税理士の収入は、税理士資格の取得の難しさや税理士になるため費用や時間と比較をすると低いと感じる人は少なくありません。
今回は、税理士の収入の実態を数値で紹介しながら、どのように収入アップを目指していけばよいか、打開策の案となるような様々な働き方について解説していきます。
税理士の年収が低いと思われている理由は、以下の4点です。
税理士資格が必要な割に一般企業との差が少ない
働き方で税理士の年収は大きく異なる
勤務先の規模で税理士の年収は大きく異なる
他の国家資格より年収が低い
税理士の平均年収を見ると、国家資格のない人と比較をすると差が少ない、他の国家資格よりも評価をされていないのではないかと感じる人は少なくありません。
税理士の年収は、日本全体の平均月額給与額と比較をすると多いものの、差が男性では約20万円、女性で約10万円と、税理士資格という国家資格を取得したにも関わらず差が少ないのではないかと思った方もいるのではないでしょうか。
税理士になるために必要な費用は少なくとも150~200万円といわれています。この内訳は税理士試験に合格するために専門スクールで学習をするための費用や受験手数料等が約125万円、税理士試験に合格し実務経験を2年経た後に税理士登録をするのに約25万円です。
これに加えて税理士試験に1回で合格せず何度も受験する場合、大学院を利用して試験免除を受けるためには更に200万円程度の費用が必要となります。
そして税理士になるために必要な費用のみならず、それにかける時間もまた金額換算をすると多額なものになります。
これらの税理士になるまでの直接的な費用、時間等の間接的な費用を税理士になってからの収入で賄うためには、税理士として働き始めてから数年かかると考えられます。
税理士の働き方は下記の4種類に分類することが出来ます。
①所属税理士 | 所属税理士とは、税理士事務所、税理士法人の補助者として税理業務等を行う税理士です。 |
②社員税理士 | 社員税理士とは、税理士法人で業務執行者として税務業務等を行う税理士です。 |
③企業内税理士 | 企業内税理士とは、一般企業の経理部門等に所属する税理士です。 |
④開業税理士 | 開業税理士とは、所属税理士、社員税理士、企業内税理士以外の税理士で、納税者から直接委託を受けて税務業務等を行う税理士です。 |
同じ会計事務所等に勤務していても、所属税理士と社員税理士では、一般的に社員税理士の方が収入を多く得る事が出来ます。
所属税理士と社員税理士では立場が大きく異なります。社員税理士は、税理士法人の社員であり、役員に該当をします。
一方で所属税理士は一般従業員に該当をします。立場の違いのみならず、社員税理士には税理士法人に対する無限連帯責任が発生します。
このようなことから、社員税理士は所属税理士と比較すると収入を多く得ることの出来る立場にあるといえます。
企業内税理士の勤務先は一般企業の経理部門等です。様々な顧客を抱える他の働き方とは異なります。企業内税理士を設置する企業というのは大手企業であることが多く、大手企業の給与水準と同様の給与や、その業界特有の福利厚生等に期待をすることが出来ます。
規模の大きい100人以上の従業員規模の会計事務所等を一般的に大手会計事務所といいます。大手会計事務所は全国に支店を持つ等幅広く展開しており、それに伴い分野での活躍、福利厚生や昇給等の社内制度の完備が期待することが出来、年収は800万円以上を期待することが出来ます。
一方で規模の一番小さい5人以下の従業員規模の会計事務所等を一般的に零細会計事務所といいます。この零細会計事務所が会計事務所等全体の9割程度を占めています。
福利厚生等の社内制度や年収にはあまり大きな期待を持つことは出来ませんが、少数精鋭だからこそ、顧客に関する事項の全てを一任されたり、濃厚な実務経験を積むことを期待することが出来ます。
他の国家資格である弁護士の男性平均月額給与額は53.16万円、女性平均月額給与額は45.94万円といわれています。医者の男性平均月額給与額は95.53万円、女性平均月給給与額は79万円といわれています。
これらの資格になるまでに必要な費用や国家資格の責任の所在は異なるものの、他の国家資格と比較をすると税理士の年収は低いといえます。
税理士の勤務実態を最新の賃金構造基本統計調査から見てみましょう。賃金構造基本統計調査は、主要産業に雇用される労働者の賃金の実態を明らかにする統計調査です。
まずは会計事務所、税理士法人等で10人超の事業所ではどのような勤務実態かご紹介致します。
①平均年齢 | 42.7歳 |
②平均勤続年数 | 11.0年 |
③残業を含む平均月額給与額 | 47.20万円 |
④残業を含まない平均月額給与額 | 42.02万円 |
⑤平均年間賞与額 | 117.15万円 |
上記のうち1,000人以上の事業所に所属する税理士の勤務実態は、下記のようになっています。
①平均年齢 | 35.8歳 |
