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労務担当者の年間スケジュールとミスなく進めるためのポイント

社会保険労務士 田中かな
労務担当者の年間スケジュールとミスなく進めるためのポイント

労務担当者の業務は毎月の定例業務以外にも、年に1回、または不定期に発生する業務があります。業務が立て込んで焦ってしまわないためにも、あらかじめ年間スケジュールを確認しておくと安心です。今回は労務担当者の年間スケジュールと重要業務のポイント、注意点について解説していきます。

労務のスケジュールは3つに分けて考える

労務担当者のスケジュールは以下の3つに分けて考えます。

・毎月決まった時期に発生するもの
・毎年決まった時期に発生するもの
・不定期に発生するもの

労務担当者は毎月の定例業務と並行して、不定期業務に対応します。そして毎年決まった時期に発生するイベント業務をおこないます。とくに毎月の定例業務と毎年の業務が重なると多忙になりますので、イベント業務に関しては時間があるときに少しずつ準備を進めておくことをおすすめします。

次項からはそれぞれの業務にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

毎月決まった時期に発生する定例業務

毎月発生する定例業務は次のようなものがあります。

-給与計算
-勤怠管理
-有給休暇管理
-前月分の社会保険料納付 など

中でも従業員の給与計算は「ミスがなくて当たり前」という前提があり、「従業員のお金に関すること」なので、非常に細かい神経を使う業務だといえます。毎月の業務は慣れてくると負担を感じにくくなりますが、そのようなときこそミスが発生しやすいため気を引き締めることが大切です。

毎年決まった時期に発生する業務

毎年決まった時期に発生するイベント業務は次のようなものがあります。

・新入社員の社会保険手続き、給与処理(4月)
・住民税額の変更を給与に反映(6月)
・労働保険料申告書の提出、労働保険料の納付(6~7月)
・賞与計算、賞与支払届の提出(6月、12月など)
・算定基礎届提出(7月)
・高齢者・障害者雇用状況報告書の提出(7月)
・被扶養者状況再確認リストの提出(10月~11月)
・年末調整業務(11月~12月)
・源泉徴収票の作成・発行(12月)
・法定調書、給与支払報告書の提出(1月) 
・退社手続き、退職金の計算(3月)など

また、以下はどの時期に発生するのかは企業ごとに異なるものの、毎年決まった時期に発生する業務です。

・健康診断の実施、報告書の提出
・36協定の更新、締結
・定期昇給を反映
・有給休暇の算定、付与 など

3月~7月が労務担当者の踏ん張りどころ

3月~7月は年1回の重要業務が集中する時期です。3月~4月は入社・退社や異動の従業員が多い時期なので、社会保険の手続き、給与処理、退職金計算などの処理が集中します。5月上旬頃までは忙しくなるでしょう。それが終わると賞与計算や賞与支払届の提出、算定基礎届の提出と、夏頃までは立て続けにイベント業務があります。

とくにこの時期はミスが発生する、不定期業務を見落とすといったことが起こりがちになります。必要業務は頭の中に入れておくのではなくパソコン等に入力して視覚化し、進捗状況をチームで共有するなどして漏れなく進めるようにしましょう。

3月~7月が労務担当者の踏ん張りどころ

年末調整業務は少しずつ準備を

3月~7月までの繁忙期が終わると、4月の次に入社や異動が多い10月に少し業務が立て込むものの、年末調整業務までは大きなイベントがありません。

ただし年末調整業務は従業員規模によっては膨大な量になるため、時間があるときに少しずつ準備を進めておきましょう。10月頃になると各保険会社から生命保険料控除証明書が届き始めるなど従業員側の提出書類がそろってきます。その頃から年末調整が近いことを社内にアナウンスしておき、はやめの書類提出を促すのがおすすめです。提出された書類を前倒しで確認しておけば、12月には余裕をもって年末調整業務を進められます。

不定期に発生する業務

最後に、不定期に発生する業務です。

・結婚や住所変更など従業員の身上異動の給与への反映(扶養手当、通勤手当等)
・産休・育休関係の手続き
・傷病手当金
・労災関係
・月額変更届提出

そのほか、労務トラブルへの対応や法改正の情報収集など突発的に発生する業務があります。また3月・4月以外にも従業員の入社・退社、異動がありますのでその都度処理をおこないます。

忘れがちな住民税特別徴収の手続きを

4月入社の従業員(新人)の場合は、そもそも初めての給与なので初年度の住民税徴収がない人が多く(前年の所得に課税されるため)、手続きも不要です。

一方で、忘れがちなのが転職組や学生時代にアルバイトを多くしていた人の住民税特別徴収の手続きです。普通徴収から特別徴収への切り替え手続きをしないと給与から天引きされず従業員が自分で納付に行かないといけなくなり、迷惑をかけてしまいます。

とはいえ従業員が自ら「住民税が普通徴収だったので特別徴収への切り替えをしてください」と言ってくるケースは稀です。労務担当者のほうから適宜呼びかけをおこないましょう。とくに入社した従業員が少ない月ほど見落とす可能性がありますので注意が必要です。

月額変更届提出

従業員の1年間(9月~翌年8月)の社会保険料は、4月~6月の標準報酬月額をもとに、7月に提出する算定基礎届によって決定します(定時決定)。しかし年の途中に昇給などによる固定賃金の変動が発生した従業員については、定時決定を待たずに標準報酬月額の改定手続きをしなければなりません。これを随時改定といい、月額変更届の提出によっておこないます。不定期に発生する業務のため見落としがちですが、月額変更届の提出と、給与計算時の保険料改定を忘れないようにしましょう。

まとめ

労務担当者の業務は、毎月の定例業務だけでなくイベント的に発生する毎年の業務、不定期業務もあります。日々の業務に忙殺されているとつい見落としてしまう場合がありますので、あらかじめ年間スケジュールを確認しておき、漏れがないように進めましょう。

この記事を書いたライター

求人関連企業の経理部門に在籍中、社会保険労務士資格を取得。その後、会計事務所や総合病院での労務担当を経験し、現在はフリーランスのライター・校正者として活動中。ジャンルは労働問題を得意とする。
カテゴリ:コラム・学び

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