法人税の会計処理は苦手にしている人も多いことでしょう。通常の法人税の処理と違って、過年度の法人税についてはどのように処理をすべきかもっと悩むところでしょう。
そこで、今回は、過年度法人税の会計処理について解説します。
まず、過年度法人税はどのような時に発生するでしょうか。
最もわかりやすいのが、税務調査を受けて過去の法人税が間違っていた際に、不足している分を納める場合でしょう。
税務調査では大体3年分の税金を見られますが、場合によっては5年、7年とさかのぼって調査されます。
よって、過年度法人税と一言で言っても、昨年分もあれば、7年前の分もあり得るということになります。
これ以外にも、自主的に法人税の計算をやり直したために過年度法人税が発生することもありますが、手続としては税務調査で指摘されて申告・納付するものと一緒ですので、ここでは同じものとして考えておきましょう。
過年度法人税の申告については、以前の法人税の申告が誤っているという前提で、もう一度正しい申告書を出しなおすということになります。
よって、基本的には通常の法人税の申告書と作成の方法は同じで、タイトルが「確定」申告書ではなく「修正」申告書となります。また、既に納付した法人税等があるため、修正申告では修正後の法人税等から、既に納付した法人税等の分を差し引いて納付が行われます。
過年度法人税の申告は極端な話何度もできますが、納税をしてはじめて延滞金がストップしますので、申告書を提出しただけで満足しないようにしましょう。
それでは、修正申告書を提出して、実際に法人税等を支払った場合、過年度法人税等はどのように会計処理をするのでしょうか。
まず、原則的には法人税、住民税及び事業税の下に「過年度法人税等」等の科目を使って別掲をします。これは、法人税等であるものの、過年度のものであるため分けて表示をするためです。
ただし、正直実務ではそれほどこのような科目を見かけることは多くはありません。
重要性が無い場合は、法人税、住民税及び事業税に含めて表示をすることが多いです。これは、特に会計理論上正しいかどうかは別として、何年に一度は過年度法人税も出てしまうこともあり、そのたびに別掲をしていたらかえって財務諸表が見づらくなるかもしれない、ということから来ています。
よって、多くの企業は法人税、住民税及び事業税に過年度法人税を含めているといっても過言ではありません。
この他、外形標準課税の過年度分であれば、販売費及び一般管理費の租税公課に含めて表示することもあります。
それでは、過年度分の消費税が誤っていて追加で納付した場合はどのような会計処理となるのでしょうか。
消費税は、基本的に消費税単独で間違えるというよりも、法人税の処理が誤っていてそれに引っ張られて間違えるという性質のものが多い科目です。
例えば、前期課税売上にしなければならなかったものを、非課税売上にしたとすると、消費税を直すというよりも、仕訳そのものを直すこととなります。
すると、売上高は減少し、代わりに仮受消費税が増える、等の処理が必要となります。
このように計算を積み上げていくと、消費税も既に収めた分と、これから納めなくてはならない分とに差額が出るでしょう。
この差額について、多くの企業では、租税公課に追加での納付分を入れています。これは、特に消費税の追加納付分を示す科目が無いためです。
ちょっと話題を変えて、例えば過年度従業員や役員などから預かるべき源泉所得税を預かっていなくて、当期税務調査で指摘をされた場合、その分の源泉所得税はどうするか、考えたことはありますか?
厳密には、過年度の分もさかのぼって従業員から徴収しなければなりません。しかし、その従業員が辞めている可能性があることや、会社のミスで源泉徴収をミスしたという負い目から、なかなか本人から徴収することができません。
その場合は会社が立て替えという形で源泉所得税を納めることになりますが、そのままにしておくと、従業員への寄付行為(給与手当)という形になってしまうので、最終的には税務署と処理方法をすり合わせしておく必要があります。
この時、会社が実質負担した従業員の源泉所得税は、販売費及び一般管理費の租税公課等の科目で処理されることが多いです。
過年度法人税は、税務調査がきっかけで納付しなければならない時があります。この時の科目は重要でなければ他の法人税等と同じようにしてしまうことも多いですが、最終的には公認会計士等の判断に任せましょう。
また、法人税以外の過年度の税金は租税公課等で処理することが多いので、法人税であるのか、それ以外であるのかによって科目を考えましょう。