1972年に男女雇用機会均等法が施行され、すでに半世紀が経とうとしています。職種においての向き不向きは、性別によって左右されるものではありません。
しかし「総務職」は、「女性の仕事」のイメージが根強く残っている職種の一つです。男性が総務職に転職もしくは異動するためには、どうすれば良いでしょうか。
この記事を読んでいる方には想像ができないかもしれませんが、高度成長期からバブル期にかけて、企業の総務部というのは男性の職種でした。出世頭が移動する部署だった時代があり、上場企業で総務出身の社長というのも珍しくなかったのです。
総務という仕事は、「雑用」というイメージがありますが、例えば、オフィス開設や廃止など、全社を俯瞰して物事を見ることが問われる業務も多くあります。
また、社内における様々な調整業務を行います。そのため、結果的に社内事情にも精通し、立てるべきところを立てることができる、人間関係のバランスに優れた人がいないと回らないのです。
これは、大規模なオフィスを持っていたり、株主総会や全社会議などのイベント開催規模が大きい大企業だけの話ではありません。中小企業であれば、総務だけでなく人事や経理なども一緒の部門になってバックオフィス全般を行っていることも多いのでなおさらです。
現在においても、その流れをくんでいて総務部が出世ルートとなっている会社もあります。
また、一般社員の仕事はやはり雑用的なことが多いのですが、総務課長や総務部長といった管理職は男性が配属されていることがほとんどです。
しかし、総務部は昔の「出世ルート」とは異なる理由で人気となっています。それはなぜでしょうか。
これは、企業の人事制度にも問題があるのですが、バブル以前に採用した人員が上に詰まっているため、出世ルートが閉ざされた企業が多いという問題があります。
就職氷河期世代はそもそも採用が控えられていたので人数が少ないのですが、ポストがたくさんあるはずの大企業でも、彼らが40代となっても管理職にもなれずに足踏みしている状況は珍しくありません。
バブル世代は2020年現在では50代以上にあたります。彼らの定年が70歳まで延長になるとすると、あと20年ほど上が詰まっているという状況になります。
世情も厳しく、営業に出たからといっても成績が上がるとは限りません。逆にモンスタークレーマーや、営業数字の追い込みに疲れてしまうくらいならと、客先のフロントに立つ営業よりも、総務部をはじめとしたバックオフィス業務の方が人気になるのは当然の流れです。
さらに、バックオフィスでは専門性を磨くこともできますし、どの企業にもある業務が多いので、転職も実はしやすい傾向にあります。
つまり、「楽」で「つぶしがきく」という見方をされているため、結果的に総務部の人気が高まっているのです。
人気のあるポジションとなると、異動・転職が難しくなるのは当然です。
昔は花形部署、次は雑用の部署として、そして今また人気部署として、総務部の浮き沈みには激しいものがあります。
「男で総務には簡単にはなれないんですか?」という質問をいただくこともありますが、結論から言うと「会社次第」です。
現在は男性であるというだけで、総務部への異動や転職が不利になるということはありません。男女雇用機会均等法以降、性別を限定したの求人票を企業側が提示することは禁止されているからです。
しかし、企業側が実際は女性がほしいと思っていた場合、その意思を変えることはできません。これは今まで女性側が味わっていた実情ですが、女性が多いとされる職場では男性側もこうした選別をされてしまうのも現実といえます。
それでも総務に異動・転職したい!そんな場合にチェックしたい項目を見てみましょう。
自社の総務部に異動したいとき、転職希望先の会社を見るとき、男女比をチェックしましょう。男性が多い会社、あるいは総務部でも男性の割合が半々以上であれば、異動・採用の可能性は高いです。
バックオフィスは「経験者優位」です。派遣社員でも総務部門の仕事をやっておいたことがあれば強力な武器になります。
デスクワーク以外でのイベント設営などをやっていたりすると、力仕事などで求められることもあるでしょう。
女性が多いとされる総務部門でも、管理職は男性であることが多いです。今後変わるかもしれませんが……
いずれにしても、マネジメント経験があれば、総務の仕事が未経験でも総務課長・総務部長として採用を狙うこともできなくもありません。
部長や役員に提出する資料や、全社向けに文書を出したりするので、Word、Excel、PowerPointは必須です。社内の部門とやりとりするのはメールが主になりますので、ビジネスメールなどの文言もしっかりと書けることは当たり前。
もちろん、性でも総務に異動・転職は可能です。しかし、今まで営業部門寄りの仕事をしていた人ほど、仕事のカルチャーのギャップに戸惑いがあるかもしれません。
どんな仕事でもそうですが、職場になじむことさえできれば、仕事はやりがいのある事も多いです。しかし、職場になじめなかったら離席一つにも気を遣うのがバックオフィス業務。イメージだけではなく、異動・転職前に情報収集をしてから臨むようにしましょう。