいる場合は、慎重に考える必要があるでしょう。
今回は地方公務員から税理士への転職キャリアを考えている方向けに、税理士に転職をする理由やその仕事内容の違いなど具体的に説明していきます。
他の仕事と比べると地方公務員は安定している仕事であり、自分から退職をしない限り定年まで働くことができ、期末手当や福利厚生なども充実しています。
地方公務員は社会的信用が高く、景気が悪くてもリストラにならない、住宅ローンを組みやすいなど、一昔前までは結婚相手に公務員を選ぶように親が言ってきたほどです。
メリットが大きい地方公務員を辞めてまで、税理士に転職したい理由は何でしょうか。
市役所や役場で税務課に配属されて仕事を覚えていく中で税について興味を持ち、税理士試験や簿記試験を受験する人は意外に多いのです。
しかし、地方公務員の場合、数年で異動をすることが一般的になっています。
税務課を担当している間に税理士資格や簿記資格を取得した場合、地方公務員ではなく、「税に関係する仕事がしたい」と考え始める人がいることは普通のことであり、チャンスをつかみたいと考えている人が税理士への転職を考えています。
税務課は、未納税者から税金支払いの催促を行う徴収課と税金の計算を行う課税課に分かれています。
地方公務員が徴収を行う税金は「住民税」、「固定資産税」、「軽自動車税」が主で、毎年2月中旬からの確定申告の時期になると、国の代わりに受付を行うことも仕事です。
特に税務課は税金滞納者との折衝、未納税者の財産差し押さえなど徴収も仕事の一つであるため、住民から罵声を浴びる機会が多くクレーム処理やストレスが溜まっていくという面もあります。
そのような仕事内容が負担になり、うつ病による休職や転職を考える人は後を絶ちません。
地方公務員は地方の行政に関わり、住民の生活の質の向上に寄与することを仕事に取り組む姿勢になっています。
また、社会全体への奉仕や様々なサービスを提供していくことも仕事の一環になっており、特に地方公務員の場合は、より住民生活に身近なサービスの提供を行っていかなければいけません。
一方、税理士の仕事は税務とコンサルティングです。
税理士のクライアントは「会社経営者」、「個人事業主」など税金対策を必要としている人であり、税理士の仕事は次のような仕事を行います。
1. 確定申告や税務署の決定に不服がある場合などの申し立てを行う「税務代理」
2. 確定申告書や個人事業等の決算書の作成など、納税者の代わりに作成する「税務書類の作成」
3. 税務署への申告相談を行う「税務相談」
4. 銀行から融資を受ける場合の、事業計画書の作成や資金繰り支援などを行う「経営・財務相談」
5. 財務諸表の作成や会計帳簿の記帳を代行する「会計業務」
の5つの仕事が主にあげられます。
地方公務員の給料は、税金から支払われています。
総務省が発表した「平成29年地方公務員給与実態調査結果等の概要」では、地方公務員の平均給与月額は363,448円となっています。
一方、厚生労働省が発表した「平成29年賃金構造基本統計調査」では、税理士の平均月収は691,800円と倍近い報酬を稼いでいることから、地方公務員が税理士に転職をすることで収入アップが期待できそうです。
ただし、地方公務員から税理士資格を取得する場合、税理士法人に転職し、税理士補助として働きながら、税理士資格に必要な5科目の合格を目標にする人がほとんどです。
税理士補助の給与は未経験が月収20~25万円、経験者は月収25~30万円になっており、毎年行われる税理士試験で合格した科目が増えるたびに、給与のアップが期待できます。
地方公務員が税理士に転職をすることは可能です。
税理士事務所では税理士補助の求人を行っており、実務経験を要する人の募集が多いですが、未経験の求人採用を行っている税理士事務所もあります。
日商簿記2級・3級の資格を応募条件にしている税理士事務所が多く、若年層を育てる兼ね合いもあり、35歳までの年齢制限を行っている税理士事務所が目立ちます。
税理士として働く場合は税理士試験に合格する必要があります。
税理士試験は毎年1回行われ、11科目ある中で5科目基準点に達することで合格になります。
「簿記論」と「財務諸表論」は必須科目となっており、「法人税法」や「所得税法」は選択必須科目になっている。
税理士試験は、1度に5科目を受験する決まりはなく、数年に分けて5科目合格を目指すことが基本です。
なお、地方公務員の場合、「事業税もしくは固定資産税の賦課、地方税に関する法律の立案に関する事務に通算10年以上」、「事務に通算15年以上従事した場合」の2つのうち、どちらか1つの条件を満たせば「地方税」の科目が免除されるという制度もあります。
地方公務員から税理士に転職を行う場合、まずは税理士法人に転職し税理士補助からスタートすることから始まります。
税理士試験の合格率は低く不安がつきものですが、合格した瞬間の景色は特別なものでしょう。
税理士の仕事の内容や、税理士に転職するためのリスクを考えてから、自分の進むべき道を考えることも大切です。
会計事務所への転職事情については下記のコラムでも詳しく紹介していますので、是非チェックしてみてください。
<関連記事>