②平均勤続年数 | 7.3年 |
③残業を含む平均月額給与額 | 55.72万円 |
④残業を含まない平均月額給与額 | 43.30万円 |
⑤平均年間賞与額 | 168.31万円 |
上記のうち100~999人の事業所に所属する税理士の勤務実態は、下記のようになっています。
①平均年齢 | 49.1歳 |
②平均勤続年数 | 13.4年 |
③残業を含む平均月額給与額 | 90.94万円 |
④残業を含まない平均月額給与額 | 80.68万円 |
⑤平均年間賞与額 | 104.73万円 |
上記のうち10~99人の事業所に所属する税理士の勤務実態は、下記のようになっています。
①平均年齢 | 44.8歳 |
②平均勤続年数 | 12.2年 |
③残業を含む平均月額給与額 | 39.86万円 |
④残業を含まない平均月額給与額 | 38.03万円 |
⑤平均年間賞与額 | 97.78万円 |
上記の平均値を規模関係無く男女別にすると、下記のようになっています。
①男性税理士平均月額給与額 | 53万円 |
②男性税理士平均賞与額 | 136万円 |
③女性税理士平均月額給与額 | 336万円 |
④女性税理士平均賞与額 | 77万円 |
日本全体の月額給与は、下記のようになっています。
①男性平均月額給与額 | 33.80万円 |
②女性平均月額給与額 | 25.10万円 |
税理士の平均月額給与額等を賃金構造基本統計調査でご紹介しましたが、ここで示されている数値はあくまでも平均値です。つまり税理士として稼ぐことの出来る上限を示しているものでは無く、この数値を大きく上回る収入を得ている税理士は沢山います。
賃金構造基本統計調査での数値が事業規模で異なるように、税理士としての働き方によって、収入は大きく変わるといえます。
所属税理士の勤務先は、BIG4と呼ばれる大手税理士法人から零細会計事務所まで、その規模や年収、特徴は様々です。
一番規模の大きいBIG4と呼ばれる税理士法人とは、PwC税理士法人、デロイトトーマツ税理士法人、KPMG税理士法人、EY税理士法人の4つをいい、世界的会計事務所のメンバーファームです1,000人近くの従業員規模であり、年収は1,000万円以上を期待することが出来ます。
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所属税理士、社員税理士、企業内税理士と異なり雇われる立場にありません。その収入には限度は無く、一方で収入の保障がされるものでもありません。平均年収は2,500万ともいわれていますが、非常に収入には幅があると考えることが出来ます。
所属税理士、社員税理士、企業内税理士が収入をアップさせるためには、転職または独立開業するという方法が考えられます。すでに独立している開業税理士が収入をアップさせるためには顧問料収入のアップを検討をすることが必要です。
転職の方法は様々ですが、『HUPRO』をはじめとする会計業界に特化したエージェントを利用することが効果的です。
会計業界に特化しているということは、それだけ提示される求人数が多く、転職先の比較検討がしやすく良い転職先が見つかりやすいといえます。そして特化しているエージェントだからこその会計業界に詳しいアドバイザーが在籍し、転職者の細かい希望採用条件を汲み取り、最適な転職を期待することが出来ます。
転職のみならず、開業をすることも税理士の収入アップのひとつの方法です。転職と違う点は収入の保証がされないことです。
開業には届出のみならず、開業場所の家賃、通信費、光熱費等、様々な費用が先行して必要となります。開業資金の準備が整い、かつそれらの費用を上回る顧問料収入が必要です。
既に税理士として経験を積み、顧客の獲得が見込むことの出来る税理士であれば、収入に上限なく希望が持てる働き方ですが、当然リスクもあるため、経験の浅い税理士などには向いていません。
上記のように税理士の収入は、税理士資格の取得の難しさと比較をすると低いと感じる人は少なくありません。
年収が全てではありませんが、中には今の環境で十分に評価されず、想定よりも低い年収で働いている人も少なくないでしょう。
特に、税理士業界は閉塞的な面があるため、自身の適正な年収がわからないという方も多いです。もし現職の年収が低いと感じる場合には、転職や開業を検討することが打開策のひとつとなります。転職についてお困りの際は、『HUPRO』をはじめとする転職エージェントに相談されてみてはいかがでしょうか。
税理士資格を生かした満足のいくライフスタイルの実現が出来るよう、自身の状況について一度考えてみることをお勧め致します。税理士の年収事情についてはこちらのコラムでも詳しくご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
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