「法人税法」は、難関試験といわれる税理士試験の中でも、計算項目や暗記の量も膨大なため、1年目で合格するのは至難の業といわれている科目です。しかし、税理士試験の税法科目9つのうち、「法人税法」と「所得税法」はどちらかを必ず選択しないといけない必須科目であり、実務にも直結するため受験者数も多い科目です。本記事では「法人税法」と「所得税法」のうち「法人税法」を選択しようか迷っている方向けに、かかる勉強時間や難易度、勉強法などについて解説します。
相続税法は、税理士試験における選択必須科目のうちの一つです。
税理士試験には、簿記論・財務諸表論・所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の11科目があります。税理士になるためには、11科目のうち5科目の合格が必要です。
簿記論と財務諸表論の2科目が必須科目で、法人税法と所得税法が選択必須科目、残りの相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の7科目が選択科目になります。
このうち、「法人税法」か「所得税法」はいずれかを選択する必要があります。
学習範囲が広いにも関わらず、実務担当者が多い法人税法は、税法科目の中でも人気の科目。税法9科目の内では、消費税についで受験者数が多いのが特徴です。
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法人税法は実務で使う人が中心に受験するため、難易度は他の科目に比べて高いといわれています。試験は、理論・計算がいずれも50点で合計100点満点で構成されています。
暗記だけでなく計算の力も必要で、事例形式で法人税法や租税特別措置法の各種規定の説明や、個別理論や複数の規定の応用理論、さらには法人の各事業年度の所得の計算について所得金額・法人税額まで計算させる総合問題など、実務のケーススタディのような問題が多く出題されます。
計算・理論それぞれが50点、合計100点満点のうち、60%以上が合格ラインといわれていますが、受験者の上位10~15%が合格者となる試験なので、点数よりも受験者集団の偏差値に左右されます。
税法科目の2科目は、税理士試験の中でも最後まで残る人が多く、結果的に他の科目をクリアしてきた人たちが母集団なので、必然的にレベルが高くなるため、難易度も上がるのです。
過去の法人税法の合格率は以下の通りです。
2020年 | 16.1% |
2019年 | 14.7% |
2018年 | 11.6% |
2017年 | 12.1% |
2016年 | 11.6% |
2015年 | 11.1% |
2014年 | 12.4% |
2018年度 第68回試験においては、必須2科目のうち所得税法1,704名に対して法人税4,681名という受験者数で、あきらかに法人税法の受験者数が多いのがわかります。その合格率は11~12%前後。2018年は11.6%と合格率だけを見ると、他の科目と同様となっています。
法人税法の勉強時間の目安は600時間です。
税理士試験の税法科目にかかる時間は、概算で以下の通りといわれています。
・法人税法、所得税法:600時間
・相続税:450時間
・消費税:300時間
・固定資産税:250時間
・事業税、住民税:200時間
・酒税、国税徴収法:150時間
必修である法人税法・所得税法は群を抜いて多く、600時間となっています。
これは、半分が授業、そして半分は自習時間というカウントですが、これはあくまで、合格ラインとされる60%を取るための本当に最短の時間数。実際の合格者の勉強時間の平均は1,400~1,600時間ほどとも言われています。
つまり、表に出ている勉強時間で合格する人はごく少数ということです。仮に試験前日まで300日あったとしても、これから法人税法に合格するためには、1日最低でも2時間、合格者平均で5時間前後の勉強をこなさないといけないという計算になります。
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法人税法の試験は、受験者数が多い分競争率も高いので、その分精度の高い回答が求められます。概要を理解したうえで演習問題や過去問などの実践的な問題演習を繰り返し、知識の定着をはかることが必要です。理論は100題ありますが、A・Bランクだけでも70~75題ほどあります。暗記のボリュームが多いので、暗記が苦手な方は不向きです。
個別問題では基本に忠実な計算と集計のスピードも求められますので、苦手な計算項目は、ケアレスミスに気を付けつつ、何度も繰り替えすといった地道な勉強が求められます。計算問題は個々に見ると難易度はそこまで高くはありません。しかし、計算パターンの量が多いので、記憶の定着を図るために何度も繰り返す必要があります。
法人税法を含めた税法科目は、会計科目に比べると圧倒的に難易度が高く、独学で勉強する人はほとんどいないのが現状です。
勉強時間が多くかかるため、その間のモチベーション維持も考えると、予備校もしくは通信講座、最近ではオンラインのネットスクールなどを検討するのがおすすめです。問題の間違えたところや疑問点そのままにせず、講師に質問できるのも予備校やスクールの良いところです。法人税法は単なる暗記ではなく、内容を理解しながら覚えていかないと勉強が行き詰ってしまいます。
以上、税理士試験の法人税法について、試験概要から試験の難易度、勉強時間の目安を中心に解説しました。税理士試験は年に一度しかありません。科目合格制で、合格した科目は一生ものですが、だからといって、いたずらに年数を費やしてよいわけはありません。学習のボリュームが大きな法人税法は、着実に努力を重ねていくことがポイントです。