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会計事務所の転職失敗理由は?事例で見る原因と転職活動のポイント

HUPRO 編集部
会計事務所の転職失敗理由は?事例で見る原因と転職活動のポイント

今回は、会計事務所への転職での失敗事例を紹介いたします。年収が低い・税理士試験との両立ができない・所長税理士や先輩職員との人間関係がつらいなど、会計事務所の職員によくある悩みを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

会計事務所の転職失敗事例

会計事務所(税理士の事務所)というのは、一般的な企業組織と比較してかなり特殊な業界といえます。
組織構成は多くても20名〜30名程度ですし、所長税理士と職員(税理士資格の有無を問わず)とは師弟関係のようなかたちになることが少なくありません。

また、税理士業界は「世襲」が極めて多い業界です。つまり、先代の所長税理士の息子さんが2代目税理士として事務所を引き継ぐというケースがとても多いということですね。

こうした特殊な事情が多い会計事務所ですので、入社前のイメージとのギャップに悩む人は少なくないのが実情です。

以下では、会計事務所への転職経験者によくある失敗事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
よくある失敗とその原因を理解しておけば、これから転職活動を始める方は後悔のない転職につなげることができると思います。

失敗事例①:所長税理士との性格的な相性が合わない

会計事務所は、基本的には少人数で構成されている組織です。
ほとんどの事務所は従業員数数名〜10名以内の小さな組織です。在籍職員が20名以上の事務所なら、それは「大規模事務所」という位置づけになるでしょう。

小さな組織ですから、組織のリーダーである所長税理士の権限がかなり強い職場になることが多いです。
所長税理士の仕事のスタンスや、あなたとの性格の相性によっては、かなり働きにくい職場環境となってしまうことが少なくありません。

外回り時に細かく連絡を入れなければならない。毎日かなり詳細な業務日報を書かされる。使用する筆記用具まで指定される。などなど、とにかく仕事に関する細かいルールへのこだわりが強い所長税理士もいれば、「会計や税務の仕事は基本的に職員任せ。所長税理士は日夜顧問先の開拓営業に勤しんでいる…」という所長税理士まで、仕事のスタンスは様々です。

重要なのはあなた自身の性格や、理想的な仕事の進め方との相性が良いかどうかです。

対策:入社前にできれば先輩職員と話をしておく

人柄を判断するのは、採用面接のときに一度や二度会っただけでは難しいとは思いますが、面接時にはできるだけ「所長はどんな人物なのか」を観察するようにしておきましょう。

可能であれば、すでに職員として働いている先輩職員の方々と入社前に話をする機会を設けることがベストです。

ハードルが高く感じるかも知れませんが、入社後になってから「性格的に合わない」ということが生じるのを避けたいのは採用側(会計事務所側)も同じです。
「入社前にぜひ先輩職員の方とお話させてください」と頼めば、聞き入れてもらえることが多いと思いますよ。

失敗事例②:入社当初の年収の低さに悩む

会計事務所の転職失敗理由は?事例で見る原因と求職活動のポイント

年収についての悩みは、入社して間もない会計事務所職員によくあるお悩みです。「税理士の事務所で働いている」というとなんだか高尚な仕事をしている感じがしますが、企業規模でいえば零細企業です。

従業員数は数名〜20名程度ですし、売上規模で言えば数銭万円〜数億円程度の事務所が大半を占めるでしょう。

大手企業などと比較して、福利厚生についてのルールがきちんと決まっていないことも少なくありません。

「深夜まで残業しているのに残業代の支給がない」「休日出勤しても割増賃金が払われない」「ある日突然クビになる(強制的に自主退職を求められる)」など、今どきちょっと信じられないブラックな環境となってしまっていることも少なくありません。

