ニュースなどでよく耳にする「完全失業率」。景気動向を示す完全失業率の動きはこれからも注目すべき指標のひとつです。本記事では「完全失業率」について言葉の意味と国際的な比較について解説します。
まず「完全失業率」という言葉の意味を見ていきましょう。
完全失業率とは
15歳以上の働く意欲のある人(労働力人口)のうち、仕事を探しても仕事に就くことのできない人(完全失業者)の割合。
具体的には以下の式で求められます。
完全失業率= 完全失業者数 ÷ 労働力人口 × 100(%)
日本における労働力人口は、15歳以上で、労働する能力と意思をもつ物の数をあわらします。
具体的には、15歳以上の人口から主婦・学生など労働能力はあってもその意思をもたない者と、病気だったり、老齢者など労働能力をもたない者を差し引いて得られる数です。
完全失業者とは、就業者以外で仕事がなくて調査期間中に少しも仕事をしなかった者のうち、以下の人を指します。
・就業が可能でこれを希望し、かつ仕事を探していた者
・仕事があればすぐ就ける状態で、過去に行なった求職活動の結果を待っている
完全失業者については、退職して転職活動中だったり、就職浪人で就職活動をしている人は含まれますが、就業することの希望の有無については、実際に求職活動をしているかどうかによって判定しています。つまり、失業者であったとしても求職活動をしていなければ、非労働力人口として分類され、主婦や学生と同じくくりになります。
失業者についてこの定義が用いられるようになった1950年より、「完全失業者」と呼んでいますが、現在では、「失業者」といえば「完全失業者」を指すので、「失業率」も「完全失業率」も同じ意味です。
完全失業率を求めるには、労働者人口と完全失業者の人数を求めなくてはなりません。それらを明らかにするのは、国内の就業状況、失業者、失業率を把握するために、総務省が毎月おこなっている「労働力調査」です。
労働力調査とは
・調査範囲は日本に居住する全人口
・実施は標本調査、国勢調査の約100万調査区から約2,900調査区を選定→調査区内から選定された約4万世帯→就業状態は世帯員のうち15歳以上の者(約10万人)について調査
・毎月末日(12月は26日)現在で行う
つまり、毎月完全失業率は更新されています。
日本における完全失業率は、バブル崩壊後やリーマンショック時にはいったん5.5%まで悪化したことがありますが、ここ3年ほどで2.5%前後です。
出典:労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)4月分結果
完全失業率は、好景気のときには低下し不景気のときには上昇する傾向があります。ご覧の通り、2020年に入ってから徐々に完全失業率は上がっており、今後が懸念されている状況です。
「日本の失業率は低い」と言われます。欧米の失業率を比較してみると、その数値の低さは顕著です。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 失業率 欧米の動向
景気指数の一つとされる失業率ですが、海外に比べて日本ではあまりその数値が当てにならないとも言われます。これにはからくりがあります。
日本の失業率は「完全失業者」の割合です。「完全失業率」の意味から考えると、職探しをしているという条件があることから、現在、求職活動を控えている人については完全失業率に反映されていません。
つまり、退職をして専業主婦に戻ったり、病気で退職して療養中というような人は、給食をしていないので完全失業者に含まれないということです。
不況時には、求職活動をしても良い職が見つからないなどといった理由で、就職・転職活動を控える人も完全失業者には入りません。
実際は失業者でありながら、完全失業率にカウントされない人が相当数いるのではと推察されます。
例えばアメリカでは、今回のコロナでもそうですが、不況になるとみられると真っ先に人材をレイオフ(解雇)します。そのため、すぐに失業率が跳ね上がるので、景況との連動が顕著です。
しかし日本では、企業における内部留保や解雇規制があるため、仕事のあるなしにかかわらず、正社員であれば、できる限りはリストラせずに給与カットなどで乗り切ろうとします。
日本企業がリストラを募集する時というのは、企業の経営状況がかなり悪化してからです。雇用が回復するのは、景気回復の見込みもかなり確実になってからとなります。
そのため失業率の数値の出方は、景気の実情よりもやや遅れて起こるのです。
完全失業率は確かに、景況を現す指標のひとつではありますが、必ずしも現状を表した数値でないということを念頭に置いて、数値を見るようにしましょう。
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