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私有車を業務使用する時の手当についてわかりやすく解説!

社会保険労務士 蓑田真吾
私有車を業務使用する時の手当についてわかりやすく解説!

企業によっては従業員が私有車を用いて業務の遂行にあたる場合もあります。その場合、ガソリン代や減価償却費、自動車保険など一定の費用が無視できなくなります。仮に労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、労働基準法 第89条第1項第5号において、就業規則に定めなければならないとなっています。今回は、私有車を業務使用する場合の労務管理にフォーカスして解説していきます。

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私有車とは?

私有車とは、従業員が所有する車両や会社以外の機関や個人から貸与されている車両を想定します。企業によっては、私有車を業務使用するにあたって、一定の制約を設ける場合があります。例えばあまりにも派手な車(赤いスポーツカーなど)や高級外車で取引先に伺うとなると、取引先の担当者から違和感を持たれる場合が想定されます。よって、画一的に認めるという運用は適切ではありません

業務使用にあたっての会社と個人の責任

次に、業務使用にあたっての会社と個人の責任について解説していきます。
例えば50人規模の中小企業で、20人の営業部門に対し、1人1台の社用車を与えたとするとそれだけで(車種などにもよりますが)1千万円以上の費用が発生してしまいます。そこで、私有車に「白羽の矢」をたてる企業もあります。

しかし、車両を用いて業務を行うとなると、無保険のままということは適切ではありません。例え私有車を業務で使用するとしても、プライバシーにも配慮せざるを得ない為に会社で監視し続けることはできません。そうなると一定期間は個人にその責任(保険事故発生防止など)を委ねることとなります。そこで、保険会社との規約などは慎重に取り交わし、どのような場合に保険が適用となるのかも含めて各々の従業員への周知は徹底することが求められます

業務使用にあたっての会社と個人の責任

会社から支給する手当について

会社から支給する手当については、業務上使用するという性質上、一定の手当を支給することが適切です。基本給や割増賃金と異なり、就業規則等に全く記載がなければ法律上必ず支給しなければならないものではありません。しかし、従業員の納得感や長期雇用のためのインセンティブとして、一定額を手当として支給する企業が多いと言えます。

具体的には、ガソリン代減価償却費が挙げられます。私有車で通勤するとなると基本的にはガソリン代が大きく異なる地方から出勤するようなケースは少ないでしょう。よって、就業規則等(またはマイカー規則でも可能)に例えばキロ数百円を支給するとして、周知を図っておくことが求められます。

次に減価償却費です。これはガソリン代以上に車によって振れ幅が大きい部分となります。しかし、それぞれの車に応じて金額を設定するとなると従業員が増えた場合に人事部門の管理が行き届かなくなります。よって、一定額を設定することで対応すべきでしょう。

手当を創設したことによる他の注意点

手当を創設したことに伴う変更として、まずは、就業規則の変更です。就業規則は常時10人以上の労働者を雇い入れえる事業所は作成および届出しなければなりませんが、変更した場合も届出が必要です。しかし、その前に労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者への意見聴取が必要となり、その後従業員へ変更後の周知が必要です。尚、労働者の過半数を代表する者への意見聴取は同意を得ることまでは不要とされていますが、実務上一定の説明は必要です。

また、手当を支払う旨を就業規則に明記した場合は、就業規則の最低基準効が働き、就業規則へ記載した内容が最低基準となり、それを下回る取り扱いができなくなります。よって、労働者を慮りインセンティブ付与の為であってもあまりにも高い手当を設定してしまうと、その後の運用が苦しくなってくるということです。

その場合、就業規則を変更すればよいのではないか?との意見もあります。しかし、その場合は就業規則の不利益変更と評価されないように変更の目的(例えば経営難によりやむを得ず雇用を守るための手当額の減額)、変更の合理性(目的と同趣旨)、開始時期、猶予期間の設定、代替措置の有無、同業他社の動向など総合的に考慮し決定をする必要があり、ハードルが高いと言えます。

最後に

近年では「社用車」が盗難されその後事故が発生してしまい、その責任が会社にあるか否かが最高裁まで争われた判例があります。結果的に会社が社用車保管の内規を整備していた点を重視されました。その内容は、以下のとおりです。

・キーの保管場所は食堂にすること
・駐車時はドアを施錠し、キーを保管場所に戻すこと

などの規程が整備されており、盗難防止策は講じていると判断され、会社側の過失が否定されました。結論として、規定が会社を救うこととなったということです。

たかが規定と侮ることなく、手当額の設定や管理方法などを適切に管理していくことで、会社を守ることにもなるという事例でした。

本判例は社用車であることから、私有車と同じ背景とまでは言えませんが、一部参考になる判例としてご紹介いたしました。ぜひお役立ていただけると幸いです。

カテゴリ:コラム・学び

この記事を書いたライター

社会保険労務士 蓑田真吾
大学卒業後、一般企業を経て都内の医療機関に就職。医師、看護師をはじめ、多職種の労務管理に従事しながら一念発起し社会保険労務士の資格を取得。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等

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