社外に業務を委託する際には、業務委託契約を発注側である会社と、受注側である会社や個人と締結します。その業務委託契約は準委任契約と請負契約とに分類がされ、それぞれ責任の所在や契約解除等において違いがあります。
今回はこのような準委任契約と請負契約の違いについて解説していきます。
準委任契約とは、業務を委託する際の契約形態の一つで、仕事の完成は目的とせず業務の遂行そのものを委託する契約です。
一方で請負契約とは、業務を委託する際の契約形態の一つであることには変わりありませんが、仕事の完成を目的とし、受注者は納期までに委託された業務を完遂して成果を発注者に引き渡す義務を負う契約です。
このように契約内容は違いがあります。
契約内容に違いがあることから、瑕疵担保責任が準委任契約と請負契約では違いがあります。瑕疵担保責任とは、引き渡した成果物について欠陥が発見された場合に、その成果物の作成者が責任を負うものです。
準委任契約は業務の遂行そのものを委託する契約であることから、受注者が瑕疵担保責任を負うことは定められていません。
一方で請負契約は成果物の完成を目的とした契約であることから、成果物に欠陥がある場合には、発注者は瑕疵修補請求権や損害賠償請求を有し、さらに、欠陥の程度により契約の解除をすることができます。
例えば社内使用システムを業務委託し、そのシステムにバグが発見された場合は、準委任契約ではそのバグを修正する義務はありませんが、請負契約ではバグの修正や損害賠償を行う義務があります。
契約内容に違いがあることから、報酬の支払いが準委任契約と請負契約では違いがあります。
準委任契約では業務の遂行そのものを委託する契約であることから、成果物が受注者の期待に応えられていないものであっても、業務の遂行が適切に行われているものであれば報酬を支払う必要があります。
一方で請負契約は成果物の完成を目的とした契約であることから、成果物が受注者の期待に応えるものであると判断され納品がされたものに対して報酬を支払う必要があります。
例えば会社のホームページ作成を業務委託し、受注者の一方的な事情でホームページが未完成となってしまった場合は、準委任契約では一方的な事情であってもそれまでの業務の遂行に対して報酬を支払う必要がありますが、請負契約では成果物がないことから報酬を支払う必要はありません。
契約内容に違いがあることから、どちらも契約を途中で解除することが出来るものの、契約解除の方法が準委任契約と請負契約では違いがあります。
準委任契約では業務の遂行そのものを委託する契約であることから、発注者及び受注者がいつでも契約解除を申し出ることが出来ます。
一方で請負契約は成果物の完成を目的とした契約であることから、発注者が契約解除を申し出る場合には、完成物に対する報酬を放棄することになるため、受注者に損害を賠償する必要があります。
例えば上記の例の未完成のホームページについて、その事由が発注者にある場合は、準委任契約ではそれまでの業務遂行に対して報酬を支払うため損害賠償をする必要がありませんが、請負契約では成果物がないことから報酬を支払わない代わりに損害賠償が必要となります。
契約内容に違いがあることから、善管注意義務が準委任契約と請負契約では違いがあります。善管注意義務とは、業務の受注者の職業や専門家としての能力、社会的地位等から通常期待される注意義務のことです。
準委任契約では業務の遂行そのものを委託する契約であることから、その遂行において善管注意義務があります。
一方で請負契約は成果物の完成を目的とした契約であることから、その遂行において善管注意義務はありません。善管注意義務はありませんが、瑕疵担保責任があることから、結果としての成果物には責任を負う必要があります。
例えば税理士に申告書作成の業務委託を行った場合、準委任契約では税理士として当然持っていると考えられる知識、借方と貸方の判断を正確に行うといった通常期待される業務について、間違いが無いように注意をしなくてはならず、その注意は義務となります。請負契約ではその注意は義務ではありませんが、成果物としての申告書に対して瑕疵担保責任があります。
契約内容に違いがあることから、再委託の可否が準委任契約と請負契約では違いがあります。
準委任契約では業務の遂行そのものを委託する契約であることから、その遂行をその人に任せることを契約としているため、第三者に業務を委託することは出来ません。
一方で請負契約は成果物の完成を目的とした契約であることから、その遂行の方法は問わないため、第三者に業務を委託することが出来ます。
例えばインタビュー記事作成の業務委託を行った場合、準委任契約ではその準委任契約を締結した本人がインタビュー及び記事作成を行う必要がありますが、請負契約ではインタビュー及び記事作成を行う人を他人に任せ、納品のみを本人が行う方法等が認められます。
ひとくちに「業務委託契約」といってもその内容は3つに分かれます。
法律行為が絡む「委任契約」は専門家への委託なのでわかりやすいのですが、混同されがちなのが準委任契約と請負契約です。
そして、発注側も契約の違いを理解しておらず、誤った契約を締結した結果、訴訟になる場合もあります。
この場合は、契約書があっても、実際の業務内容に照らし合わせて判決がおります。
例えば、以下のような実例があります。
コンピュータープログラムの製作を目的とする契約において、完成はしなかったがソフトウェア業者から報酬請求がなされた事案
→判決:契約上、ソフトウェア業者はプログラムの完成義務を負っており、本件契約は請負契約と解される。よって、プログラムを作成できなかったソフトウェア業者は代金請求権を有しない
清掃会社とビル管理会社とのビル清掃契約において、契約期間満了前にビル管理会社が契約を解除した事案
→判決:契約の継続的な性質に照らせば、本件契約は請負契約ではなく準委任契約と解され、委任の規定が適用される。
委任契約では、委任者側はいつでも契約を解除できることから、清掃会社による損害賠償請求は認められない
上記のように準委任契約と請負契約には違いがあります。業務委託を発注、受注する際にはこれらに留意をし、互いに不利益にならないよう契約内容はしっかりと確認をするようにしましょう。