対策:給与の条件が求人情報と食い違っていないか確認しておく

給与についても、求人情報に出ていた条件と違っていたり、あらかじめ知らされることなく「試用期間」として扱われたりといったことも考えられます。

なかなか聞きにくいことではあると思いますが、採用面接時には給与や福利厚生についての条件はよく確認しておく必要があります

どういう評価制度になっているのか、賞与の計算はどのように行われているのか、残業代は基本給に込みなのか別なのか(見込み残業制度を採用しているのか)など、福利厚生についての情報は事前に確認しておくようにしましょう。

失敗事例③:残業が多すぎて税理士試験の勉強との両立ができない

未経験で会計事務所への転職を目指す人の多くが、税理士試験の受験生です。

「会計事務所で働いて税理士実務を身につけつつ、3年〜5年かけて税理士試験に合格。その後に実務経験に自信がついてきたタイミングで独立して自分の事務所を持つ…」というキャリアプランを抱いている人が多いでしょう。

しかし、このようにスムーズにいくケースは少ないのが実情です。
会計事務所の仕事は、クライアント企業の決算業務や税務申告業務が基本です。そのため、自分が担当する顧問先の決算がある月はとても忙しくなります。

主に3月や9月を決算期としている企業は多いので、その決算の申告期限である5月や11月は忙しくなります(法人企業の決算期限は事業年度末から2ヶ月以内です)

また、個人事業主のお客さんは、すべての人が2月16日〜3月15日に決算と確定申告を行います。この時期は「超激務」になるのが普通で、毎日深夜まで残業をしている事務所も少なくありません。

対策:エージェントも活用して事務所の実情を把握する

転職をする前に、必ず繁忙期にどのぐらい忙しくなるのかを確認しておきましょう。面接時に聞くのとあわせてエージェントにも確認を取るとより確実です。
どこの会計事務所も繁忙期にも残業が少ないというのは稀なケースですが、過度な残業が発生している場合も中にはあります。

自分の勉強時間の確保というのも税理士として活躍する上で大事な点です。また、職場環境が悪い事務所は離職率も高く、常に人手不足になり余計に仕事が激務になるという悪循環に陥ります。職員の働き方が常識の範囲で収まっているのか、転職を決める前に十分に確認しておく必要があるでしょう。

失敗事例④:想定していた仕事内容と違った

求人内容に記載されているだけの情報では分からないこともあります。
実際に、税理士として相続業務を専門に経験を積みスキルアップしたいと思って入社したら、相続業務は全体の案件の5%以下でほとんどできなかったということもあります。

税理士として、様々な税法がある中で、どの分野を専門にしてキャリアを積んでいくのかというのはとても重要な点です。一般の会計事務所もあれば、特化型やコンサル専門の事務所もあります。また、ある業種に絞ってクライアントを持つ会計事務所もあります。自分自身がどういう力をつけていきたいのかをよく考えた上でキャリアの選択が求められます。

対策:面接時に積極的に仕事内容を確認する

面接は会社があなたを採用するかどうか決定する場であると同時に、あなたがその会社で働くことができるかどうかを判断する場でもあります。そのため、仕事内容について、少しでも疑問を感じたら必ず確認を取るようにしましょう。

面接の最中や最後の方で「なにか質問はありますか?」と尋ねられたら、具体的な業務内容について、積極的に聞いてみましょう。
その際も「そういうことでしたら、このような面で実績を活かすことができます」と自己アピールすることができれば尚良いでしょう。

転職事例⑤:繁忙期に転職をしてしまった

税理士業界では、年末調整や確定申告、決算月が繁忙期とされています。繁忙期にいきなり様々な作業を任されたとしても、それぞれの企業によって作業内容が異なり、指摘を受けることが多くなるでしょう。そこで丁寧に指導してもらえればいいのですが、繁忙期なので誰もがあなたに手厚くフォローをする余裕がないという状況は起こり得ます。

そのため、繁忙期に転職をした税理士のなかには「前職では評価してもらえていたのに、今の職場では注意や指摘を受けてばかり」という人も少なくありません。これは決してあなたの実力が伴っていないのではなく、繁忙期に転職をしてしまったということが原因でしょう。

