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わずか10ヶ月で会計士試験を突破! アスリートが活躍する社会を目指す異色の経営者

HUPRO 編集部
わずか10ヶ月で会計士試験を突破! アスリートが活躍する社会を目指す異色の経営者

小中高とスポーツに打ち込み、スポーツ推薦で大学に入学した姫野省吾先生。競技引退後は、一般事業会社を経て10カ月で会計士にスピード合格を果たしました。その後、監査法人に勤務し、自分の会計事務所を開業しました。現在は事業会社の経営者としても活躍する姫野先生にHUPRO編集部がお話を聞いてきました。

アスリートとして活躍した青春時代

―学生時代は本格的なアスリートとして活躍していたと伺いました。どのような学生生活を過ごされたのでしょうか。

バトミントンが盛んな地域だったこともあり、友達の誘いもあって10歳からバトミントンを始めました。それでも周りに比べると遅いほうで、中には小学校一年生から始めていた子もいるような環境でした。このような環境で育ったため、自分もメキメキと実力をつけていきました。

そのため、高校生になる際は、京都府で最も強い高校に入学し、インターハイやアジア大会にも出場できました。大学もスポーツ推薦で入学し、インカレにも出場しました。そういう感じで、学生時代はバトミントン漬けでした。

そこからどのような経緯で公認会計士を目指されることになったのでしょう

―そこからどのような経緯で公認会計士を目指されることになったのでしょう。
これは自己管理の問題でもあるのですが、現役時代から、膝や腰のケガに悩まされていましたし、バトミントンは長くできないなと思ったとき、改めて周囲の学生との差に気づいたんです。

他の学生は、就職活動の準備をしていたり、ビジネスに役立つ知識を身につけていたりしていて、社会人の知性という面で、大きく水を開けられていると感じました。そこをカバーするためには、誰にも有無を言わせない資格が必要だと単純に思ったのですが、その中で公認会計士を選んだのは、日本最難関の資格であり、かつ、会社の仕組み・ビジネスの形を知れるのが面白そうだったからです。

地元で社会人としてのスタート

―大学を卒業してからはどのように過ごされていたのでしょうか。

ずっとバトミントン漬けの学生生活だったため、まったく就職活動をしていませんでした。大学卒業後は、地元に戻って半年ほどバトミントンのコーチをしたり、不安定な生活を送っていました。

そんなとき、ずっと一緒にバトミントンをやっていた仲間の縁で地元の企業に就職しました。通信建設業の会社で、最初は土木部で働き半年ほどその仕事をやったあと、経理部に異動しました。ちょうど「会計士をやってみたい」と思っていたので、この機会に何かの縁を感じました。

こちらの企業では経理を約2年半経験しました。この期間に、建設業専門の簿記資格を取ることはありましたが、日商簿記を取得することはありませんでした。

勤務先は全社員が50名ほど、うち経理部は3人という規模の会社だったので、バックオフィス的な仕事も全般的にやっていました。一般的な入力業務はもちろん、決算整理や減価償却資産の管理、財務の支払業務、個別原価計算など、管理会計的な仕事も含め、たくさん業務を経験させていただきましたね。

―そこから何故公認会計士を目指すことにしたのでしょうか?
入社して2年ほど経ち、会計士を志すことを強く意識しました。親会社の監査関連で、会計士とコミュニケーションを取る機会もあり、そこで多種多様な会社を訪問し、ビジネスの仕組みを知れる会計士の仕事の魅力を身近に感じ、自分も会計士の道にいきたいと思うようになりました。

「やるなら、一番難しい資格に挑戦したい!」仕事を辞めて、勉強に打ち込まなければ、この資格は合格できないだろうと思い会社を辞めました。その後は、TACに通い、経験者プランを受講して受験生生活が始まりました。

公認会計士を目指し猛勉強

―十カ月の勉強で公認会計士に合格されたと聞きました。どのような秘訣があるのでしょうか。

試験勉強は一年限りと自分の中での期限を決めていました。最初に、覚えなければいけないテキストなどの量を見たときに、これは何年もやれない、そう直感的に感じました。

秘訣といえるかどうかは分かりませんが、与えられたテキストや問題集、テスト問題など、すべて三回やりましたね。そうすると、どれだけやればいいかという目標を立てられるんです。

