今後の少子化高齢化を見据えた場合、人材の確保において重要視されているのが「企業内保育所」です。今回は、企業内保育所のうち、企業主導型保育事業について、立ち上げまでに必要なステップを順を追って解説していきます。
企業内保育所の開設までには、
・企業の経営層
・施設の利用者となる従業員
・地方自治体や地域の関係機関
・地域住民
・児童育成協会
など、社内外の多くの関係者などに確認を取り、調整しながら進めていく必要があります。
手続き内容によっては思わぬ時間を要する場合がありますので、開設に至るまでのスケジュール管理は大変重要となります。
ある程度余裕をもったスケジュールとしておくことは大前提です。
まず、考えたいのはどのように企業内保育所を設置するかです。設置タイプは以下の3つがあります。それぞれの設置方法の特色を踏まえて、自社に合った設置方法を検討しましょう。
自社の従業員だけでは必要な人数を確保するのが難しい場合は(2)(3)の方式で共同利用先を募る方法もあります。
共同利用する企業も保育所を使うことができるだけでなく、それぞれの企業において、人事採用や地域貢献ののPRもできるメリットがあります。
企業が単独で施設を設置・利用するものです。
単独で設置するため、利用者はその企業の従業員がメインとなります。
1つまたは複数の企業が設置した施設を複数の企業が共同で利用するものです。
例えば同じ地域の会社で共同利用できれば、拠出金を分担することができます。
保育事業者が設置した施設を、1つまたは複数の企業が共同で利用するものです。
保育所の運営については、自社で自主運営する方法と、外部に委託する方法があります。
設置者が直接運営を行う方式です。保育施設の運営コストを抑えられることと、保育方針を自社の状況に合わせて柔軟に調整できるというメリットがあります。
今後保育事業にも乗り出したい企業についてはおすすめの方式です。保育士などの専門人材を確保する必要もあります。
保育事業者に対し運営委託をお願いする方式です。保育のノウハウを持たない企業でも、保育所を開設するために必要な保育事業者を活用できます。また、保育所運営に関わる業務負担を減らすことができるメリットがあります。
保育所開設については、国から認可保育施設と同等の助成を受ける施設として、保育施設の設置・運営基準が認可保育所に準じて設けられています。それに加えて、所在地の都道府県や市町村の保育所所管部署の自治体による基準があります。自治体の担当者には早めに相談し、必要な手続きや調整事項を確認しましょう。
保育所の設置基準に応じて、要件を満たす設置場所を確保する必要があります。
自社内に保育所を設けられる場合は、さほど問題にはなりませんが、駅前や社員の住まいに近い場所に用意する場合は、近隣住民の皆様への説明会なども必要に応じて実施する必要があります。
保育所の開設に向けた具体的な準備については以下のようなものがあります。
施設整備に関する法令/施設運営に関する法令等を踏まえ、余裕をもって各地方自治体の担当部署(建築所管部署、消防署、保健所等)に問い合わせ、手続きを進めていきましょう。
運営を外部に任せる、自社運営いずれにしても、開設準備の段階から余裕を持って選定・人材確保を進めることが望ましいです。
外部業者を選定する場合は、自社の考えに合致し、適正な運営ができる事業者を選ぶことで、円滑な運営をおこなうことができます。
自社運営で行う場合は、採用だけでなく研修なども必要です。
また、万一の事故などの発生に備え、マニュアルを整備したり、地方自治体、児童育成協会への監査等への対応を十分におこなうことができるように、体制を整備しておきましょう。
他の保育施設の状況や提供するサービス内容を確認した上で、企業内での福利厚生としてどれくらいの利用料にするかを検討します。
保育施設の整備にかかった費用(整備費)の助成と、保育施設の開設後の運営にかかった費用(運営費)の助成を受けることができます。
地方自治体によっては、保育所開設によって固定資産税や都市計画税などの優遇が受けられる場合がありますので確認しましょう。
消費税に関しては、消費税及び地方消費税控除額について、児童育成協会への報告が必要です。