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リース資産の減価償却に関する会計基準の取扱いと法人税法の取扱い

税理士 井上幹康
リース資産の減価償却に関する会計基準の取扱いと法人税法の取扱い

リース取引のうちノンキャンセラブル要件及びフルペイアウト要件を満たすファイナンス・リース取引に関しては、リース取引開始日に売買取引に準じてリース資産及びリース債務を計上します。リース資産はその後減価償却されていきますが、今回はリース資産の減価償却について会計基準と法人税法の取扱いをご紹介します。

所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引で取扱いが異なる

リース取引に関する会計基準(以下「会計基準」という。)では、リース資産の減価償却について、所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産と所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産とで別々に規定しています。よって、以下所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引で分けて見ていきます。

所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却

所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定することとされています(会計基準12)。

所有権移転ファイナンス・リース取引とは、所有権移転条項のあるリース、権利行使が確実に予測される割安購入選択権付リース、借手の特別仕様物件のリース等、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるものをいい、法形式は賃貸借ですが、その経済的実質はリース物件の取得と同様に考えられるため、自己所有の固定資産と同一の減価償却方法により減価償却費を計上することとされています(会計基準 結論の背景39)。

法人税法上も、所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却は、資産の種類に応じてその法人が選定している償却方法とされています。法人税法で選定している償却方法を会計上もそのまま採用している企業がほとんどですので、所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却に関しては会計と法人税とで差異は生じないでしょう。

例えば、所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産が機械装置であれば、その企業が機械装置について適用している減価償却方法(法人税法の法定償却方法である定率法が多いでしょう)で他の機械装置と同様に減価償却費を計上することになります。

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却

所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、ファイナンス・リース取引のうち、上記で解説した所有権移転ファイナンス・リース取引以外のものをいいます。

所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得とは異なり、リース物件を使用できる期間がリース期間に限定されているという特徴があるため、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定することとされています(会計基準12、結論の背景39)。

また、やや細かい取扱いですが、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、当該残価保証額を残存価額とすることとされています(リース取引に関する会計基準の適用指針27)。

そして、リース資産の償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用することとされています(リース取引に関する会計基準の適用指針28)。ただし、実務上は、法人税法で規定されているリース期間定額法を採用している企業がほとんどでしょう。リース期間定額法を採用すれば、会計上計上した減価償却費と法人税法上の償却限度額が一致し、特段申告調整が不要になり無駄な手間が省けるからです。

(リース期間定額法の算式)
リース期間定額法の償却限度額
= ((リース資産の取得価額 - 残価保証額(注)) / リース期間の月数) × その事業年度におけるそのリース期間の月数

(注)「残価保証額」とは、リース期間終了の時にリース資産の処分価額が所有権移転外リース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合にその満たない部分の金額を賃借人が支払うこととされている場合におけるその保証額をいいます。

出典:No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)|国税庁HPタックスアンサー

なお、法人税法上、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産については、以下の特例制度の適用はないので注意が必要です。

(1) 圧縮記帳(法法47、措法65の7等)
(2) 特別償却(措法42の5、42の6等)
(3) 少額減価償却資産の損金算入(法令133)
(4) 一括償却資産の損金算入(法令133の2)

出典:No.5704 所有権移転外リース取引|国税庁HPタックスアンサー

所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却

簡便法も認められている

所有権移転ファイナンス・リース取引及び所有権移転外ファイナンス・リース取引ともに、リース資産を資産計上して上記の通り減価償却していくのが原則ですが、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるとされています(リース取引に関する会計基準の適用指針34、35、45、46)。

法人税法でも同様の簡便法が認められています(法人税法施行令131の2③)。

結局、リース資産を資産計上して減価償却するということは、リース資産を固定資産台帳に登録して管理していくことになり、手間がかかるので、簡便法の適用が認められているわけです。中小企業では経理事務簡便化の観点から簡便法を適用しているところが多いです。

まとめ

今回は、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース資産の減価償却について、会計上の取扱いと法人税法の取扱いをご紹介しました。基本的に会計基準の取扱いに合わせて法人税法の取扱いも規定されてますが、簡便法の取扱いも含めるとやや複雑な取扱いになっています。

また、リース会計基準は、オペレーティング・リース取引も資産計上する方向で改正が予定されていますので、今後リース資産の減価償却の取扱いはこれまで以上に重要性が増してくると思います。

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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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