士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

通勤手当と旅費交通費はどう違う?社会保険料や所得税の取り扱い方法に関して

HUPRO 編集部
通勤手当と旅費交通費はどう違う?社会保険料や所得税の取り扱い方法に関して

会社が従業員に支給をする交通費には、通勤手当と旅費交通費の2種類があります。同じ交通費であり、また会計上の勘定科目は旅費交通費と同一のものですが、社会保険料や所得税の観点からこの二つは明確に区分をしなくてはなりません。
今回は、上記の観点から通勤手当と旅費交通費の違いについて解説していきます。

通勤手当と旅費交通費の違い

通勤手当と旅費交通費は、

・交通手段に要した費用について会社が負担をするという点
・会計上の勘定科目はどちらも旅費交通費という同一科目を使用する点

以上2点においてちがいはありません。
しかし、この二つは明確に区分するべきであり、通勤手当と旅費交通費は下記のような違いがあります。

通勤手当はその名の通り、従業員が出社等の通勤に要する金銭を会社が支給するものをいいます。自宅から通常の勤務場所までの交通費として一定金額を、多くの会社が月々の給与に上乗せをする方法で支給しています。
通勤手当の支給の有無は法律で定められておらず、また通勤手当の支給方法や支給時期等も会社の判断によるものとなっています。性質としては福利厚生としての費用になります。

一方で旅費交通費は、従業員が会社から出向先等に出向くための移動交通費をいいます。日々行き先や交通手段が異なること等の理由により、一定金額の支給とは限りません。性質としては会社が負担すべき費用を従業員が立替払いをし、その精算を行うものとしての費用になります。

社会保険料と通勤手当

従業員の支払うべき社会保険料は、例年4、5、6月の給与等の平均値を基礎とした金額を会社が届けることによって、向こう一年の金額が決定します。この会社が行う届け出を算定基礎届といいます。
この社会保険料を決定するために使用をする給与等の平均値には、通勤手当が含まれます。給与と通勤手当を含む各種手当の金額が大きい人ほど、支払うべき社会保険料が多くなる仕組みです。

社会保険料と通勤手当

 

社会保険料と旅費交通費

従業員の支払うべき社会保険料は、上記のような方法で算定がされますが、通勤手当に該当をしない旅費交通費は、この算定に影響を与えません。
つまり、同じような交通費であっても旅費交通費に該当をした方が、従業員の社会保険料負担額、会社の社会保険料負担額に影響を与えないため、有利な取り扱いとなります。

所得税と通勤手当

従業員の支払うべき所得税は、給与や手当の合計額から、社会保険料等を差し引いた金額を基礎とした金額によって決定します。
手当は所得税の課税対象となりますが、通勤手当については非課税限度額が定められています。つまり国税庁が定めた範囲内の通勤手当の支給額には、所得税を支払わなくて良いということです。

1ヶ月あたりの非課税限度額は下記のように定められています。また1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額とは、一般に公開されている電車賃、有料道路の通行料と同額であるもの、領収証等で確認の出来る実費等をさします。

①交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当
 最高限度額を100,000円とする、1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額
②自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当
・通勤距離が片道55㎞以上である場合…31,600円
・通勤距離が片道45㎞以上55㎞未満である場合…28,000円
・通勤距離が片道35㎞以上45㎞未満である場合…24,400円
・通勤距離が片道25㎞以上35㎞未満である場合…18,700円
・通勤距離が片道15㎞以上25㎞未満である場合…12,900円
・通勤距離が片道10㎞以上15㎞未満である場合…7,100円
・通勤距離が片道2㎞以上10㎞未満である場合…4,200円
・通勤距離が片道2㎞未満である場合…非課税限度額なし、全額課税
③交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
 最高限度額を100,000円とする、1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額
④交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券
 最高限度額を100,000円とする、1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額と②の合計額

所得税と旅費交通費

従業員の支払うべき所得税は、上記のような方法で算定がされ、非課税限度額を超える分の支給がある場合には、給与と同様に所得税の課税対象となります。しかし、旅費交通費は所得税の算定に影響を与えません。
つまり、同じような交通費であっても旅費交通費に該当をした方が、従業員の所得税額に影響を与えないため、有利な取り扱いとなります

まとめ

社会保険料、所得税の観点から通勤手当と旅費交通費の違いについて解説しました。どちらに該当するかは会社にとって金銭的に、事務的に有利な方を恣意的に選択出来るものでは無く、その費用がどのような性質を持つのかによって明確に判断をする必要があります。
また通勤手当に該当をするものについては会社の判断のみならず、社会保険料や所得税の負担が増える可能性があることから、その支給には従業員への説明も要します。
交通費の従業員への支給の際には、是非ご参考になさってください。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事