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会計事務所の利益率を上げるためには?

岡山 由佳
会計事務所の利益率を上げるためには?

税理士資格の取得を目指すにあたり、また税理士の資格を保有し開業するにあたり気になることのひとつに、会計事務所は儲かるのか、利益は上げられるのか、という点があります。
今回は会計事務所の利益の発生要因である収入と費用について利益率を上げるために出来ることを解説していきます。

会計事務所の利益率

会計事務所の利益率がどの程度か、というのは会計事務所によって大きく異なります。個人事業主として一人で会計事務所を運営している零細会計事務所では、人件費がかからず、また一人で仕事をすることの出来る範囲は限られているため広告宣伝費等の将来への投資が低い傾向にあり、利益率は高い傾向にあります。

一方で大手の会計事務所では、従業員数が多い分人件費がかかり、その従業員への給与を確保するだけの売上をあげなければならないため、広告宣伝費等の将来への投資が高い傾向にあります。従業員それぞれの給与水準は高いものの、会計事務所の利益率としては低い傾向にあります。 
 
このように会計事務所としての利益は、規模やその事務所の方針によって様々であり、何%以上の利益率があれば、良い会計事務所だという判定は出来ません。
 
それでは会計事務所の利益率を上げたい場合には、どのような手法をとれば良いのでしょうか。利益は収入と費用の差であり、収入を増やすか、費用を減らすか、簿記の知識がある人には当然の仕組みですが、具体的にはどのような手法があるのかご紹介致します。 

利益率を上げるためには収入を増やす

会計事務所の主な収入は顧客からの顧問料報酬であり、月次監査報酬、決算業務報酬等の契約で定められた一定の金額です。

多くの場合は初回の契約時に定めているため、既存の顧客の顧問料報酬を増加させることは容易ではありません。顧問料報酬は万単位のものが多く、十円単位で少しずつ上げるという他業種では見られる値上げの方法も難しいです。

よって既存の顧客に現在行っているサービスの他に新しいサービスを提供して顧問料報酬の値上げの交渉材料とする、別の顧客を獲得する等という、会計事務所の何らかの努力があってはじめて収入を増やすことが可能となります。

新しいサービスの提供

現在行っているサービスの他に会計事務所として行えることが無いか検討を行います。付加サービスとしてよく用いられているのは経営分析表の作成と経営アドバイスです。

月次監査として正しい財務諸表が作成することが出来る状態にあるかという確認と、申告書の作成や代理提出は会計事務所の基本業務としてどこも行っています。会計事務所としてやるべき最低限の仕事ともいえます。

この最低限の仕事から一歩踏み出し、月次監査によって作成された財務諸表から経営分析表を作成し、今後の経営判断が行いやすいようなアドバイスをすると、これまでの財務諸表を作成するだけの月次監査に付加価値が生まれ、顧問料報酬の値上げの交渉材料とすることが出来ます。

このような新しいサービスの提供は全ての顧客が望むものではありませんが、新しい顧客を獲得するよりも、既存の顧客によって収入を増やした方が、新しく顧客との関係を構築することが無く、比較的簡単に実施出来るものです。

 会計事務所の利益率

別の顧客の獲得

別の顧客の獲得はその獲得のために営業活動や広告宣伝費の費用や、新しく獲得した顧客との関係を構築する労力が必要になるものの、既存の顧客の顧問料の値上げよりも大幅に収入を増やすことを期待することが出来ます。

利益率を上げるためには費用を減らす

利益率を上げるためには上記の収入を増やすことの他に、費用を減らすことに注力する方法もあります。勿論収入を増やすことと費用を減らすことを同時に実施することが出来れば理想的です。

主な費用

費用を減らすにあたり効果的な方法は、毎月恒常的に発生する固定費をどれだけ削減出来るか、という点に着目した方法です。固定費は収入に関わらず一定の金額が支出されるため、この削減の効果は永続的なものとなります。
会計事務所で支出される主な固定費は下記のようなものがあります。 

地代家賃

会計事務所の所在が賃貸オフィスである場合、この地代家賃が費用に占める割合は大きなものとなっているでしょう。

そのオフィスの場所や広さが本当に業務に見合っているか考え、場所の利便性や広さが必要で無いと判断できるのであれば、家賃の低い場所に引越しをすることが地代家賃の削減に効果的です。

人件費

地代家賃と並んで費用の多くを占めるのが人件費です。人件費の削減はその従業員の生活を守るという経営者の責任において、なかなか策を講じることは出来ません。

直接的な人件費の削減は難しくとも、間接的な人件費の削減、つまり収入に対する人件費の割合を削減することは可能です。

会計事務所内の作業フローを見直す、アルバイトと有資格者の仕事を明確に分けて適材適所な人員配置をする、等として会計事務所の生産性を上げることが収入に対する人件費の割合を削減することに効果的です。

会計ソフト利用料

地代家賃や人件費ほど費用に占める割合は無いものの、固定費として発生し続けるのが会計ソフト利用料です。

会計ソフトは慣れたものを使い続けたいという思いから高額な会計ソフトを利用し続ける会計事務所もありますが、利益率の観点からは良い方法ではありません。また会計ソフトの変更は地代家賃や人件費の削減よりも、手の付けやすい費用の削減方法です。

会計ソフトの変更に伴いデータの移行や操作の慣れが必要となり手間に感じることがありますが、固定費として発生し続けるものであることから、こちらも費用の削減に効果的です。

まとめ

会計事務所の利益率を上げるための収入を増やす方法、費用を減らす方法をご紹介致しました。是非ご参考にされて下さい。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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