2020年5月の申請受付開始以降、すでに多数の事業者が申請している持続化給付金ですが、10万円の特別定額給付金などとは違い、法人税や所得税の“課税対象”となることはご存知でしょうか?そこで今回は、持続化給付金を受け取った場合の税務処理について詳しく解説していきます。
持続化給付金とは、2020年5月より申請受付を開始した制度です。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した中小法人や個人事業主が給付の対象となります。給付金額は、法人の場合には最大200万円、個人事業主の場合には最大100万円となります。
また6月29日より給付対象者が拡大され、2020年に開業した方や給与所得や雑所得で確定申告しているフリーランスについても申請手続きを行えるようになりました。
「持続化給付金を受給できるか」という側面についつい気が向いてしまいがちですが、実際に事業者が給付金を受け取った場合の税務処理については正しく理解されているでしょうか。
「コロナ禍で売上が落ち込んだ事業者を救済するために支給される給付金なのだから、受け取ったとしても税金はかからないに違いない」と決めつけてしまっていると、申告漏れという結果に繋がりかねません。
そのような思い込みによって、税務上行うべき処理を失念してしまうことがないよう、以下では持続化給付金を受け取った場合の税務上の取扱いについて、税目別に課税・不課税の確認をしていきます。
まずは中小法人が受け取った場合の法人税と、個人事業主が受け取った場合の所得税については、結論としてはどちらも課税となります。ただし、持続化給付金を収益計上してもなお損失が発生している場合には、法人税や所得税が発生することはありませんので、その場合には結果的に課税されません。
いずれにしても持続化給付金の支給を受けた事業者は、法人税や所得税の計算上、受け取った給付金の額を忘れずに収益計上して税務申告する必要がありますので、漏れの無いようご注意ください。
法人・個人を問わず、消費税の課税事業者にとっては、受け取った給付金が消費税の課税対象かどうかも気になるところですが、持続化給付金については商品の販売やサービスの対価として支払われるものではないことから、消費税は不課税となります。
したがって「持続化給付金を受け取ったことによって消費税の納税額が増加してしまった」ということは起こり得ませんので、その点はご安心ください。
それでは、なぜ持続化給付金は法人税や所得税の課税対象とされているのでしょうか?
特別定額給付金などと同様に、「持続化給付金についても不課税とすべきではないか」という声が上がっていたのも事実です。
しかし以下でご説明する持続化給付金を非課税とすると、税の公平性が失われるという大方の意見の下、最終的に課税対象とすることが決定されました。
持続化給付金は、コロナ禍により減少した事業収入の補填として給付されるものです。
観光業や飲食業のように、新型コロナウイルスによる事業収入への打撃は不可抗力である場合も多いかと思いますが、一方で事業者の営業努力や創意工夫によってコロナ禍による減収を食い止めている事業者も少なからずいらっしゃることでしょう。
もし仮に、持続化給付金を受け取った場合に法人税や所得税が非課税だとしたら、営業努力により減収分をカバーした事業者よりも、不課税である給付金を受け取った事業者の方が納めるべき法人税や所得税が少なく済んでしまうという課税上の不公平が生じてしまうのです。
したがって、給付金を受け取った事業者とそうでない事業者の税務上の不公平感を解消するために、持続化給付金については課税処理が義務付けられているのです。
課税処理が必要となると、税務上収益として計上すべきタイミングについても注意を払わなくてはなりません。
持続化給付金の収益計上時期は、原則交付決定の通知を受けた日となります。
給付金申請を行い、交付が決定した場合、事務局から『持続化給付金の振込みのお知らせ』というハガキが送付されますので、実務上はその通知のハガキが手元に届いた日が収益計上すべき日ということになります。
もし申請してから実際に入金される日までの間に事業年度の末日を迎えた場合には、通知ハガキが期末までに届いていれば未収計上が必要となりますので、期末をまたいで申請手続きを行う場合には収益計上時期のチェックをお忘れないようご注意ください。
今回は持続化給付金を受け取った場合の税務処理についてご説明させて頂きました。申請手続きばかりに焦点が当たり、実際に給付金が入金されたときの税務処理については意識が疎かになりがちです。持続化給付金については消費税は不課税ですが、法人税や所得税については収益計上を行う必要がありますので、申告漏れとならないようくれぐれもお気をつけください。