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外資系企業への転職に必要な推薦状を正しく理解する

公認会計士 荒井薫
外資系企業への転職に必要な推薦状を正しく理解する

転職市場は厳しいですが、キャリアプランを考えて、キャリアアップのため転職を考えている人の中には、外資系企業への転職を考えている人もいることでしょう。管理系でもジョブ型の仕事で専門性を高めたい人には、外資系はキャリアアップに向いています。この記事では、外資系企業への転職に必要な推薦状について解説をしていきます。

推薦状(Reference letter)とは?

欧米企業や、欧米企業の影響を受けているアジア系企業では、採用プロセスの中で、推薦状(英語では、Reference letterと呼ばれていますが、この記事では推薦状と呼ぶこととします)の提出を要求されることがあります。特に、マネージャー候補以上のポジションでの採用の場合には、海外では必須です。従って、日本での外資系企業の採用プロセスの中でも、しばしば推薦状を求められることがあります。

推薦状とは、応募者が以前勤めていた企業の上司や経営幹部、又は応募者と一緒に仕事をしたことがあるクライアント企業の社長や幹部など、応募者の仕事ぶりを実際に知っている人に、応募者の仕事のスキル、特徴、実績などについて具体的に書いて貰うものです。その外資系企業の判断に寄りますが、通常は英語で書いて貰うのが一般的です。

外資系企業は推薦状をどのように使うのか?

外資系企業でも日系企業でも、転職エージェントを使って採用を行うのがメジャーになっていますが、外資系企業では、Linkedinなどの転職を主たる目的とするSNSを通じて採用活動を行っているところも多いです。このLinkedinが日本の転職市場に今一つマッチしない理由の一つが、この推薦状の存在だと思われます。

日本企業では、採用プロセスが完了して採用が決定すると、身元保証人から身元保証書を書いて貰うようにと言われることがあると思いますが、外資系企業では、この身元保証書を求められることはまずありません。身元保証書を必要とするようなポジションでの採用の場合には、身元調査を行うのが一般的です。では、外資系企業では、推薦状はどのように使われるのでしょうか?

推薦状は採用がほぼ内定した段階で要求されます

外資系企業の面接プロセスは、日系企業と表面的にはそれほど変わりはありません。数回の面接を経て、給料交渉があり、その後内定となるわけですが、推薦状は、面接が終わり内定を前提に給料交渉に入る前のタイミングで必要になります。場合によっては、最終面接の前に要求されることもあります。いずれにしても、内定が前提にならないと求められません。

推薦状は採用企業の面接評価をサポートするものです

多くの外資系企業は、ジョブ型で採用を行います。そして、そのジョブデスクリプション(職務定義)は、採用者を受け入れる部署のGM(General Manager)が行います。人事部は、採用のアレンジは行いますが、最終的に誰を採用するかの権限と責任は、受け入れをする部署のGMが持っているのが一般的です。そして、ジョブ型であっても、その部署内でチームとして働くわけですが、GMがマネジメントをする上で、応募者がチームの一員としてそのジョブをこなせるかどうかの最終判断をする上で、推薦状を参考にすることになります。

採用企業は推薦状に絶対評価を求めていません

従って、外資系企業は採用に当たって、推薦状に絶対評価を求めません。ジョブ型採用の場合、そのジョブが出来るかどうかの判断は、あくまでも採用する企業が判断します。外資系企業では、その応募者が、そのジョブが出来ると判断をして上で、チームの一員として受け入れた場合の応募者の仕事のやり方や、過去にどのような企業で何の仕事をしてきたかを知る上で推薦状を参考にするのです。

そして、採用企業にスムーズに溶け込めるかどうか、ギャップがある場合にはどのようなサポートをしたら良いかなどについての判断材料に推薦状を使うのです。

採用企業は推薦状に絶対評価を求めていません

推薦状の貰い方について

外資系企業での転職を複数回繰り返している人は、職場の上司も推薦状を何度も書いているはずなので、推薦状の貰い方については特に問題はないと思われます。むしろ、推薦状を貰い転職を繰り返して、給料を上げることだけに長けている外資系パーソンの欠点を身に付けてしまっている人もいることでしょう。

