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【介護保険法改正】2018年度の主なポイントは?自己負担額の増加も

社会保険労務士 田中かな
【介護保険法改正】2018年度の主なポイントは?自己負担額の増加も

私たちの生活に大きくかかわる介護保険法は、2000年に制定されてから3年に1度の改正を経て今日にいたります。直近の改正は2018年度にあり、現役並み所得の利用者の負担割合が増加するなど、大きな改正と呼べるものでした。今回は2018年度の介護保険法の主なポイントについて解説していきます。

介護保険制度の概要

介護保険制度とは、市町村が保険者(制度の運営主体)の社会保険制度です。40歳以上の人に加入義務があり、介護が必要となったときには費用の1~3割を負担することで介護サービスが受けられます。

日本では従来、介護を必要とする高齢者を老人福祉・老人医療制度によって支えてきました。しかし高齢化の進展にともない介護ニーズが増大し、一方では核家族化の進行などにより家庭内での介護の担い手が減少するなど、従来の制度で対応することが困難となっていました。こうした状況を受け、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして施行されたのが介護保険法です。2000年4月1日に施行され、すでに20年が経過しました。

介護保険法は将来にわたり制度を維持するために、3年に1度改正がおこなわれています。2018年が6回目の改正となり、次回は2021年に予定されています。

2018年度の介護保険法改正について

直近の介護保険法改正は2018年度にありました。以下は2018年度介護保険法改正の主なポイントです。

-自立支援・重度化防止に向けた取組みの推進
-介護医療院の創設
-共生型サービスの導入
-現役並み所得の利用者負担が2割から3割に
-介護納付金における「総報酬割」の導入
-福祉用具のレンタル価格の適正化

出典:地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律のポイント
出典:政策について > 福祉用具|厚生労働省HP

次項からそれぞれの改正内容について見ていきましょう。

自立支援・重度化防止に向けた取組みの推進

介護保険の保険給付にかかる費用は、国民全員が負担する税金や保険料で支えられています。そうした状況の中で要介護者が増え、さらに要介護度が重度化する人が増えれば、財政が圧迫され、介護保険制度の持続が困難となってしまいます。そこで高齢者自身が自らの能力に応じて自立した生活を送ること、要介護度の重度化を防止することが大切になります。

2018年度の改正では、介護保険の保険者である市町村が保険者機能を発揮して、自立支援・重度化防止に取り組むように、次の点が制度化されました。

-データにもとづく課題分析と対応として、取組内容・目標の計画への記載
-適切な指標による実績評価
-インセンティブの付与

「介護医療院」の創設

介護医療院は、今後増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズに対応するために創設された「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する介護保険施設です。医療、介護、生活施設、さらに看取り・ターミナルの機能を兼ね備えています。病院または診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院・診療所の名称を引き続き使用できます。

共生型サービスの導入

従来、障害者は「障害福祉サービス事業所」などから、65歳以上の高齢者は「介護保険事業所」から、それぞれサービスを受ける必要がありました。障害者が65歳になったときには障害福祉制度から介護保険制度に切り替わるため、これまで使い慣れた施設やサービスを受けられなくなり、不便を強いられていたのです。そこで障害福祉と介護保険のそれぞれの制度に共生型サービスが導入され、高齢者と障害者が同じ事業所でサービスを受けやすくなりました。

現役並み所得の利用者負担が2割から3割に

これまで介護サービス利用料の自己負担割合は、年金収入等が280万円以上の人は2割、280万円未満の人は1割でした。2018年の改正後は、2割負担の人のうち、特に所得の高い層である年金収入等が340万円以上の現役並み所得の人は3割負担とされました。

-340万円以上:3割
-280万円以上:2割
-280万円未満:1割

現役並み所得の利用者負担が2割から3割に

介護納付金で「総報酬割」が導入

第2号被保険者(40~64歳の介護保険被保険者)の保険料の仕組みに、総報酬割が導入されました。第2号被保険者の保険料は、効率よく確実に徴収するために、各医療保険者が介護納付金として一括納付する方法が採られています。この介護納付金はこれまで第2号被保険者の人数に応じて負担する「加入者割」が採用されてきましたが、加入人数が多いほど介護納付金が増える仕組みであるため、加入する医療保険の間で不公平感が生じていました。改正により報酬額に比例した負担となる「総報酬割」となりましたので、加入者は収入に応じた保険料を納付します。

福祉用具のレンタル価格の適正化

これまで車いすや移動用リフトといった福祉用具のレンタル価格はレンタル事業者が自由に設定できました。自由価格制では利用者の選択肢が広がりますが、一方では不当に高額なレンタル料を設定する事業者がいて問題視されていました。2018年10月からは厚生労働省が全国平均の貸与価格・貸与価格の上限を公表し、レンタル事業者は全国平均と自社の価格の両方を提示するよう義務づけられました。これにより、利用者は適正な価格かどうかの相場感をもち、自分にあった福祉用具を選べるようになっています。

2021年の介護保険法改正に注目

2021年の介護保険法改正では、地域共生社会の実現を図るため、介護サービス提供体制の整備等の推進や、介護人材確保に向けた取り組みの強化などが行われることになっています。

出典:地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(令和2年法律第52号)の概要

一方で、2019年10月の消費税増税を受け、議論されてきた介護保険料の負担年齢の引き下げや、自己負担割合を原則2割にするなど、さらなる国民の負担を強いる改正は先送りされています。ただし、少子高齢化の進行や財源の問題などを考えると、いずれは改正される可能性がありますので、引き続き注目していきたいところです。

まとめ

2018年の介護保険法改正では、利用者の負担割合の増加や第2号被保険者にかかる保険料の仕組みなど、私たちに大きくかかわる変更がおこなわれました。人口に占める高齢者の割合や介護の担い手となる人の状況は日々変化しているため、今後も大きな改正が実施される可能性があります。介護保険法の改正に引き続き注目していきましょう。

この記事を書いたライター

求人関連企業の経理部門に在籍中、社会保険労務士資格を取得。その後、会計事務所や総合病院での労務担当を経験し、現在はフリーランスのライター・校正者として活動中。ジャンルは労働問題を得意とする。
カテゴリ:コラム・学び

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