経理の仕事は地味だし毎日同じことをしているだけでつまらないと考えている人も少なくありません。しかし、それは経理の古臭いイメージが定着してしまっているからです。現代の経理部は、経営者の右腕として活躍するような部門となっています。そこでこの記事では、経理の仕事のアップデートの仕方を解説していきます。
「経理の仕事はつまらない」「経理は毎日同じ仕事をしているだけ」「ルーチンワークが経理の仕事」と思っている人は少なくありません。このイメージは、経理の仕事とは、いわゆる簿記をすることだと思っていることからきています。実際、経理の仕事の多くの時間は、企業の経済活動を「記録する」ということに割かれています。
しかし、商品の購入や販売、広告代や給料の支払いなど、日々企業では様々な経済活動が行われていますが、これらの経済活動を一定のルールに基づいて、分類・整理した上で帳簿に記入することだけ経理の仕事というわけではありません。
この記事では、経理の仕事はつまらないと思ってしまっている人のために、経理という仕事がどのようになっていくのかについてわかりやすく解説していきます。ここで結論を述べれば、経理はこれまでのようにルーチンワークをこなすだけの存在ではなく、会社の未来像を描くというクリエイティブな仕事であることを示していきます。
経理部には決算書を作成するための数字をまとめたり、税務申告のための書類を書いたりと、受け身で仕事をしているというようなイメージがあるかもしれません。日々めまぐるしく動くお金の流れを数字で正確に管理することが、経理の仕事の一つであることは間違いありません。しかし、経理部の仕事は単に企業の経済活動を簿記という技術を使って記録していくだけではありません。
現代の経理部に期待されている役割は、単に記録することではなく、会計データを活用して会社の未来を予測することです。近い将来、企業が行っている経済的取引を記録するという仕事はなくなるとも言われています。従来紙や「Excel」などで行われていた経理の仕事をシステム化することで、経理書類をデジタルデータとして効率よく一括管理できるようになったり、入力内容履歴を確認できるようにしたりできるようになっています。
人工知能(AI)の開発が進めば、現在は人間が会計ソフトを使って行っている仕訳・転記・試算表の作成という業務については、AIが自動で行ってくれるようになる未来がもうそこまで来ているとも言われています。
決算書を監査する公認会計士も、AIを活用して監査を行えるようにする技術の開発はすでに進められています。AIは公認会計士にとって代わる存在というよりも、それを活用することにより監査業務をより効率的かつ効果的にするツールです。特に、企業規模が拡大を続ける一方において、今後、人口減少社会となることが確実視されている日本において、AIは労働力を補完する重要な存在になっていくと考えられます。
たとえば、取引先に対する支払いにクレジットカードを使用した場合には、クレジットカードと会計システムを連携させることによって、取引相手や金額・支払内容に応じて自動で仕入の仕訳が入力されるようになっています。つまり、主要簿と補助簿の入力が同時にしかも自動で行うことができるようになっているのです。
したがって、経理部の仕事は、もうすぐAIにとって変わられると考えられているのです。現在でも、会計情報に限らず、様々な機械がインターネットに繋げられるようになりました。インターネットと機械がつながることによって、これまでは把握することができなかった様々な情報がデータとして活用できるようになっています。
工場のデータも店舗のデータもネット上のマーケティングデータも在庫のデータも物流のデータも文房具の使用量も、あなたの身体状態もなにもかもすべてインターネットに繋がって、データとして活用される未来がもうすぐそこまで来ていると言っても過言ではありません。
今後は、IoT(モノのインターネット化)がさらに加速して、ビジネスを行ううえで発生した様々な取引について、リアルタイムで会計システムと連携することができるようになります。今から20年も経てば、会計システムへの基本的な入力作業はなくなっているかも知れません。従来重要視されていた経理部の仕事は、すでに無くなる可能性が現実のものとなりつつあります。
したがって、今、経理部に求められていることは正確に経済活動を記録することではありません。むしろ、会計情報を始めとするデータを活用して未来をできるだけ正確に予測することです。記録した会計情報を活用すれば、より具体的で効果のある企業の戦略立案に役立てたりと、将来を予測することに役立てることができるようになります。「会社の将来を予測する」ことこそが、現代の経理部にとっても最も重要な業務なのです。
