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【簿記3級】帳簿の締め切りのやり方は?表を用いて解説!

HUPRO 編集部
【簿記3級】帳簿の締め切りとは?

決算作業の中で、次期の帳簿を付け始める前に、当期分の帳簿について「帳簿の締め切り」をおこなう必要があります。次期に繰り越す前に、総勘定元帳の各勘定ごとに金額を確定させなければなりません。今回は、日商簿記検定3級の範囲ともなっている「帳簿の締め切り」について解説します。

帳簿の締め切りとは

帳簿の締め切りとは決算期において各勘定科目における残高を締め切る作業のことを指します。簡単に言うと当期と次期の帳簿を区別するために決算の時に当期の帳簿はここまでこれ以降の取引は次年度のものだよと区切る作業です。

帳簿の締め切りにおいて収益と費用は1年ごとの会社の利益などを表すもののため次期は0から開始します。一方で資産、資本、純資産については会社の財政状況や資本を表すもののため次期へ繰り越します。

実は帳簿の締め切り方法については大陸式と英米式の二種類があります。大陸式では全ての勘定科目において振替仕訳を行う方法で、英米式は収益と費用の勘定科目のみ振替仕訳を行い、残りの資産・資本・純資産においては仕訳表を経由せずに直接総勘定元帳で締め切るという方法になります。

実務では英米式が用いられることがほとんどのため、本記事でも英米式のやり方について解説していきます。

帳簿の締め切りの流れ

帳簿の締め切りは、損益振替→資本振替→勘定の締め切り→繰越試算表の作成という順番でおこないます。以下、4つの手順を順番に解説していきます。

(1)損益振替

収益、費用の各勘定の残高を0にして、「損益」という勘定科目に振り替えます。
この「損益」という勘定科目は、帳簿の締め切りのみに使用する特別な勘定科目で、簿記の5大要素のどれにも含まれません。

具体的には、借方に残高がある場合は、貸方に損益で同金額を、貸方に残高がある場合は、借方に損益として同金額を記入します。

【例】
売上が50000円、仕入が75000円残っていた場合の損益の記入方法

売上は借方、仕入は貸方のため、それぞれ仕訳をおこない、相手勘定科目を「損益」とします。

借方 金額 貸方 金額
売上 50,000 損益 50,000
借方 金額 貸方 金額
損益 75,000 仕入 75,000

最終的に「損益」の勘定科目をまとめ、収益と費用の合計を確認しましょう。
【例】

損益
費用 収益
仕入 75,000 売上 50,000
当期純損益 -25,000

費用と収益の差額で、当期純利益と当期純損失を求めます。この例の場合は売上の残高よりも仕入の残高が上回っているので、損失が生じています。
なお、純損失の数字はわかりやすいように記載しましたが、実際の帳簿には記載しません。

(2)資本振替

次に、損益勘定を0にして、繰越利益剰余金の勘定(資本)に振り替えます。この作業が資本振替です。
(1)の例の場合、当期純損失が25000円生じています。この場合、貸方に損益勘定を、借方に繰越利益剰余金の勘定を同額で記載します。つまり、資本金がそれだけ減額しているということです。

【例】

借方 金額 貸方 金額
繰越利益剰余金 25,000 損益 25,000

一方で当期純利益が7万円だった場合は、借方に損益の金額を記載し、貸方が繰越利益剰余金となります。

借方 金額 貸方 金額
損益 70,000 繰越利益剰余金 70,000
(2)資本振替

(3)勘定締め切り

勘定締め切りについては、損益計算書の勘定である(収益・費用)と、貸借対照表の勘定である(資産・負債・資本)とでは、締め切り方が異なります。

①収益・費用の勘定

収益・費用の勘定科目においては、損益振り替えと資本振り替えの作業により、借方と貸方の金額は一致しているはずです。次期繰越も行いません。そのため各勘定の貸方・借方の合計金額が一致していることを確認しつつ、合計金額の下に二重線を引いて閉めます。

②資産・負債・純資産の勘定

資産、負債、純資産においては、期末残高がある科目を次期に繰り越さなくてはなりません。
そのため、残高のある反対側に残高と同じ金額で「次期繰越」を記入して、借方と貸方の合計金額が同じ額になるようにして、合計金額の下に二重線を引きます。
そして二重線の下に「次期繰越」と同じ金額の「前期繰越」を記入します。

※簿記検定の試験では赤ペンは使えないので黒で記入します。問題には黒字で記載可能な旨が記載されているので指示に従ってください。

(4)繰越試算表の作成

最後に、繰越試算表を作成します。
繰越試算表は、各勘定科目の前期からの繰越残高(次期繰り越し)が借方と貸方で同じ数字になっているかを確認するために作成するものです。
貸借対照表と同様に、資産の勘定は借方に、負債および純資産の勘定は貸方に記入して作成し、金額が正しければ、貸方と借方の合計金額が一致します。逆に金額が一致しなければどこかでミスがあるということですチェックしましょう。

【例】

繰越試算表
貸方残高 勘定科目 借方残高
50,000 現金
70,000 当座預金
30,000 売掛金
5,000 繰越商品
3,000 備品
買掛金 70,000
資本金 88,000
158,000 合計 158,000

※繰越試算表は日商簿記検定3級の試験範囲ではありませんが、帳簿を締め切った後に、次期繰越額の正確性の検証のために作成することを把握しておいてください。
繰越試算表を作成することで、次期にどういったものが繰り越されるかが一目でわかるようになります。

まとめ

帳簿の締め切りにおいてポイントは、以下の2点です。

・費用と収益の勘定は損益勘定に振替えて資本金に組み込む
・資産と負債と純資産の勘定は、残高を次期に繰り越す

簿記検定を受験しない方でも、原則を知っておくと決算の数字も理解しやすくなりますので、ぜひ一連の流れを把握することをお勧めします。

当コラム内では、決算業務についての記事や簿記3級についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。

この記事を書いたライター

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