私の場合、2008年9月に会社を辞め、10月からはTACに通い始めました。当時は短答式試験が年に一度しかなく、それが翌年の5月。ということは、短答式試験までに三回やるためには、どれだけの分量をやらなければいけないかということが数字で把握できます。たとえば、テキストが100ページあったら、三回やれば300ページ。それを試験までの日数で割ると、一日分のノルマが出ます。それを表にして、一日ごとに色を塗って潰していくようにしました

私自身、計画を立てて、それ通りに実行することが苦手ではなく、むしろやらなければならない量を可視化して、色を塗り潰していくのに達成感を得ていました。

加えて、この方法だと、早く終わらせばその分、早く勉強から解放されます。一日何時間勉強すると決める人もいますが、やる内容よりもやる量が重要だと思います。時間で区切ると、単に座っているだけということにもなってしまいますよね。でも、ここまでやると決めて勉強すると、だらだらする時間が少なくなります。
あとは、これだけやると決めると同時に、他のことをやらないということも決めました。

―どういうことでしょう?

たとえば、Aという専門学校に通っていても、Bという別の学校の講義がいい、先生の教え方が上手いと聞くと、不安に感じてB校の講義を受けたくなります。そうなると、与えられたテキストや参考書だけでなく、やらなければならないトータルの量が増えていって、結果としてすべてやることができない状況に陥っていくのです。

私の場合、与えられたものを三回やることと、そのほかのことはやらないということを決めて受験勉強に取り組みました。合格したとき、スクールの合格体験記にこのことを書いたら掲載してくれました(笑)。

受験生時代に最も辛かったことはなんでしょうか?

―受験生時代に最も辛かったことはなんでしょうか?
やっぱり、精神状態を保つことですかね。幸い私はバトミントンができる環境が身近にあったので、気分転換にバトミントンをしたり、教えたりしていたことがリフレッシュに繋がりました。

― 会計士資格を取得してから変わったことはなんでしょうか?
相手が会計士として話を聞いてくれるようになったことです。あとは、友達は私が受かると思っていなかったらしく、大変驚かれました。笑

監査法人勤務を経て独立

―見事試験に合格してからは、どちらに就職しましたか?
東陽監査法人に勤務しました。当時はリーマンショックもあって経済界自体も大変な状況にあり、その影響を会計士も受けていたことから、就職には苦労しましたね。2009年、10年、11年頃は就職難の時期だったため、公認会計士の試験に合格しても監査法人に行けず、一般企業に就職した人もいました。

―監査法人で在籍期間と担当業務を教えてください。
監査法人では常勤で5年ほど勤めました。その頃担当していた業務は上場企業や、これから上場を目指す会社、学校法人などの会計監査と、その他コンサルティングにあたる業務をしていました。業種はIT系や商社が多かったですね。あと得意な業種では、自分が元々働いていた建設系の会社は、業務の中身は理解していると思っています。

特に私は経理の経験があったことも役立ちました。経理としての実務経験や業界知識があると、ビジネスモデルへの理解度も速くなります。ビジネスモデルを理解しておかないと、どういうところで会計の筋が発生して、どういうところで間違いが起きやすいかということが見つけられません。

監査法人で在籍期間と担当業務を教えてください

―監査法人に勤務されていたときの苦労があれば教えてください。
苦労といえば、監査であっても相手と上手くコミュニケーションを取らなければならないと改めて思いました。

会計監査というと、すぐに資料を出してくれるというイメージかもしれませんが、実際にはクライアント側では通常業務を行う傍ら、監査対応をしなければならないため、クライアントに負荷がかかります。

監査法人が来て監査をするということになると、すでに終わった業務の売上を証明する資料をほしいとか、チェックしたいと要求することになりますが、上手くコミュニケーションをとらないと、円滑に監査を進めることができません。