ここでは、外資系の転職が初めてで、推薦状を貰ったことがない人がどうしたら良いかについてアドバイスをしたいと思います。

一番良いのは直前に在籍していた会社の上司や元上司の推薦状

日本でも転職をすることは普通のこととなっている訳ですから、一番良いのは、応募者が直前まで在籍をしていた会社の上司や元上司から推薦状を貰うことです。元上司を挙げたのは、日系企業の場合、転職で辞める場合に所属している上司が必ずしもその転職に賛成してくれるとは限らないため、転職先から内定が貰えていない段階で、推薦状を書いて貰うのは、やはりリスクがあるからです。

けれども、日系企業のため、元上司がその企業に在籍していることが多いと思われます。もし、元上司が理解を示してくれれば、元上司に書いて貰うというのも一考です。

欧米の大学を卒業していればゼミの担当教授も選択肢

応募者が、アメリカや欧州、シンガポールなどの大学や大学院を卒業している場合には、卒業からそれほど年数が経っていなければ、ゼミや卒業論文を担当して貰った教授に推薦状を書いて貰うという選択肢もあります。特に、MBAを取った場合、教授の中には、一般企業での勤務経験がある人も多いと思われます。卒業した後にも何かしらの交流を続けている場合には、事情を話しすれば大抵の教授は喜んで推薦状を書いてくれると思います。

一緒に仕事をしたクライアント企業の経営幹部

外資系企業に初めて転職をする人の中には、たまたま仕事で外資系企業と一緒に仕事をする機会などが出来て、その企業を通じて外資系企業で働くことに興味を持つようになったという人も多いと思います。

特に、コンサルティング会社に勤めている場合には、このようなケースも珍しくないと思います。その場合には、そのクライアント先等の外資系企業で、実際に自分の仕事に触れる機会があった中堅幹部以上の方がいれば、その方に推薦状を書いて貰うのも一つの選択肢になると思います。

まとめ

日系企業に勤めていて、初めて外資系企業に転職をする場合には、転職サイトの情報や転職エージェントの方の説明などをきちんと聞いて、その外資系企業の日本市場の捉え方を、まずはしっかり聞くようにしてください。外資系企業でも、母国のやり方を貫いて、日本の慣習などは一切排除している外資系企業もあれば、外資系企業でありながら、日本のカルチャーを尊重して日系企業のやり方を可能な範囲で取り入れている企業もあります。

また、日本進出のために子会社を立ち上げた場合には、数人の幹部以外は一斉に相当数の採用を行う場合もあります。日本のカルチャーを理解している外資系企業であれば、推薦状を貰えなくても、面接を多くすることで推薦状がなくても採用を決めてくれる企業もありますし、通常、推薦状は英語ですが、日本語での推薦状でも受け入れてくれる企業もあります。

また、日本進出のために子会社等を立ち上げた場合には、採用業務をすべて外注することもあるので、採用業務を受注した会社が推薦状の役割を果たしてくれることもあります。

いずれの場合も、もしかしたら推薦状がなくても採用をして貰える可能性がありますが、外資系企業の採用で推薦状が果たす役割を全く理解しないで外資系企業への転職に成功する確率は極めて低いと思われます。ですから、外資系企業へ転職をしたいと考えた場合には、早めに推薦状を書いて貰える人を探しておく、お願いをしておく等の準備をしておくことをお勧めします。

この記事を書いたライター

公認会計士としてIPO準備支援業務に従事後独立。M&A業務や中小企業支援業務を行い、その後事業会社のCFOに就任。ブランドプリペイドカード発行事業の立上げなど行う。現在は主に海外Fintech企業への日本市場のサポート業務などを行っている。
カテゴリ:転職・業界動向

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