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労務監査前に労働環境は決まっている!?労務監査チェックリストとは?

HUPRO 編集部
労務監査前に労働環境は決まっている!?労務監査チェックリストとは?

労務監査を実施する前にチェックリストを活用し、可能な限り漏れのない状態で労務監査を受けるべきです。しかし、あまりにも膨大な量をチェックリスト化するとチェックリストを作ることが仕事となってしまい、手段の目的化現象が起こってしまいます。あくまで本来リソースを注ぐべきことはチェックリストを作成することではなく、チェックリストを活用して労働環境を形成することです。

よって、今回は労務監査を受ける前に重要論点となるチェックポイントにフォーカスをあて解説していきます。

労働条件通知書

まずは、労働契約締結時に労働者に交付されていることと、会社で保管でき、かつ、いつでも見られる状態となっているかが重要です。雇用契約書は労働基準法第15条に根拠規定が置かれていますが、定めをしなければならない項目は以下のとおりです。

必ず明示しなければならないもの

・契約期間に関すること
・期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
・就業場所、従事する業務に関すること
・始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
・賃⾦の決定⽅法、⽀払時期などに関すること
・退職に関すること(解雇の事由を含む)

定めをした場合に明示しなければならないもの

・退職手当に関すること
・賞与などに関すること
・食費、作業用品などの負担に関すること
・安全衛生に関すること
・職業訓練に関すること
・災害補償などに関すること
・表彰や制裁に関すること
・休職に関すること

法改正前は上記、労働条件通知書の交付は書面一択ではなく「受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」の利用でも可能とされています。そして、法改正後は「電気通信」にはLINEやFacebookなどのSNSも含まれると解釈されました。企業としては書面の交付よりも比較的簡易な方法で労働者とやりとりできるように改正されましたが、履歴は確実に残しておかなければなりません。

法定三帳簿

法定三帳簿とは人事台帳、賃金台帳、出勤簿を総称したものです。労務監査の際には必須となります。また、法定三帳簿は労働基準法上3年間の保存義務がありますので、労務監査以前に企業として整備しておかなければならないものです。また、企業を助ける助成金申請の際にも必要なものであり、万が一整備できていない(又は必要な項目が網羅されていない)場合は修正が必要です。

チェックポイントとしては、

・人事台帳には雇い入れ日が記載されているか
・賃金台帳には時間外、休日、深夜時間の記載があるか(管理監督者の場合は深夜時間のみ)、最低賃金を下回っている労働者はいないか
・出勤簿にはタイムカードをなどにより客観的な時間が記載されているか などはおさえておかなければなりません。

有給休暇

2019年4月1日以降は改正労働基準法により有給休暇を年10日以上付与する場合には年5日の取得が義務付けられました。そして、有給休暇の取得状況を常に把握できるようにするため、労働基準法施行規則第24条の7では、企業が「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存するよう義務付けられました。

また、実態として適正な有給休暇の運用がなされているか(例えば取得理由によって有給休暇の取得を拒んでいないか)有給休暇取得日数の管理(時効は2年間であり、残が時間単位であっても繰り越しの対象)は適正になされているかなどはチェックポイントになります。

有給休暇

36協定

企業は労働者に1日8時間、1週間で40時間を超えて働かせてはなりません。しかし、合理的な内容が記載されている就業規則が整備され、かつ「36協定」を所轄労働基準監督署に届出することで当該時間を超えて働かせても違法ではならなくなります。この36協定で記載されている有効期間は守られているか、延長時間(1日・1ヶ月・1年)が守られているかは重要なポイントです。

次に過半数代表者の選出の妥当性が挙げられます。これは民主的な手続きで行うことが求められますが、一例として信任投票であれば問題ありませんが、不信任投票での選出は適正な選出ではありません。不信任投票とは、複数の候補者に対して、相応しくない候補者に×をつけて、×が最も少なかった候補者が過半数代表者になるということです。この方法では意向が反映されたとは言い難く妥当性に欠けます。

原則として何のために選出を行うのかを労働者に明らかにして実施しなければなりません。そして、対象となる労働者とは正職員だけでなくパートやアルバイトも含まれます。言うまでもなく、実態として会社が指名した過半数代表者であるとこが発覚すると36協定の効力事態が否定されるリスクもあるので、極めて注意が必要です。

割増賃金

算出方法が適正か、単価を算出する際に必要な手当は含まれているか、割増率が適正かは重要な点です。

算出方法では、分母である平均所定労働時間の計算方法は特に閏年と通常の年、休日数が変更となる場合は要注意です。

単価の算出については、月給制の場合、以下の手当は除外することが可能です。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時の手当
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

割増率については、

・法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働 2割5分以上
・深夜労働 2割5分以上
・法定休日労働 3割5分以上
・法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働+深夜労働 5割以上
・法定休日労働+深夜労働 6割以上

まとめ

「以上」と記載してある意味として、労働基準法は「最低基準」であることから会社によっては、法を上回る基準を定めても問題ないという理解です。しかし、一度有利な取り扱いを定めてしまうと下回る改正が容易ではないことから、企業の体力と労働者へのインセンティブを総合的に鑑みて慎重に対応すべきでしょう。

この記事を書いたライター

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