特に社会人経験がなく、大学を卒業して試験に合格していきなり監査法人で働くということになると、会社でどういった業務が行われていて、どのタイミングでコミュニケーションとるべきかなどのさじ加減がわからず、上手くコミュニケーション取れていないケースもよく見受けます

その点、経理職を経験したことや、監査を受ける側の立場を経験していたことは非常に役立っていました。さらには、ずっとスポーツをやっていたので、体育会系的なコミュニケーションがプラスに働いたということも大きな要素かもしれません。

―監査法人で5年程度勤務した後、独立・起業されます。これはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

ひとつは、直接クライアントのためになることをしたいという思いですね。監査法人というのは、クライアントのためということもありますが、第三者のためにその会社を監査するのが仕事です。それだけでなく、自分が生み出したもので、クライアントや世の中の役に立ちたいという気持ちがありました。あとは、会計士の資格を活かして、さらに色々なことにチャレンジしたいと考えました。

―独立してから得意業務に変化がありましたか?
一般企業の経理を経験し、監査法人での勤務経験、そして独立開業というフローを経たので、具体性のある提案ができるようになりました。理想だけを語るのでなく、詳細を詰めて会社の業務を構築していくのが好きだと感じました。

―現在行っている事業アイデアについて、発想元は何かありましたか?
自分の会計事務所を開いてクライアントを持つと、税務会計をやったり、会計で言う簿記の処理をして決算書を作ったりという一連の流れがあるのですが、その数字と、実際に会社を経営している現場の人たちの見ている数字の間に乖離があるのではと感じることがありました

決算書はリアルタイムの数字ではない上、お金が入っていなくても売り上げが立つこともあるなど、お金の流れと実際の業績といわれる利益の部分が必ずしもイコールにならない。独立して仕事をしていく中で、そういうことが疑問に感じるようになりました。

そこで、そういったギャップを埋めるサービスがあれば便利だなと思ったんです。
資金繰りを管理して、そこから会計の記帳に派生するというスタンスを提唱していきたい・広めていきたいという考えからスタートし、知り合いのシステムエンジニアに当たったり、構想を練ったりして、2020年の7月に「milestone」というサービスをリリースしました。

今後のサービス展開について教えてください

―今後のサービス展開について教えてください。
非常にニッチなサービスですが、リリース後は予想していたよりも登録していただいています。今後は、どこで使えばいいかとか、会計ソフトとの関係はどうするのかなど、運用の方法も合わせて提案するため、セミナーなども開催していきたいと思っています。

セミナー情報
日時:11月28日(土)13時〜14時半頃
場所:コワーキングスペースBreath(武蔵野市中町1-24-8)
講師:姫野省吾(株式会社HIFAS代表、公認会計士)
セミナー内容の概要
• 経営者に必要な会計スキルとは
• 会社のお金の管理の重要性
• お金の管理の仕方
• 簿記より資金繰り
• 会計事務所との付き合い方
• ファイナンスという視点で考える
など

詳しいセミナーはこちら:【ビジネス】これから起業する方に知って欲しい会計の話

―最後になりますが、五年後、十年後に実現したいことについて教えてください。
まずは今やっているmilestoneの事業を伸ばして、経営に対する会計の活用方法の考え方を変えていきたいと思っています。ただ簿記をやればいいというわけではなく、資金繰りを含めた、これまでとは違う形のやり方を提唱し・新たな会計の文化を形成していきたいです。

また、アスリート経験者もビジネスで力を発揮できるということを表現していきたいです。今ではセカンドキャリア、デュアルキャリアなどと言われるようになりましたが、それでも昔スポーツをしていましたと言ったら、体力を活かして営業というような考え方がまだまだ主流です。

そうではなく、元アスリートでも高度なビジネススキルを身につけられるということを理解してほしい。実際に、現在起業した会社では、社員のほとんどが元アスリートで、バリバリと働いています。

アスリート時代にの培ったタスク管理や戦略立てを活かして、元アスリートがビジネスキャリア形成していける、そのモデル企業となりたいと思っています。

―本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。

今回インタビューさせて頂いた姫野省吾さんが代表を務める
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この記事を書いたライター

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