転職時に必ず聞かれるのが「前職の退職理由」です。本音はいろいろあるかもしれませんが、そのまま話してしまっては、内容によっては不採用になってしまうかもしれません。今回は、経理を退職したという方たちの理由と、それを話したら人事にどう思われるか、対応のポイントなどを解説します。
経理に限らないかもしれませんが、トップは人間関係の悩みがランクイン。しかし経理ならではの悩みというのも見受けられます。
経理は専門職で長く続けられる仕事……ゆえに、働きやすく、人の定着率も高い傾向にあります。するとつまり、会社の中でずっと経理一筋という古参社員がいるということも珍しくありません。
また、小さい企業であれば、社長と経理の関係というのは非常に近いです。経営に関するお金の管理を任されているわけですから、社長から見れば金庫番。大手企業であれば、まだ、上司は異動することもありますが、ベンチャー企業などでは社長の影響力は絶大です。社長とウマが合わない、あるいは途中からついて行けなくなったなど、よく聞くケースです。
経理ならではの悩みというのは、基本的に外に出ないこと、そして異動が少ないことに起因します。人間関係が良ければ楽しく過ごせますし、逆なら逃げ場がないともいえるのです。人間関係についてはある運の要素が大きく、自分でコントロールすることが難しい側面もあります。
人間関係はどこでもついて回るものです。それを理由に退職となったばあい、うちに来てもらっても同じ理由で不満を持って退職してしまうかもしれないと人事部では考えます。
また、転職活動時の面接では、あくまで転職希望者からしか事由を確認できません。本当に会社が悪いのか、それとも本人のワガママなのかが判別できないのです。
そのため、退職するほど人間関係に悩んでいたとしてもそのことについては口にしてはいけません。
経理部は外出も異動もあまりない部門のため、今いるメンバーの和を乱さないことも重要な資質としてみられます。
そのため、「前職での人間関係はどうでしたか?」あるいは「合わないと思う人とはどのように接しますか」といった質問を受けることもあるでしょう。
しかしそこで「人間関係に困ったことはない」という答えはNG。嘘っぽいです。
会社としてほしい人材は、合わない人であっても逃げずに向き合って、自分の良くないところがあれば改善し、最終的には良い関係を築いたという人材です。
自分の努力で人間関係を改善したというエピソードを組み立てて、答えられるようにしておきましょう。
退職理由として人間関係と双璧をなすのが「給与」の悩みです。給与についても、不満を持つパターンは様々。
もともと会社の給与自体が低い場合もありますし、人間関係に由来するかもしれませんが、上司とのウマが合わずに評価されないから昇格せずに給与が変わらないということもあります。
他にも、会社がバックオフィス部門を評価しないとか、業績悪化のために給与基準が変更になったとか、自分ではどうしようもない部分もあるでしょう。
いずれにしても会社にはそれぞれの基準があるため、評価と給与の悩みについては考えていても口に出さない方が無難です。
給与については、人件費の予算の範囲内でしか出せません。
例えば、30歳の経理職の社員であれば、社内の年次では主任クラスで年収はおおよそ400~600万円前後など、会社によって給与レンジによる相場などが決まっています。
希望年収を聞くのは、あくまでそのレンジ内に収まっているかを確認したいという意図ですが、自らの能力を過大評価しすぎていないかというチェックも含まれています。
給与について不満がある場合は、ある程度企業の給与などを調べて応募しているはずです。しかし、平均というのは管理職なども含みますので、転職においてその数値をそのまま答えるのは危険でしょう。
現在の年収から希望年収額がアップする場合は、その根拠(経験やスキルを生かして成果を出すよう努力するなど)を示し、あくまで希望ですが~と譲歩する姿勢を見せることも大切です。
希望の給与での転職を果たしたい場合は、まずは転職エージェントを活用し、事前に募集給与の情報を仕入れておくことや、自分のスキルや年齢からどの程度の給与が適切なのかをあらかじめ情報収集しておくことが求められます。
仕事内容についての不満は「やりたい仕事ができない」ことが大きいです。経理職はルーティン業務や、担当者ごとに業務が割り振られていたりすると、仕事の幅を広げる機会が少ないことがあります。
また、企業によっては人数が少なくてなかなか有休を取ることができなかったりすることもあるでしょう。他にも、会社が採用・開発した経理システム使いづらいという理由もありました。
キャリアアップのためというのは一見前向きですが、漠然とした言葉です。また、会社に対する不満があるからそれを取り繕っているという風に見られます。
仮に採用したとしても希望通りの仕事を任せてあげられるとは限りませんし、その仕事ができないと不満、忙しいときにも自分のライフスタイルが大事という要求の多い人?と見てしまうかもしれません。
その人にとってのキャリアアップとは何なのかを具体的にしておくことは大事です。しかしそれに固執せず、「将来的には◯◯の業務に携わりたいと考えています」程度にとどめましょう。
まずは「御社で長く働きたい」ということと「自分はこういう点で貢献できる」ということを明確にしておくことが必要です。
## 経理を退職したいときに気をつけたいこと
退職理由とそれをどう取られるかについて解説してきましたが、転職活動~退職までの流れを考えた場合に、いきなり退職することは難しいです。
法的には2週間前に申し出れば退職できることになっています。しかし、実際は会社ごとに退職についての社内規程が定められていることが多いです。
転職活動で頭がいっぱいかもしれませんが、退職にまつわる手続きについては、事前に確認しておきましょう。
経理担当がいきなり退職してしまって困っているという企業は実は多いです。在職中はいろいろと不満があったかもしれませんが、退職後の状況を考えるときちんと引き継ぎをしてから退職する方が気持ちもすっきりするのではないでしょうか。
属人化している業務が多い場合、引継ぎに時間がかかる場合があります。マニュアルを作成しておくなど、スムーズに引き継ぎを行えるようにすることで、退職後の問い合わせなども減らすことができるでしょう。
その会社に必要な人材であれば、ちゃんと処遇してくれれば良いのに、いないと困ると言って慰留してくるケースもあります。しかし、職業選択は自由です。退職する権利は法的に保障されています。
意思をしっかり持って、退職手続きを進めましょう。もし強い慰留を受ける場合であれば、弁護士などに相談しても良いでしょう。