これまでの経理部には、会社の業務の中でも、経理業務は経営判断にも使われる金銭関係の書類作成など重要な役割を果たしてきましたが、現代の経理部には、データを活用して会社の将来を予測することが期待されています。
経理という仕事は、過去の集計を延々と続けるだけの仕事内容から、未来を予測するという仕事内容へとアップデートされていきます。つまり、経理の仕事は、過去から解放されて未来に向けて自由になるのです。だから、「経理の仕事がつまらない」と感じているのなら、過去の情報を延々と集計するという仕事を続けているからです。
経理として働く人々も単なる集計事務作業ではなく、将来の事業計画を練っているときのほうが楽しいのではないでしょうか?会社の成長のために何が必要であるかを会計情報を使って予測していく。そして、その予測に応じて企業戦略を考え、経営資源を配分する。これは、これまでは経営者が行ってきたことです。しかし、これからの経理部は、従来経営者が直感的に行ってきた意思決定を、データを使った科学的な意思決定に変えることができます。
つまり、経理部には、常に先進的な取組みを吸収し、企業の「競争優位性」に繋がる、価値ある情報をどれだけスピーディーにマネジメントに提供できるかが問われているのです。数字や情報に裏打ちされた自分なりのビジネスの将来性を語れる経営者の参謀役となれるような人材こそが、今後企業に求められています。
今後の経理部には、経営者の側近として企業の未来を予測する能力が求められます。
したがって、今後経理で働く人材は、経営戦略の策定に役立つ財務分析力を身につけなければなりません。すでに説明したように、近い将来、経理はより経営者に近い業務、つまり経営戦略を立てるための財務面の将来予測などが求められるようになります。現金管理や預金管理、月次決算など、財務・税務会計の処理を行う仕事というイメージが、経理の仕事には根強くあります。
しかし、これからの経理に求められるのは、会計に関する深い知識や簿記という技術を操るテクニックだけではなく、会計情報を活用するシステムを使いこなす力と経営者とともに、ビジネスをマネジメントしていく力です。こうしたことを磨いていくことこそが、これからの経理には求められるのです。
企業において意思決定を行う経営者に対して、様々な外部要因、内部要因を総合的に分析し、予測データとして算出して提示する。経営者の意思決定を経理が示唆することによって、将来の見通しが数値的に予測可能な範囲に収まることに大きな意味があります。
経理がこれまでのように事後報告を行うという「過去の数値」を報告することの意味が徐々に薄れていっているのであれば、未来の予測を経営者やマネジャーに説明すれば、その数値は、未来を予測するためのデータとして活用されるようになるはずです。社内の会計情報にとどまらず、市場、取引先などから定量的あるいは定性的な情報を集めて分析することで、会社の将来に対する自分なりの考えを持ち、事業へ直接貢献していくことが経理人材には求められます。
不確定な未来をデータを使って「可視化」することによって、その未来像を会社全体で共有できるように、経理が企業が進むべきロードマップを描いていくこと、そこに今後の経理の役割があると考えられます。将来の予測値を算出するスペシャリストとして、経理人材は、「過去の数値」ではなく「未来の数値」と向き合って、企業にひとつの方向性を示す存在になっていかなければならないのです。
そのためには、様々な情報と数字を頭に入れながら時流を読み、自分の経験と価値観で事業の将来性とこれからのビジネスを語れるスキルとマインドセットが必要となります。これまでは経営者だけに求められていたスキルとマインドセットが経理人材にも求められる未来がもうすぐそこまでやってきているのです。
これまで、経理人材には、会社が過去に行った経済的取引を記録する能力が求められてきました。記録するための技術が簿記であったことから、簿記の資格をもっている経理人材こそが求められていたと言えます。
しかし、これからの経理人材には、過去を記録するためのスキルが高いだけではなく、様々なデータを分析して企業の将来像を描くことのできる、経営者の参謀役が求められていると言えます。技術の発達によって、今後どんどん仕訳や転記といった業務は機械にとって替わられていきます。
したがって、今後の経理人材は仕訳や転記といった簿記の力を磨くのではなく、経営を分析できる能力が必要です。こうした変化は、経理の仕事が無くなるといって悲観する向きもあります。しかし、この変化は、単なるルーチンワークだった経理の仕事を、未来に開かれたクリエイティブな仕事に変化させます。
だから今後、経理の仕事はつまらなくなるというより、むしろ創造的で革新的な魅力ある仕事へと変化していくのです。そのようなマインドセットがある経理人材こそが、今後経理で働く人に求められています。