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労務違反のアウトソーシングとは?労務代行のメリット・デメリットを解説します!

社会保険労務士 西岡秀泰
労務違反のアウトソーシングとは?労務代行のメリット・デメリットを解説します!

新型コロナウイルス感染症によるテレワークの浸透で、社内業務の見直しが進んでいます。社員が出社しないとできないと思われていた業務も、在宅勤務やアウトソーシングが可能であることが判明するなど、これまでの働き方の常識が覆りつつあります。

そんな中、企業の働き方改革の一環として労務事務の代行への関心が高まっています。今回の記事では、労務の代行可能な業務や代行のメリット・デメリットについて解説します。

労務の代行とは

労務の代行とは、社内の労務事務をアウトソーシングすることです。事務の効率化や社内の人材不足の補強など、企業によって導入目的や活用方法は異なります。

ただし、代行させる労務業務は、どの企業も事務手続きなどが中心です。企業経営にかかわる業務は企業ごとに異なるので代行が難しい一方、定型の事務作業はどこもほぼ同じなのでアウトソーシングしやすいからです。代行可能な主な労務業務は下記の通りです。

● 給与計算
● 勤怠管理
● 労働保険・社会保険業務
● 納税業務、年末調整業務
● 採用業務(募集・応募受付・書類選考など)

給与計算

給与計算には、税金や社会保険料の控除、残業代の計算などがあります。また、給与計算だけではなく、依頼先によっては給与明細の作成や給与振込の代行まで可能です。

給与計算と同時に「勤怠管理」や「納税業務・年末調整業務」の代行を依頼する方法もあります。給与計算とは関連性の高い業務なので業務の効率化が図れます。

労働保険・社会保険業務

労働保険・社会保険の主な業務内容は下記の通りです。

● 従業員が入社・退社したとき、労働保険・社会保険の加入・脱退手続き
● 労働保険の年度更新手続き(年1回の労働保険料納付の手続き)
● 社会保険の算定基礎届(年1回の標準報酬月額改定の手続き)
● 労働災害保険や健康保険の保険金請求業務 など

これらの業務は、①専門知識が必要、②特定の時期に業務が集中、③手続き書類の提出先が労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所の3か所、という特長があります。

採用業務(募集・応募受付・書類選考など)

テレワークの浸透で採用業務の代行も広がっています。代行を依頼するのは主に面接前の求人や応募受付などですが、一次面接をオンライン面接で代行するサービスもあります。

労務代行のメリット

労務代行が広がりを見せるのは、下記の通りさまざまなメリットが見込めるからです。

事務コストを削減できる

1つ目のメリットは、事務コストを削減できることです。従業員1人の人件費は年間で数百万必要になるため、労務担当者の数を減らせれば人件費を下げることができます。

また、ベテランの労務担当者が退職して後任の育成が必要な場合、労務代行の活用によって人材育成の時間と手間も削減できます。

人材を有効活用できる

2つめのメリットは、人材を有効活用できることです。労務担当者をより生産性の高い業務に転換すれば、企業全体の収益アップにもつながります。

特に社長や企業幹部が労務事務をしている場合には、会社の中核業務に専念する方が会社の利益になることも考えられます。

季節的な業務の繁閑を調整できる

3つ目のメリットは、季節的な業務の繁閑を調整できることです。労務事務は特定の期間に集中する傾向があります。新入社員が入社する4月、労働保険の年度更新手続きと社会保険の算定基礎届を提出する7月、年末調整を行う12月などです。

労務代行によって、季節的な業務の集中を緩和できます。また、忙しい時期に備えて多めに従業員を配置する必要もありません。

季節的な業務の繁閑を調整できる

労務代行のデメリット

労務代行には大きなメリットがある反面、下記のようなデメリットもあります。

労務事務ができる人材がいなくなる

1つ目のデメリットは、労務事務ができる人材がいなくなることです。労務担当者が実務から離れることで、労務事務についての知識やノウハウが失われてしまうリスクがあります。

事業規模が大きくなり労務事務の専任者を置きたいと思ったとき、適当な人材が育っていない可能性も大きいです。また、社内の業務手順を見直すときに、労務業務に詳しい人がいないとういう事態も考えられます。

情報漏洩の危険性がある

2つ目のデメリットは、情報漏洩の危険性があることです。

社外の代行サービスに、従業員とその家族の情報や会社の給与規定(または評価基準など)を提供すると、個人情報・企業情報の漏洩リスクが発生します。代行依頼先の情報管理体制には細心の注意が必要です。

一定の労務業務は残る

3つ目のデメリットは、一定の労務業務は残ることです。

たとえば、給与計算の代行を利用する場合、一般的に税金や社会保険料の控除は代行サービスがしてくれますが、残業代は会社で計算が必要だったり別料金になることもあります。また、社会保険の手続きも従業員からの書類取り付けは会社が行うことが多いでしょう。

労務代行の依頼先

労務代行の主な依頼先は下記の通りですが、それぞれ得意分野があるので、依頼内容によってどのサービスを利用するか検討が必要です。

● 税理士
● 社会保険労務士
● 上記資格のない労務代行サービス

税理士の代行業務

税理士が代行する主な業務は、月々の給与計算や年末調整業務です。税務書類の作成や納税手続き、税務相談など、税理士にしか代行できない業務もあります。

社会保険労務士の代行業務

社会保険労務士が代行する主な業務は、労働保険、社会保険全般にわたる業務で社会保険労務士の独占業務でもあります。また、給与計算の代行も可能です。

労務代行サービスの代行業務

税理士や社会保険労務士の資格がない労務代行サービスは、両資格者の独占業務以外の労務代行を行います。給与の計算や労働保険・社会保険の手続書類作成を行うシステムを提供するクラウドサービスが増えています。

まとめ

労務の代行とは、社内の労務事務をアウトソーシングすることで、主な代行業務は、給与計算や労働保険・社会保険業務です。

労務代行には、事務コストの削減や人材の有効活用などのメリットがある反面、社内に労務事務に精通した人材がいなくなったり情報漏洩のリスクなど、デメリットもあります。

労務代行の依頼先は、税理士や社会保険労務士、労務代行サービスなどがありますが、それぞれ得意分野が異なりますので、依頼する代行業務に適した依頼先を選びましょう。

この記事を書いたライター

生命保険会社に25年勤務の後、西岡社会保険労務士事務所を開設。保有資格は社会保険労務士資格、ファイナンシャルプランナー2級、生損保各種販売資格。得意分野は人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金。
カテゴリ:コラム・学び

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