士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

監査法人の退職金はどれくらい?デロイト トーマツを参考に解説!

HUPRO 編集部
監査法人の退職金はどれくらい?デロイト トーマツを参考に解説!

監査法人を辞めれば、勤続年数に応じて退職金が支払われます。監査法人で働いているのは公認会計士が多く、公認会計士は一般に給料も高いので、退職金も高いのではと思われがちです。しかし、監査法人で働いているのは公認会計士だけではなく、博士号を持った職員やコンサルタント出身の職員など様々なスタッフが働いており、支給される給料および退職金の額にも差があります。

この記事では、そんな監査法人で働く公認会計士をはじめとする職員たちの退職金がどれくらいなのかについて、デロイト トーマツの事例を参考に詳しく解説していきます。

監査法人の退職金

監査法人の社員は普通の株式会社の従業員とは違い、出資者という扱いになります。つまり、持分所有者(オーナー)です。株式会社は株主が持分所有者となりますが、監査法人は社員が持分所有者となります。監査法人を退職するともちろん退職金が支払われます。

監査法人には公認会計士とそれ以外の職員が勤務していますが、公認会計士の方が給料は高く、それに伴って退職金も高くなります。監査法人は金融商品取引法監査、会社法監査、および学校法人監査などの法定監査に加えて、任意の監査サービスも提供していますが、非監査業務も提供しているため、働いている人のバックグラウンドは様々であり、一人ひとりに支払われる退職金の額にもばらつきがあります。

昨今では、監査の厳格化が叫ばれるようになっているため、監査に時間がかかり、それだけ時間外手当が支払われる機会も増えています。公認会計士の給料が高いことはよく知られているので、退職金も高いのではと思われていますが、実際にはそれほど高いとは言えません。

それは監査法人の社員が出資者という扱いとなるため、退職金を多く払うと出資金が減ってしまうからです。以下では、日本を代表する監査法人であるデロイト トーマツの財務諸表から監査法人を辞めたら退職金がいくらになるのかをみていきましょう。

監査法人の退職給付費用をみてみよう

監査法人は、公認会計士法第34条の16の3第1項の規定により、事業報告(業務及び財産の状況に関する説明書類)を公衆の縦覧に供することとされています。

この書類のなかには、監査法人の貸借対照表や損益計算書といった財務諸表が示されています。そのうち、監査法人がどのようなことにお金を使ったかは、業務費用の明細という書類で示されており、人件費の科目をみてみれば、監査法人が退職金(退職給付費用)としてお金を払っているのか、もしくはお金を積み立てているのかがわかります。

参考として、2018年6月から2019年の5月末日を会計期間とする有限責任監査法人デロイトトーマツの『業務および財産の状況に関する説明書類』をみてみると、次のようになっていることがわかります。

監査法人の退職給付費用をみてみよう

この書面からわかるように、2018年度の退職給付費用は約14億円、2019年度の退職給付費用は約22億円です。トーマツの社員の数は、公認会計士530人、特定社員53人の合計583人であるので、退職給付費用を単純に社員数で除すと、1年間で一人当たり390万円ほどの退職給付費用が支払われていることがわかります。参考として考えてみれば、監査法人が支払っている退職給付費用(退職金)は一人当たりおよそ400万円程度であることがわかります。もちろん、これは1年間の退職給付費用を社員数で除したものなので、厳密な数字ではありません。

そこで、監査法人の貸借対照表に表示されている「退職給付引当金」という科目は、将来監査法人が支払わなければならない退職金を示していますが、トーマツの2019年度の退職給付引当金は、59億円でした。これを先と同じように社員数で除した場合、約1,000万円となります。このことから、監査法人の社員一人当たりおよそ1,000万円の退職金が支払われていることがわかります。こうした2つの数字を考えてみると、監査法人が支払っている退職金はさほど多くないことがわかります。

トーマツの2019年度の退職給付引当金

おわりに

監査法人の退職金は世間で言われているほど多くないのかもしれません。監査法人の退職金は昇格できるかどうかにも大きく左右されるので、一概に退職金が多い少ないとは言えないのが現状です。

基本的には、勤続年数が長くなれば長くなるほど退職金は高くなる傾向にありますが、監査法人の給与体系はスタッフ、シニアスタッフ、マネジャー、シニアマネジャー、パートナーといった職位によって大きく変わることをきちんと理解しておくことが大切です。

《関連記事》
公認会計士の退職金の仕組みについてより知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:転職・業界動向

おすすめの記事