税理士事務所というと、一昔前までは所長が1人に、事務員さんが数人というところが多くを占めていました。税理士法人の設立が許可されてから、現在では税理士法人の数は増えるものの、税理士事務所は増えていかないのが現実です。
そこで、今回は税理士事務所に後継者がいない事態について、解説します。
税理士事務所というと、冒頭にお話した通り、税理士の所長が一名、事務員さんが数名という体制が大多数でした。これは、税理士の数が少なく、複数の税理士を確保することが困難であったことや、一人で全ての訪問先を訪問したほうが効率的であったことの名残です。
税理士の息子が税理士になるとういのはいたって普通で、一昔前は親子で税理士事務所を引き継ぐという光景が当たり前でした。
これに反して、最近の税理士事務所は大規模化、専門化がどんどん進んでいます。具体的には、所長一人であった一昔と比べて1事務所に所属する有資格者の数も増えてきましたし、冒頭でお話した通り税理士法人の設立も多くなっています。
大規模化が進んでいくと、今までのように子供に事業を継ぐことも減ってきていますし、専門化が進んでいくと、その後継者自身にもそのような専門性が求められるようになります。
このように税理士事務所のあり方が変わってくると、後継者が当然のようにいた事務所でも、後継ぎを決めるのに困ることになってきます。また、以前のような形態であっても、以前よりも簡単に儲けることができるわけではないので、後継者不足にますます拍車がかかることになります。
このような現象の原因は、勤務税理士のあり方、キャリアアップの変化が挙げられます。
今までは勤務税理士は所長が引退した後に事務所を継承するというのが一般的でした。ですが、最近は先ほどお話した通り税理士の多様化や大規模化が進んできており、単純なのれんわけだけではなく、法人の幹部としての採用も多くなってきました。
また、所長の跡を継ぐという選択肢以外にも他の法人で勤務をしたり、一般事業会社で株式公開作業をしたりと、税理士自身のキャリアプランにも大きな変化が出てきました。よって、税理士イコール税理士事務所を継承するというのが当たり前ではなくなってきました。
後継者がいない税理士事務所では、このようなことを考えています。
まず、後継者をどこかから探そうとします。なぜなら、税理士事務所では税理士の所長が一人というところがとても多くなっていて、万一所長が仕事を続けることが困難になっても、誰も継承できる人がいないということが多々あります。
税理士の所長としては、自分の代で税理士事務所が無くなってしまうと、顧問先が新しい税理士を探すなど、大変な思いをすることを知っており、なるべく次の代に継承していきたいと考えています。
よって、税理士の求人を出すときは、「もしかしたらこの人は後継者になってくれるかも」という気持ちを持っていることも多く、後継者となる可能性のある人を積極的に採用していきたいというのが本音です。
あまりこのことを表に出してしまうと、求人に応募してくれる人が少なくなってしまうと考える所長もいるため、あまり表には出さずにひっそりと期待をしている事務所もあるかもしれません。
いくら人材を探したとしても後継者はそう簡単に見つかるわけではありません。運の良さもあるので、後継者が引き続きいないという税理士事務所もたくさんいることでしょう。
先ほどお話した通り、後継者になるような人を探すために様々な求人を出しますが、それでも後継者がいない場合は、別の税理士事務所と合併したり、そのまま徐々に廃業をしたりすることとなります。
基本的に自分の事務所を手放すというのは最後の手段と考え、自分に合った後継者に後を継いでもらいたいというのが一般的な税理士事務所の考えでしょう。
では後継者のいない税理士事務所への就職・転職についてはどうでしょう。
基本的に後継者がいないからといって何ら税理士事務所の体制に変化があるわけではありません。むしろ、後継者がいない税理士事務所であればトップは一人であることが多い為、仕事に対する指示も一本化されていて迷うことは少ないでしょう。
また、将来自分が独立することを考えているのであれば、その事務所をそのまま引き継ぐという選択肢も生まれるため、幅が広くなることでしょう。
あくまで一意見ですが、後継者のいない税理士事務所で後継者を探している雰囲気を感じ取れるのであれば、優先的に就職先の候補として考えるのも良いのではないかと思います。
後継者のいない税理士事務所は今後ますます増えてきて、求人でも需要が増えてくることでしょう。自身のキャリアを考えた時、単に独立をする選択肢だけではなく、事務所を引き継ぐというのも魅力的であるため、このような事務所の求人が出ている場合は積極的にチェックしてみましょう。
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