投資には、大きく分けて2つの種類があります。それは、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチです。本記事ではそんな2つのアプローチの違いやそれぞれの利点をご紹介します。
ボトムアップアプローチとは、個別銘柄を1つずつ積み上げることで、ポートフォリオを構築するアプローチのことです。
運用会社の場合、運用会社のアナリストやファンドマネージャーが投資候補の企業のファンダメンタルズを丹念に調査、分析をします。その結果をもとに投資信託を実際に組み入れる銘柄を選択します。このように銘柄を積み上げることでファンド全体のポートフォリオを構築する方法です。
この調査の際、アナリストやファンドマネージャーは実際に投資候補の企業を訪問して、経営者や財務担当者、さらには開発担当者などと面談を行います。これを会社訪問と言います。企業の財務諸表の分析も重要な調査ですが、多くのアナリストやファンドマネージャーが、この会社訪問で得られる情報を最も重要視すると言われていて、年間で数百社訪問するファンドマネージャーもいます。
しかし、個人投資家の場合、会社訪問をすることはできません。そこで、多くの個人投資家に支持されている、ボトムアップアプローチを代表2つの投資法をご紹介します。
グロース投資は、企業の成長性が市場の平均より高いと期待できる銘柄に投資する手法です。すでに投資家が注目して高値がついている銘柄であっても、成長性があり伸びそうなら投資します。利益が右肩上がりで、将来性も期待される企業の株をタイミングよく買えば、大きな利益が見込めるからです。グロース投資は、EPSや売上高などが右肩上がりの銘柄をタイミングよく上昇トレンドの時に購入するだけなので、個人投資家でも比較的取り組みやすい投資法です。
バリュー投資は、実質的な価値は高いのに、市場からあまり注目されていないため安い評価がつけられている株を狙う投資法です。例えば、PBRやPERなどの指標をもとに放置されている割安な銘柄を買うということです。上手くバランスシートを読み取り、尚且つ市場から割安に放置されている銘柄を選びます。割安な銘柄を探すのは、地味な作業ですが、個人投資家にも取り組みやすい投資法です。
トップダウンアプローチとは、ファンドを構成する際に、最初にマクロ経済動向などの分析によって資産配分を決定します。その後、その資産配分の枠の中で組み入れる個別銘柄を決定していくアプローチのことです。
運用会社の場合、まず、世界各国の経済動向の分析、成長予想、株式市場の分析などを行います。これらの結果からどの国にファンドの資産のどれくらいを投資するべきかを決定します。次にこの範囲内で、実際に組み入れる各国の銘柄を選出することになります。
トップダウンアプローチでの代表的な投資法を、グローバル・マクロ投資と言います。
グローバル・マクロ投資は、大規模なヘッジファンドが得意とする投資法です。投資対象となっている国々の経済状況や政情、金利などの要因を総合的に判断して、ポジショウンをとります。
しかし、個人レベルでは世界のマクロ経済を分析することは難しいため、あまり個人投資家向けに紹介されることはありません。ただ、このグローバル・マクロ投資というアプローチがあることは個人投資家も知っておくべきです。
個人投資家がトップダウンアプローチから投資することは難しいでしょう。しかし、トップダウンアプローチが得意な大規模なヘッジファンドが、ポジションを公開していることは珍しくありません。その理由は、運用資金も大きいため、どちらにしても隠しきれないからです。地道に経済ニュースや著名な投資家のオピニオンなどを追っていれば、トップダウンアプローチのヒントも見つかります。
ここで得たヒントを元に、ボトムアップアプローチから決めた内容がマクロ経済動向とマッチしているかを確認することでより成果をあげることができます。
ボトムアップの視点から個別銘柄を決定するのが、個人投資家には取り組みやすい投資法です。しかし、トップダウンアプローチを無視して投資すべきではありません。大きな市場のトレンドや動向は、個別銘柄の業績などをかき消して、株価に大きな影響を与えることがあるからです。しかし、経済ニュースや著名な投資家のオピニオンなどを地道に追うことで、多くのトップダウンアプローチのヒントを見つけることができます。
ボトムアップアプローチの視点で選ばれた銘柄が、トップダウンアプローチの視点で追い風が吹いているかどうかを確認することで、よりボトムアップアプローチの投資法の精度が上がります。トップダウンアプローチを個人投資家が自力で行うことは難しいため、様々なニュースに振り回されることになり、混乱の元にもなります。そのバランスを上手くとって投資することが重要になります。