商業高校の入学をきっかけに、会計の世界に入った清水小綾さん。高校生時代に日商簿記1級を取得して、大学生時代に税理士試験のうち4科目に合格。そして、税理士法人勤務を経て、残りの1科目に合格し26歳で税理士となりました。今回は税理士を目指したきっかけや、今後のビジョンなどHUPRO編集部がお話を聞いてきました。
【税理士 清水小綾さんのご経歴】
2010年 | 日商簿記1級検定合格 |
2015年 | 立教大学経営学部卒業 |
2015年 | アクタス税理士法人入社 |
2017年 | 税理士試験 官報合格 |
2018年 | 加藤正英税理士事務所入社 |
─商業高校に入学されたきっかけを教えてください。
もともと、高校卒業後は事業会社で経理の仕事に就きたいと考えていました。そこで、両親から、経理の仕事に就くには有利になるのではないかと簿記の勉強を勧められたため、商業高校の入学を決意しました。高校入学当初は、簿記1級の取得や税理士を目指すという思いはなく、漠然と将来は経理の仕事ができたらいいなと考えていました。
─どのような高校生時代を送られましたか?
簿記の勉強とアルバイトが中心の生活を送っていました。コンビニエンスストアやスーパーのレジ業務、プールの監視員など様々なアルバイトをしてきました。もちろん、簿記の勉強にも力を注いでいました。部活動で簿記部に所属していたため、学校の授業が終わってからも、部活で簿記の勉強に励んでいました。
また、私が通っていた商業高校は、資格取得を目指す受験生向けの会計専門学校と提携していたため、簿記1級を取得したい学生に対して無償で授業を開いてくれました。その機会を利用して、授業に参加し知識を身に付けました。その後、簿記部の顧問の先生や、同じく簿記1級取得を目指す友人と切磋琢磨しながら一生懸命簿記の勉強を頑張って、なんとか1級を取得することができました。
─簿記1級は、かなりハードルの高い試験ですが、勉強をする際に気をつけていたことなどありますか?
簿記はやはり“反復”だと思っています。高校時代の簿記の先生が「簿記はスポーツだ」とおっしゃっていたのですが、簿記は暗記ではなく反復です。そこで、簿記を勉強する時は、ストイックに同じ問題を何回も何回も繰り返し解いていました。
最初は、頭では理解しているのに、いざ問題演習するとなるとなかなか解けない状態が続いて辛かったですが、めげずに同じ問題に取り組み続けて、パターンに慣れてくるとだんだんと出来るようになりました。それでも簿記の勉強をしていてつまずいた時は、解説をよく読むようにしました。その上で、解説を読んでも分からない場合は、その単元の少し前に戻って、一からやり直すようにしました。
─先ほど、高校入学時点では、高校卒業後はそのまま経理の仕事に就きたいと思っていた、とおっしゃっていましたが、どうして大学に進学する道を選ばれたのですか?
簿記1級を取得した際に、両親が大学進学を勧めてくれたからです。それまでは、大学進学を考えてはいませんでしたが、簿記の勉強に取り組むうちに、だんだんと他の勉強もしてみたいと思い、大学進学を決意しました。大学は、通っていた高校の指定校推薦枠のあった、立教大学の経営学部に決めました。英語の勉強が苦手で大変な思いもしましたが、色んな授業を受けることが出来てとても楽しかったです。
─大学2年生に税理士試験の受験勉強を始められましたが、他の選択肢ではなく、なぜ税理士試験を受けようと思いましたか?
大学2年生の頃に簿記の資格を活かしたアルバイトをしたいと考え、大学の求人サイトで見つけた税理士事務所で働くことにしました。
税理士事務所でのアルバイトを始めた時は、特に税理士を目指す気持ちはありませんでした。けれども、実際に事務所で働いて、税理士の先生がバリバリと仕事をしている姿を間近で見ているうちに、税理士に憧れるようになり、それがきっかけで私も税理士を目指すことにしました。事務所でアルバイトをしていた当時は、事務所に難しそうな本がずらりと並んでいる様子がかっこいいなと思いましたね。
また、税理士事務所でのアルバイトでは、会計ソフトへの入力業務が多かったです。座学の場合の簿記は、繰り返し反復することでカバーすることが出来ましたが、実務では一つの仕訳をするのも最初は大変に感じましたし、知っている知識だけで対応するのは難しかったです。そのため、わからない事は調べながら業務を行っていました。
─高校時代に簿記1級を取得されましたが、税理士科目にある簿記論と財務諸表論の勉強をされる際に、簿記試験とのギャップはありましたか?
根本的には大元が簿記なのであまり違いはありませんが、税理士試験の特有の論点や出題傾向はあったので、そのあたりは大学に通いながら、ダブルスクールで通っていた専門学校の先生に質問しながら気をつけて勉強しました。税理士試験の形式に慣れるためには、税理士試験の過去問を解いたり、通っていた専門学校の答案練習を使って、完璧に仕上げるようにしていました。
─税理士試験合格までの長い受験勉強の間は、どのようにモチベーションを保っていましたか?