対策:繁忙期の転職はより慎重に行う

まずは事務所の繁忙期をしっかり把握するようにしましょう。繁忙期に転職することはあまりおすすめではありませんが、どうしても転職しないといけないというケースはあると思います。その際は、転職先の事務所がしっかりとシステムを導入したり、教育体制が整っているなど、新しく入った人がスムーズに仕事に取り組めるのかを十分に確認した上で、転職先を決めるようにしてください。

優秀な人ほど忙しくなるというジレンマ

会計事務所の職員として年次を重ねるほど、多くのクライアントを任されるようになります。複数の顧問先で決算期がかぶることも増えてくるので、非常に残業が多くなることもあるでしょう。

「事務所内で優秀とみなされればみなされるほど仕事が忙しくなり、試験勉強に割く時間も少なくなって、目指していた独立がどんどん遠のいていく…」というのは、会計事務所職員にはよくあるジレンマです。

会計事務所の仕事と税理士試験の勉強を両立することを考えている方は、一人の職員につき何件ぐらいのクライアントを担当することになるのかを事前に確認しておきましょう。

クライアント企業の売上規模にもよりますが、平均は20件程度です。30件を超えると相当な激務が待っていると覚悟しておいた方が良いです。

会計事務所への転職で「失敗した…」となるのを避けるためのポイント

ここまで、会計事務所に転職した人によくある失敗事例を紹介いたしました。

会計事務所に転職した後、「失敗した」とならないようにするためには、「会計事務所とはどんな仕事をしている場所で、どんな人が働いているのか」を良く理解しておくのがポイントです。

以下では、いくつか基礎知識として知っておくべきことを整理ししておきましょう。

会計事務所の仕事内容を理解する

会計事務所の仕事というと、「事務所にこもってひたすら書類と向き合う個人プレー」というイメージをお持ちの方はひょっとしたら多いかも知れません。

しかし、実際にはクライアントの事業所まで足を運び、経営者や経理スタッフさんと話をしながら仕事を進めていくことが多い仕事です。

クライアントがどんなことで、会計面、税務面の悩みを抱えているか、会話の中から聞き取ることが重要になってきます。
そのためには、ある程度のコミュニケーション能力が求められる仕事です。

書類仕事がメインだと思っていたら、外部との付き合いが多く、イメージと違ってつらいと感じる職員は少なくないです。また、車での移動は必須になりますから、車の運転が苦手という人は事前に練習しておくのが良いでしょう。

会計事務所ごとに異なる職場環境を理解する

会計事務所という職場は、良くも悪くも所長の考え方や人格によって職場環境が左右されます。そのため、社内ルール一つとっても、他の会計事務所と全く違うということもよくあります。

求人情報などの資料からそれを判断するのは難しいと思いますので、面接に呼んでもらった際、事務所の様子、所長の雰囲気などしっかり観察するようにしましょう。

面接は緊張するものですが、事務所内をよく観察しておくと、面接で質問しておくべきポイントが見つかることもあります。

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まとめ

今回は、会計事務所に転職する人によくある失敗の事例を紹介いたしました。

税理士は資格を取得するだけでも大変ですが、スキルの汎用性が高いため転職が割と多い業界でもあります。税理士としてスキルアップする中で、前向きな転職であれば、さらにあなたのキャリアの可能性を広げてくれます。

反対に現職の職場環境に対して不満があり転職を希望する場合は、何が嫌なのか、どの程度までなら許容範囲なのかを明確にしてから転職活動を進めるようにしてください。ただ闇雲に現職が合わないという理由だけでは、余計に悪い環境に転職してしまうということも起こり得ます。

今回ご紹介したように、まずは税理士としての転職の失敗事例を知り、原因をよく分析しておけば、あなた自身の失敗を避けることにつながります。ぜひ参考にしてみてください。

税理士・科目合格者の転職時におけるよくある悩みについて、下記のコラムでも紹介していますので、あわせてご覧ください。

この記事を書いたライター

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