大学で「ストレスマネジメント」という授業を履修しました。税理士試験のための問題を解いているときに、上手く解くことができない自分にイライラしてしまうことがありました。でもそんな時も、大学のストレスマネジメントの授業で習った内容を実践してみることで、平常心を保つ方法を身に付けることが出来ました。
勉強以外でも、精神面などで工夫できることはないか考えていましたね。精神的に辛い事は、周囲の友人との何気ない会話の中にある場合もありました。友人にご飯や遊びに誘われても、税理士試験の受験勉強を理由に断らなければいけなかったのはきつかったですね。でも、メリハリをつけて、ときには旅行に行って気分転換もしていました。
─就活はどのようにされましたか?
大学卒業間際に気になっていた税理士法人に応募しました。その税理士法人を選んだ理由は、ホームページに掲載されていた事務所の写真が明るくて働きやすそうだったからです(笑)。大学では周りの友達が民間企業の就活の準備をしている時に、私は税理士資格取得に向けての勉強しかしていなかったので、将来に対して不安に思うことはありました。けれど、良い事務所に巡り合えたことと、自分を信じ抜いたおかげで無事に就職することが出来ました。
─事業会社の経理ではなく、税理士法人に応募されたのは、やはり税理士になりたいという気持ちが大きかったからなのですね。
そうですね。税理士の資格を取って税理士として働きたかったので税理士法人一択でした。
─税理士法人で働きながら、受験勉強をどのように進めていましたか?
朝早く起きて、出社前に1時間くらい勉強をしていました。夜は仕事で疲れているので朝に集中して取り組みました。あとは土日にまとめて勉強するようにしていました。さらに、通勤時間や隙間時間も勉強するように心がけていましたね。
─税理士試験の勉強を進めていくなかで、受験する選択科目はどのように選びましたか?
最初に簿記論と財務諸表論と消費税法を受験して、そのあと事業税と法人税法を受けて計5科目取得しました。
各科目を選択する際の判断基準としては、消費税法は実務で必要になると知り選択しました。当時、税理士法人に勤めていた時に法人に対して仕事がしたいと考えて、法人税法を選びました。そして、事業税は法人税法と相性が良いと専門学校で聞いたので受験しました。
─税法は毎年法改正していますが、気をつけていることはありますか?
改正された内容を、自分自身で確認し、その後大手の税理士法人がまとめているサイトをいくつか見て、整理するようにしています。また社内の勉強会で情報共有をすることで理解を深めるように努めています。過去の情報と混同しないためにも、問題に直面した時はその都度、該当箇所を調べ直すようにしています。あくまでも法律はアップデートされるものなので、自分が覚えている知識だけを用いて取り組むのではなく、いつでも最新の情報をチェックするようにしています。
─一度ご転職をされていますが、ご転職を決めた理由はありますか?
実は、税理士法人で勤めていた時は忙しかったため、満足に試験勉強に充てる時間がとれずに残り1科目の法人税法に合格できませんでした。会計業界から一旦離れようと思ったのですが、色々悩んだ末、結果的には退職して約1年間受験勉強に専念することにしました。そして、試験合格後に今の事務所に入社しました。
─お仕事で感じるやりがいは何ですか?
やはりお客様に感謝された時ですね。例えば融資の相談を受けた際に、自分の仕事を通じてお客様が必要としていた融資が下りるとやりがいを感じます。
最近ではコロナウイルスの影響で経営状況が悪化している会社が多いですが、助成金や給付金の情報を収集してお客様にお伝えした時にとても感謝されたので、やりがいを感じました。
─税理士として将来独立は考えているのですか?
状況によって変わると思いますが、今は5年後ぐらいを目処に独立したいと考えています。現在勤めている税理士事務所では、珍しいと思うのですが、お客様と直接契約を結ぶことを推進しています。そこで、直接受任の数を増やして、独立する準備をしたいと考えています。
─現時点で独立に向けてのハードルはありますか?
やはり最初は、お客様の確保が大変だと思います。現在は直接契約するお客様を増やそうとしていますが、増やそうと思っても急に増えるものではないので、少しずつお客様を増やしています。ある程度お客様がつかないと、独立しても収入が安定しないので、お客様を増やすことが今の課題だと感じています。
─お仕事関係なく将来の夢を教えていただきたいです。
これからは、コロナウイルスの影響でリモートワークへの移行が推奨されたこともあり、事務所という場所に関係なく働けるようになると考えています。そこで、わたしは旅行が好きなので、旅をしながら税理士業務をしたいと考えています。現行の税理士法では事務所を持つには実際に事業所を構える必要がありますが、その項目がいつか緩和されたら、自分の好きないろいろな場所で仕事をしたいです。
─今後活躍する税理士とは、どんな税理士だと考えますか?
やはり新しいことにどんどん挑戦する税理士だと思います。というのも、時代はすぐに変化しますので、新しい製品やサービスを導入して時代にしっかりと合わせて、変化に柔軟に対応できることが鍵になると考えています。
─最後に税理士受験生に向けて一言お願いします!
税理士試験の勉強をしていると、途中で投げ出してしまいたくなったり、挫折することが何度もあると思います。そんなときは自分を責めたり無理をするのではなく、税理士を目指そうと決意した頃の初心を思い出して、少し休みながらでも勉強を続けてもらいたいです。税理士試験は、諦めなければ絶対に合格できる試験なので、ぜひ自分のペースで頑張ってください!
ー本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。
今回インタビューさせて頂いた清水 小綾さんが所属する
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